5:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 21:35:32.02 ID:pTAgI72RO
老人を殺した俺は、ひのきの槍を背負ったままヒース咲き乱れる原野を駆けていった。なだらかな丘陵の端に、夕陽の欠片が消えていく。
待ってくれ、松明も無いんだぞ。真っ暗な夜を越せるわけがないじゃないか。俺は勇者だってのに、何てザマだ。先祖に顔向けできないぜ。
勇者「腹が減った……。くそッ! あのジジイ、鼠の尻尾しか持っていなかった。こんなの、どうやって食えばいいんだよ!」
カサッ、カサカサッ
勇者「なんだ? 切り株の陰で何かが蠢いているぞ? 蠢動ってやつ? 槍を投げてみるか」
俺は切り株の陰めがけて、槍を放り投げた。槍は回転しながら落ちて、草のクッションで優しく受け止められた。くそう! 膂力も貧弱だってのか! 俺は騎士学校で優秀な生徒だぞ!
???「鍛錬不足だな。剣だけを扱うのが、騎士というわけではない」
切り株の陰から、全身を鈍色の鎧で包んだ騎士が現れた。ガッチャンガッチャン、金属の擦れる音がうるさい。兎だと思うてたらごっついゴリラ紳士かよ。頼むから消えてくれ。
勇者「変人め。こんな夕方、一人で花畑に寝転がって。言わせてもらうぞ、不審者かな?」
不審者「不審者と聞きたいのはこちらだ。ひのきの槍だけで、どこへ行く。まずは冒険者ギルドで装備を整えるのが普通だろう」
勇者「必要ない。俺は勇者だから」
不審者「黙れ。よく見かけるのだよ。自分を勇者と偽り、不貞を働く輩がな。そして、私はそんな不届き者を始末するアサシン」
勇者「アサシン? 馬鹿かアンタ。そんな重装備で暗殺なんて、ちゃんちゃらおかしくって」
騎士の姿が消えた。
いや、消えたんじゃない。
上に跳び上がったんだ!
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