北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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39: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:01:16.20 ID:vyCd+JK40
 ガチガチに緊張してステージに向かうも、実際はお客さんなんて全然入っておらず、なにかの間違いでやってきたらしい、ほんの数人が、アタシになんてまったく興味がないという感じにちびちびとカクテルを舐めている。

 ――なんてことはなく、ホールは超満員だった。

 スポットライトがステージを照らし、歓声が湧き上がる。
以下略 AAS



40: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:02:57.22 ID:vyCd+JK40
「み、みんなー、はじめまして!」

 声がうわずった。いや、だいじょうぶ、大したことじゃない。

「……新人アイドルの、北条加蓮だよ。今日はデビューの日なんだ。みんな楽しんでってね!」
以下略 AAS



41: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:04:31.03 ID:vyCd+JK40
 自分が特別な人間だと思いたかった。

 昔のアタシは、すべてを貧弱な体のせいにしていた。
 この体さえまともなら、アタシだってあそこに行けるのにと、テレビの中の輝く世界を夢見ていた。

以下略 AAS



42: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:06:04.46 ID:vyCd+JK40
 最後の曲を歌い終えて、お客さんに一礼し、ふらつきながらステージを去る。
 舞台袖にプロデューサーと、出番を控えて待機していたらしい乃々ちゃんがいた。

 緑を基調にしたドレスをまとった乃々ちゃんの姿は、まるでおとぎ話から飛び出してきた森の妖精のようで、こんな状態だというのに、アタシは不覚にも少し、見とれてしまった。
 ふだんは化粧はしていない乃々ちゃんだけど、今は薄くメイクをほどこしていた。元々色素の薄い肌がいつも以上に白く、なんだか触れようとしたら消えてしまいそうな儚さを感じる。
以下略 AAS



43: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:07:58.68 ID:vyCd+JK40
 プロデューサーの肩を借りて控室に戻ると、パイプ椅子に敷いたぬいぐるみの上で杏がすやすやと寝息を立てていた。この子はブレないなぁ、本当に。

「いいステージだったよ」

 とプロデューサーが言った。お世辞だろうか。
以下略 AAS



44: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:09:35.68 ID:vyCd+JK40
 しばらく経って、乃々ちゃんが控室に帰ってきた。

「じゃあ、行っといで」

「……ホントにいいの?」
以下略 AAS



45: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:11:09.83 ID:vyCd+JK40
「あいつは参考にするな」

 プロデューサーが言った。

「できるわけないよ」
以下略 AAS



46: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:12:50.59 ID:vyCd+JK40
 少し、わかる気がした。
 いつだったろう、アタシは友達がいないとか話していたとき、「杏も同じようなもんだ」と言っていた。
 まだほんの数週間の付き合いだけど、気付いたことがある。杏はすごく頭がいい、ふつうに会話をしていても、随所でそれが見て取れる。
 なんだかんだで、世の中はふつうでないものには生きづらい。子供のような容姿に、高すぎる能力。杏の異質さは、きっと、ただ生きているだけでも大変なものだ。
 杏が事務所に入り浸るのは、アタシと同じ理由だろう。
以下略 AAS



47: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:15:09.85 ID:vyCd+JK40
 週が明けて月曜日、アタシは事務所にやってきた。

「お、加蓮ちゃんおはよー」

 ソファに寝そべった杏が携帯ゲーム機から顔をあげる。部屋の中には他に人の姿は見当たらない。
以下略 AAS



48: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:16:10.71 ID:vyCd+JK40
「――ォ!!!」



 突然、荒々しくドアが開け放たれ、スーツ姿の見知らぬ男が部屋に飛び込んできた。
以下略 AAS



49: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:17:13.46 ID:vyCd+JK40
 それからガチャリとドアが開き、プロデューサーが部屋に入ってきた。

「乃々が人さらいに連れてかれたよ」

 杏が言った。
以下略 AAS



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