勇者「勇者なんてクソ喰らえ」
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6:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 22:32:26.39 ID:pTAgI72RO
跳び上がった騎士は剣を真っ直ぐ振り下ろしてきた。俺がスイカなら、きっとパックリ綺麗に割れてるんだろうな。だが俺は人間だ。人間には、回避行動という選択肢がある。

勇者「トロいんだよアホッ!」

三十六計逃げるに如かず。騎士の重い一撃を横っ飛びで避けた俺は、背中を見せてスタコラサッサのスタコラサッサ。足の速さだけには自信がある。騎士は重装備だから、そう俊敏な動きはできないはずだ。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 23:17:55.82 ID:PrYnNBSy0
暗い。光も世界も今が昼だか夜だかもさっぱり分からない。
パチパチと火の爆ぜるような音が聞こえる。誰かが焚火をしてんのか?
指や足は全く動かない。磔の刑にされた感じだ。いや、磔はもっとキツイよな。
とにかく、どんな形にせよ俺は生きてる。流されて、偶然どっかの川岸に流れ着いたんだな。
これが幸運と取るべきか不運と取るべきか、まだ判断しかねるぜ。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 23:40:54.89 ID:PrYnNBSy0
???「あんた、王都から来たんだろう? 王都から出る旅人はみんな、ホショ・ツァイダム川を渡河するんだ。必ずと言って差し支えないほどにね」

勇者「ホショだか何だか知らないけどな、俺は川を渡るつもりはなかった。鎧を着こんだ不審者に着け狙われて、川に落ちたんだ」

???「ハッ、バカだねぇ。あんた所持品は流されちまったみたいだけど、職業は何をしてたんだ?」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 00:26:50.96 ID:OBhwihw10
ようやく目が見えるようになった。樹々の隙間から差し込む暖かい光は、きっと朝陽のものだ。
俺は昨日の夕方から今朝までずっと眠りこけていたんだ。はあー、情けないったらありゃしねぇ。
身を起こすと、俺は皮張りのベッドから飛び降りた。よくもまぁ、動物の皮と骨だけでここまで立派な寝床が作れたモンだよ。
あの少女は一体何者なんだ? 

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 09:10:11.06 ID:z7qpNiwHO
アイシャ「魔王の居場所ねぇ……その前にひとつ、あたしの頼みを聞いちゃくれない? あんた、勇者様なんだろ?」

勇者「ああ、いかにも。ところで図々しいとは思うけどさ、腹が減ってるんで飲み食いできる物はあるかい?」

アイシャ「もちろんあるよ。依頼料と考えれば安いものさ。ついてきな!」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 09:55:13.29 ID:z7qpNiwHO
アイシャ「あたしを金持ちにしてくれ。それはもう、豪邸が何件も立つ程の大富豪に」

勇者「はっ?」

両手を大きく振り上げて説明する女狩人を、俺はぼんやりとした目で見つめていた。こいつは何を言っているんだ? そんなランプの魔神にするような願いを俺に頼んでどうする。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 12:59:05.20 ID:z7qpNiwHO
朝食を済ませた俺は、無性に小便がしたくなった。思えば昨日の朝から、一回も厠に行っていない。道理で股間の自己主張が激しくなったわけだ。俺はアイシャが笛を吹いていた岩に立ち、ズボンを下ろして用を足した。
小便の匂いにつられて、魚が集まってくる。イヤー、壮観壮観。仰げばパピプペポ山。

勇者「あれは山なのか? まるきり崖じゃん。急峻な断崖だよ! 滑り台としては0点だね!」

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 17:00:38.31 ID:z7qpNiwHO
武器が必要だった。獣を狩るにも、魔族を殺して金を奪うにも、族長のカワイイ娘を救うにも。全てにおいて、武器が大前提だ。特に片手剣がいい。ダンビラみたいな幅広の刀や、レイピアのような細剣ではいけない。適度な大きさのThe Swordが欲しいんだ。
武器の旨をアイシャに伝えたら、弓で思い切り殴られた。イテェな!

アイシャ「勇者はあらゆる武器をマスターせねばならない。幼児でも知っている基本事項よ。あんた、騎士学校で一体何を学んできたんだ」

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 17:46:08.94 ID:z7qpNiwHO
移動式の住居を畳んだアイシャは、俺を荷物係にして颯爽と前を歩き始めた。クソ重い。両肩が外れちまいそうだ。俺は勇者様だぞ。偉大なアブなんちゃらの子孫なんだぞ。隷属民の狩人如きが、良い気になりやがって。
自然の前では人間の法など、まるで無力。
あー、吐きそう。

勇者「オイ! 松林に入ったみてぇだが、道はこっちであってんの!? 闇雲に進むだけじゃ、道は開けないと思うぜ!」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 18:20:08.36 ID:z7qpNiwHO
俺の名はユ・ウシャー。騎士学校からドロップアウトして勇者に転職。社会の鎖から解放され、意気揚々、魔王城へいざ行かんと故郷ジャララバードを出立した……はずだった。
それがヒースの原野で変態騎士に追いかけ回され、川に落ちて、暴力女の配下になっている。
朝から歩き続けて、もう日暮れ。脚が痛くて、これ以上進めそうにない。

勇者「ったく、嫌な世の中。勇者なんてクソ喰らえだ。やってられっか」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2017/07/04(火) 23:59:19.61 ID:OBhwihw10
老婆「こんばんは、旅の方。もうすぐ夜の帳が下ります。さぁさ、中にお入りください」

勇者「あの、お代は……」

老婆「久方ぶりのお客様じゃ。別にお代はいりませんよ」
以下略 AAS



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