3:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:09:37.81 ID:xHPbDruOo
私たちの種族が正体を隠しているのには理由がある。
まずは、人間たちの閉鎖性。
彼らは、自分たち以外の知能の高い生命を決して認めはしない。
4:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:10:04.00 ID:xHPbDruOo
私たちは恐れている。
自分たちの正体が人間にばれてしまうことを。
5:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:10:34.33 ID:xHPbDruOo
本当なら、目立たず、騒がず、
静かにひっそりと生きていくべきなのだろう…。
しかし、なぜ私たちが人間たちの顔色をうかがいながら、おとなしく生きていかなければいけないのか。
以前から一族の生き方に疑問を感じていた私は、最近、人間たちの世界に積極的に関わろうとしている。
6:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:11:00.72 ID:xHPbDruOo
闇にまぎれて潜むように生きてきた今までとは、まったく違う体験。
私たちの歌声に、私たちの踊りに、みんなが笑顔や歓声を返してくれる!
ライブの後、私は自分の胸の鼓動の速さにいつも驚かされている。
7:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:11:27.51 ID:xHPbDruOo
話の巧拙はともかく、やり口は完全に私たちのそれだ。
だけど、神に…いや、違うわね、一族に誓って、
「私は吸っていない」。
それだけは確かに言える。
8:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:11:57.41 ID:xHPbDruOo
雑談は終わり、いつも通りの練習が始まる。
9:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:12:25.67 ID:xHPbDruOo
最近、少しだけわかってきたことがある。
「今を精一杯楽しむ」という感覚。
それは、私たち一族の生き方にはなかったものだ。
10:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:12:53.78 ID:xHPbDruOo
…たしかに、上を見れば私たちよりも優れたパフォーマンスをするグループや、
私たちより上手に歌うグループはたくさんいるだろう。
昔の私なら、彼女のように、自分たちの不甲斐なさに怒っていたかもしれない。
でも今の私は、少し冷めた目で彼女を見てしまっている。
11:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:13:23.23 ID:xHPbDruOo
私の歩幅は、こんなに広かっただろうか。
普段の歩幅は思い出せないけど、いつもと違うスピードで歩いているのはわかる。
どうやら今日のあの子の言葉に、気持ちが乱されているようだ。
12:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:13:57.30 ID:xHPbDruOo
うまく寝付けずにふらふらと夜の街をさまよっていた私は、
今、目の前の少女のダンスにぼんやりと見惚れていた。
弱々しい灯りに照らされながら、額に汗を浮かべて一心に踊るその少女の姿は、
まるで、大勢のお客さんの前でスポットライトを浴びながら踊っているように真剣で…。
13:名無しNIPPER[sage]
2017/10/23(月) 01:14:42.49 ID:xHPbDruOo
ベンチに座って、目の前の女の子と話しながら、
私の心には、さっきの疑問が再び湧きあがっていた。
私たち自身がライブを楽しんで、そして観客も楽しんでくれるなら、それでいいじゃない?
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