北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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39: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 23:01:16.20 ID:vyCd+JK40
 ガチガチに緊張してステージに向かうも、実際はお客さんなんて全然入っておらず、なにかの間違いでやってきたらしい、ほんの数人が、アタシになんてまったく興味がないという感じにちびちびとカクテルを舐めている。

 ――なんてことはなく、ホールは超満員だった。

 スポットライトがステージを照らし、歓声が湧き上がる。
 客席ってこんなに近いんだ、と思った。
 そこは、ぎゅうぎゅうに押し込まれた、人の海だった。プロデューサーは400売るとか言ってたっけ? 400人、800個の目が今、アタシに集中している。

 思わず全身をこわばらせた。

 頭の中が真っ白になりそうだった。


 ……なにが『ひいき』だか。こんなの、スパルタにもほどがあるでしょ。


 前奏が流れ始め、はっと我に返る。
 予定だと、まず1曲歌う、歌い終えてから、お客さんにあいさつをする手はずになっている。
 あわててステージ中央のマイクスタンドに刺さっているマイクを手に取った。

 歌が始まる。
 喉から心臓が飛び出しそうな緊張の中で、アタシは必死に声を絞り出し、体を動かした。
 有名な、耳になじんでいる曲ということもあるのだろう、お客さんたちの反応も悪くない。みんな、みっちりと詰め込まれたまま体を揺らし、リズムをとっていた。
 日常生活では味わうことのない大音量が、骨の内側にまでびりびりと響く。
 無我夢中で、自分がちゃんと歌えているのか、ちゃんと躍れているのかもわからないまま、最初の曲が終わる。
 スピーカーから流れる音と入れ違いになるように、拍手と歓声がホールを埋めた。体が熱かった。



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