新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
1- 20
427: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:25:36.23 ID:4fkctst+O

−−午後一時三十四分。


 帽子を被った男がグレーのトレーに小さなサイズのボディバッグを置いて、手ぶらのまま金属探知機をくぐり抜ける。トレーはコンベアでX線スキャナーまで運ばれる。X線を浴びたボディバッグの中身が透かされ、保安検査員が危険物が入っていないかモニターをチェックする。財布、パスポートのほか、小物が数点。本人も金属探知機に引っかかることなく通過した。帽子の男はボディバッグを肩にかけ、搭乗ゲート前のラウンジへ歩いていく。

 次に手荷物検査を受けたのは二十代後半の母親と七、八歳くらいの娘の親子連れだった。母親はあれこれと金属品をトレーのなかに入れていく。娘のほうは水色のポーチを肩から外そうとしている。ふとガサッという音がして、女の子は天井を見上げる。女の子が見たのは、大きな紙袋が天井に張り付き、左右に揺れながら一歩ずつ着実にというふうにゲートラウンジへ向かっている様子だった。


「ママ、おみやげが飛んでる」

「いいから早くして」


 母親はトレーに目を落としたまま、娘をせかした。

 紙袋を運んでいたのは、奥山のIBMだった。ホース状の首と先細ったチューブ状の四本指が特徴的な奥山のIBMは未発達といった印象を与える形状をしていて、不器用な動作で天井の梁に指をひっかけて移動していった。IBMは左腕で紙袋を抱ながらゲートラウンジで待っている佐藤のところまでやって来ると、風に飛ばされたてんとう虫が緑の葉っぱから地面に落下するみたいにぽとりと床に降りた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice