北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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32: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:50:41.19 ID:vyCd+JK40
「よし」

「あの、さっき300人とか400人とか聞こえたんだけど、まさかお客さんの数じゃないよね?」

「もちろん客の人数に決まってる」
以下略 AAS



33: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:52:04.40 ID:vyCd+JK40
 プロデューサーは、打ち合わせがあるとかで再び外に出て行った。
 いまいち現実感が湧いてこない。アタシがアイドルとしてライブをする? 本当に?
 それに杏も乃々ちゃんも、仕事はしないんじゃなかったの?

「どうなってるんだろ……」
以下略 AAS



34: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:53:45.67 ID:vyCd+JK40
 プロデューサーの指示により、アタシは今までのレッスンに出るのをやめ、ライブに向けたレッスンに取り組むことになった。
 トレーナーさんは呼ばずに、レッスン室が空いている時間を使って部署内だけで行うらしい。
 やはりネックとなるのはアタシの実力だけのようで、杏と乃々ちゃんに関しては、誰も、なんの心配もしていないようだった。

「とりあえずいつもみたいにやってみて」
以下略 AAS



35: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:54:59.37 ID:vyCd+JK40
 次に、アタシが歌う曲を決めることになった。
 プロデューサーが見繕ってきた候補曲を流し、みんなで聴いて協議する。
 CGプロには何度も所属アイドル同士でカバーしあい、ほぼ共有みたいな扱いになっている曲がいくつもある。その中から、曲の調子や振り付けの難易度、曲自体の知名度などを考慮して選択する。最初はアップテンポで有名なやつがいい、次は落ち着いた曲がいいかもしれない、と2曲はすんなりと決定した。さて、あとひとつはどうしようかと悩んでいたところ、

「あれ? これ、歌は?」
以下略 AAS



36: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:56:25.20 ID:vyCd+JK40
 ライブで披露する曲が決定したことで、アタシは歌の練習も始めた。

「歌、うまいですね」

 最初のボーカルレッスンのあと、乃々ちゃんが感心したようにつぶやくのを聞いて、少し嬉しく思った。ここに来てからちゃんと褒められたのって、これが初めてかもしれない。
以下略 AAS



37: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:57:33.67 ID:vyCd+JK40
「前に双葉が『契約交わしたらアイドル』とか言ってたけど、俺はそうは思わない。最近はそうやって職業のひとつのような言われかたをしているけど、アイドルって本来は偶像って意味で、職種でいうならタレントってのが正しいんじゃないかな」

 ある日、アタシのレッスンを見ていたプロデューサーが唐突にそんなことを言った。

「偶像って?」
以下略 AAS



38: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:59:42.17 ID:vyCd+JK40
 ライブ当日、アタシたちはプロデューサーの運転する車に乗って会場に向かった。

 会場となるライブハウスは地下にあった。階段は、すれ違うにもひと苦労しそうなくらいせまく、壁には見たことのないバンドのポスターがびっしりと張られていた。
 プロデューサー・杏・アタシ・乃々ちゃんの順で一列になって階段を下りていく。一段下るごとに空気が冷えていくようで、この先は地獄にでも続いているんじゃないかと思った。

以下略 AAS



39: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:01:16.20 ID:vyCd+JK40
 ガチガチに緊張してステージに向かうも、実際はお客さんなんて全然入っておらず、なにかの間違いでやってきたらしい、ほんの数人が、アタシになんてまったく興味がないという感じにちびちびとカクテルを舐めている。

 ――なんてことはなく、ホールは超満員だった。

 スポットライトがステージを照らし、歓声が湧き上がる。
以下略 AAS



40: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:02:57.22 ID:vyCd+JK40
「み、みんなー、はじめまして!」

 声がうわずった。いや、だいじょうぶ、大したことじゃない。

「……新人アイドルの、北条加蓮だよ。今日はデビューの日なんだ。みんな楽しんでってね!」
以下略 AAS



41: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:04:31.03 ID:vyCd+JK40
 自分が特別な人間だと思いたかった。

 昔のアタシは、すべてを貧弱な体のせいにしていた。
 この体さえまともなら、アタシだってあそこに行けるのにと、テレビの中の輝く世界を夢見ていた。

以下略 AAS



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