新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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423: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:17:51.22 ID:4fkctst+O

 美波にたいして効果を与えることが可能なのは現状では医師くらいなもので(それも大したものではなかったが)、アナスタシアもその他のメンバーやプロデューサーにできることと言えば、美波の味方であると伝えること、いつでもどんなときでも力になると何度も何度も伝えることくらいしかなかった。このことは彼女たちにはとても辛い事実だった。事態が深刻さを増すにつれ、言葉と実行性の溝が深まり、無力感も増していった。亜人を巡る社会状況にたいしてはどうしようもないとしても、それに押し潰されそうな美波にすらなにもしてあげらない。できないことの多くを認め、それでも寄り添うという意志を見せること。これを誠実に実行するのは、大人、医療に従事する者でも難しいことで、まだ少女であるシンデレラプロジェクトの彼女たちにはなおさらだった。

 このような状況のなか、プロデューサーはメンバーたちにまず自分のことを最優先にするよう告げた。自らの心身を健康に保ち、学校に行き勉強をし、友人たちと会話をし遊ぶ。プロデューサーは、彼女たちに楽しいと感じることに後ろめたさを感じてほしくなかった。

以下略 AAS



424: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:20:01.66 ID:4fkctst+O

 現在のところ、彼女たちは仕事を続けられてはいる。だがこれはあくまでいまのところであって、これからはどうなるかわからない。彼女たち一人ひとりの状態をきちんと見極め、状況に応じた対応していかなくては。

 アナスタシアが失踪したのは、プロデューサーがあらためて身を引き締める思いになったその矢先のことだった。

以下略 AAS



425: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:21:37.27 ID:4fkctst+O

 その日のうちにプロデューサーは寮監とともに警察に行き、捜索願を出した。捜索願は受理された。四日過ぎた。警察からの連絡はこなかった。プロデューサーは警察に電話してみた。捜査状況はもちろん聞き出せなかった。電話に出た警官は、今回のケースに事件性はなく、家出人の多くは一週間以内に帰ってくるのだから落ち着いて待っていてくださいと嗜めるように言った。

 電話が切れたあと、プロデューサーはアナスタシアの携帯に電話をかけた。うんざりするくらい耳にした「おかけになった電話番号は……」のメッセージがまた再生された。

以下略 AAS



426: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:22:45.59 ID:4fkctst+O

 ちひろはいったん言葉を切り、おずおずとプロデューサーに尋ねた。


ちひろ「その、どうでしたか?」
以下略 AAS



427: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:25:36.23 ID:4fkctst+O

−−午後一時三十四分。


 帽子を被った男がグレーのトレーに小さなサイズのボディバッグを置いて、手ぶらのまま金属探知機をくぐり抜ける。トレーはコンベアでX線スキャナーまで運ばれる。X線を浴びたボディバッグの中身が透かされ、保安検査員が危険物が入っていないかモニターをチェックする。財布、パスポートのほか、小物が数点。本人も金属探知機に引っかかることなく通過した。帽子の男はボディバッグを肩にかけ、搭乗ゲート前のラウンジへ歩いていく。
以下略 AAS



428: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:27:13.65 ID:4fkctst+O

IBM(奥山)『ど……ぞ……』

佐藤「おつかれ」

以下略 AAS



429: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:29:01.29 ID:4fkctst+O

 佐藤は搭乗手続きを済ませ、飛行機に乗り込むとチケットに記載されている座席番号を確認した。機内には六十名ほどの乗客がいて、旅行先での計画やコンペティションの資料の見直しをしている。結婚報告を向かう若いカップルも乗っている。

 佐藤は辺りを見渡し予約した座席を探す。すこしして席を見つけそこに向かって通路を進むと、微かに音楽が鳴っているのを耳にする。うたた寝している女性の耳から外れたイヤホンから漏れ聞こえてくるその曲には聞き覚えがあった。ジョニー・キャッシュの「The Man Comes Around」。黒服の男は「叫び声に嘆きの声/生まれくる者もいれば死にゆく者もいる/アルファにしてオメガの王国が到来する」と歌っていた。

以下略 AAS



430: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:30:40.75 ID:4fkctst+O

 佐藤は文章を目で流しつつ、ページをめくる。章の終わり近く、四二〇ページで佐藤は手を止め、そのページの文章をじっくり読む。


「これを聞いてるなら、二〇三九便の絶対に破壊されないブラックボックスに耳を傾けているなら、この飛行機が垂直降下を終えた場所に行き、残骸を見渡してみてくれ。破片とクレーターを見れば、僕がパイロットの資格を持っていないことがわかるはずだ。これを聞いてるなら、僕が死んだことがわかるはずだ。」
以下略 AAS



431: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:32:18.68 ID:4fkctst+O

ーー午後二時六分。


 高森藍子と日野茜はいつもより張りつめた感じで元気を装って歩く本田未央のとなりをすこしためらいながらも調子をあわせてついていっていた。ポジティブパッションの三人は、清涼飲料水の商品宣伝のため、撮影許可を取った学校を走り回り、きらきらと光を受ける飲料水を喉に流し込んだ。撮影は予定通りに終わり、三人は夏服から私服に着替え、いまはプロダクションへの帰路を歩いていた。
以下略 AAS



432: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:33:58.59 ID:4fkctst+O

 その声には憂いの色が滲んでいて、茜の溌剌さと自分のそれを比較したとき、後者の方にふがいなさを感じでいるような言い方だった。未央の表情にほころびができるのを見た藍子は、ついに胸の内に抱えていた思いを口にした。


藍子「未央ちゃん、無理してませんか?」
以下略 AAS



433: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:35:44.70 ID:4fkctst+O

 未央はすこし俯いて黙っていたが、ひた隠そうとした胸中を友人二人に言い当てられたことに動揺していて、その内面が唇に現れていた。喉につっかえる言葉をなんとか口にしようと唇はわずかに開くが、すぐに閉じてしまう。藍子も茜も足を止めて未央を見守っている。やがて未央の口がちゃんと開き、迷いがちに言葉を口にした。


未央「あのドリンクさ……作ってるの、グラント製薬なんだよね」
以下略 AAS



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