北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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◆ikbHUwR.fw
[saga]
2017/12/31(日) 23:16:10.71 ID:vyCd+JK40
「――ォ!!!」
突然、荒々しくドアが開け放たれ、スーツ姿の見知らぬ男が部屋に飛び込んできた。
「うるさいよ、もうちょっと静かに入ってこれないの?」
杏があきれたようにつぶやく。知り合いだろうか。
「おお、久しぶりだな双葉ァ! ――ん? そっちは知らない顔だな、誰だァ!」
「新人アイドルだよ、北条加蓮ちゃん」
「北条ォ!!」
「うるさいよ」
「それで双葉ァ! もりくぼはどこだァ!!」
「さあねー、知ってても教えないよ」
「ほう……」
アタシは驚きのあまり、声を出すことも忘れていた。
男はカツカツと足音を立てて部屋の中を歩き回り、
「――そこだァ!!」
「ひぃっ!」
机の前に差し掛かったところで、腕を高く掲げて叫んだ。その手には、乃々ちゃんが襟首をつかまれて持ち上げられていた。
「どこにいても見つけるって言っただろ、もりくぼォ!!」
「あうう……あの……お、おかえりなさい……」
「ただいまァ! 喜べもりくぼォ! 土産代わりにテレビCMの仕事取ってきてやったぞ!!」
「てっ、てれび!? う、嘘! 嘘ですよね!?」
「嘘なわけあるか! さっそく打ち合わせに行くぞ! 仕事は楽しいなァ、もりくぼォ!!」
「む、むぅーりぃぃぃいいいいい!!!」
男は乃々ちゃんを小脇に抱えたまま走り出し、そのまま部屋を出て行った。
「お、ドップラー効果」
杏が面白がるようにつぶやいた。
「えっと……なんだったの、あの人。人さらいじゃないんだよね?」
「あれは乃々のプロデューサーだよ。研修から帰ってきたんだね。相変わらず、いちいち声がデカくてうるさいったら」
「研修?」
「うん、よく知らないけどそういう制度があるらしくて、しばらく関西の支社に行ってたみたい。で、乃々は基本あの人の言うことしか聞かないから、そのあいだここに預けられてたってわけ」
「そうなんだ……」
――みんな、休暇は終わりか。
「杏も、そろそろ?」
「ああ、もう聞いたんだね。うん、乃々も連れてかれちゃったし、ちょうどいいかもね」
「なんでアタシには教えてくれなかったの?」
「口止めされてたから、加蓮ちゃんに余計なことは言わないでほしいって」
プロデューサーから、ということだろう。
「どうしてかな?」
「試してみたかったってことじゃないかな? 仮契約って、本当ならスカウトされた子が考える期間じゃなくて、事務所のほうが、その子がアイドルとしてやっていけるか見定める期間だろうから」
「つまり、アタシがこの1ヶ月で、自分からやる気を出すかってこと?」
「そういうことだろうね」
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