北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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40: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:02:57.22 ID:vyCd+JK40
「み、みんなー、はじめまして!」

 声がうわずった。いや、だいじょうぶ、大したことじゃない。

「……新人アイドルの、北条加蓮だよ。今日はデビューの日なんだ。みんな楽しんでってね!」

 少しの間を置いて、ぱちぱちと拍手が巻き起こる。
 このあいさつのセリフは、プロデューサーが考えたものだ。
「なにをしゃべればいいかわからない」とアタシが相談して、プロデューサーはろくに考えもせずに「こんな感じ」とメモ帳に書きなぐった。
 適当に変えていいとも言っていたけど、アタシはそれをそのまま採用した。

 新人アイドル、デビュー、まるでアタシがアイドルを続けていく前提みたいな言葉が並んでいる。これはプロデューサーの希望だろうか。それとも、なにも考えていないのか。

 2曲目が始まり、アタシは少しだけ冷静になった。冷静になって、変調に気付いた。
 すでに息が切れ始めている。早すぎる、レッスンではこんなことはなかった。この時点では、まだまだ余裕があるはずだった。
 緊張のせいなのか、体力の消耗が早い。
 レッスン通りに――と頭の中で繰り返し、なんとかその曲は、大きく崩れることなく、歌い、踊り切ることができた。

 だけど、どうしよう。
 心臓がうるさい。呼吸が整わない。体が思うように動かない。
 最後の曲はバラードだ、振り付けはほとんどない。だけど、とてもまともに歌える気がしなかった。
 疲労が積もってくると声が安定しなくなる、この弱点はレッスンでは克服できなかった。そもそもここまで消耗しないうちに終わるはずだった。
 アタシに与えられた時間は15分だ。乃々ちゃんの半分、杏の三分の一程度でしかない。
 まさか、ここまで体力がないとは、誰も思っていなかっただろう。

 ……本当に、アタシはダメだなぁ。

 自分の吐く荒い息が、頭いっぱいに響き渡る。
 頭がぼうっとして、視界が霞でもかかったみたいに白くなっていく。

 今までも何度か味わったことがある、これは、意識を失う直前の感覚だ。



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