北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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42: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:06:04.46 ID:vyCd+JK40
 最後の曲を歌い終えて、お客さんに一礼し、ふらつきながらステージを去る。
 舞台袖にプロデューサーと、出番を控えて待機していたらしい乃々ちゃんがいた。

 緑を基調にしたドレスをまとった乃々ちゃんの姿は、まるでおとぎ話から飛び出してきた森の妖精のようで、こんな状態だというのに、アタシは不覚にも少し、見とれてしまった。
 ふだんは化粧はしていない乃々ちゃんだけど、今は薄くメイクをほどこしていた。元々色素の薄い肌がいつも以上に白く、なんだか触れようとしたら消えてしまいそうな儚さを感じる。

「あの……」

 乃々ちゃんがささやいた。

「初めての舞台で……あんなに堂々とやり遂げるなんて、すごいんですけど……加蓮さんにあそこまでやられたら、もりくぼはもう逃げられないんですけど……困るんですけど……」

「う、うん……ありがとう?」

 乃々ちゃんは、まだなにか言いたげに、そわそわと視線を泳がせた。
 それから、意を決したように息を吸い込んで、

「……行ってきます」

 本当にわずかな、ほんの一瞬、目を合わせてくれた――ような気がした。

 驚き立ち尽くすアタシの横を、乃々ちゃんがすりぬけていく。
 客席から雄々しい歓声があがった。

 このままここで見ていたい、とも思ったけど、アタシはひとまず控室に戻ることにした。ステージでの緊張と疲労で、気を抜いたら倒れてしまいそうだったからだ。



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