6:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 22:32:26.39 ID:pTAgI72RO
跳び上がった騎士は剣を真っ直ぐ振り下ろしてきた。俺がスイカなら、きっとパックリ綺麗に割れてるんだろうな。だが俺は人間だ。人間には、回避行動という選択肢がある。
勇者「トロいんだよアホッ!」
三十六計逃げるに如かず。騎士の重い一撃を横っ飛びで避けた俺は、背中を見せてスタコラサッサのスタコラサッサ。足の速さだけには自信がある。騎士は重装備だから、そう俊敏な動きはできないはずだ。
不審者「ほほう、勇者が逃げるか」
勇者「うわッ! ぴったり張り付いて来てる! 鎧があってそのスピードかよ!」
俺は驚天してその場で足を踏み外した。もう原野は抜けた。あとは目下に広がる川……。
勇者「川!? おい待て、こんな激流に落ちたら死んでしまうではないか!」
不審者「フム、自然の力に頼るのも悪くはない。おい貴様、死ね」
俺は腰を蹴り飛ばされた。両脚がふわッと浮く。気持ちの悪い浮遊感が数秒続いて、冷たい川の流れが俺の全身を切り裂いた。
俺「ガボ!? ガバガバガババ……アバババ」
魔王討伐初日から溺れ死ぬなんざ、聞いて呆れるだろう?
悲しくて涙が出そうだ。
もうこのまま川に流されて、死んでしまえ。
次に生まれ変わった時は、普通の家に生まれて普通の学校に行って普通に結婚して……普通……普通……。
カーチャン……ごめんよ……。
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