430: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:30:40.75 ID:4fkctst+O
佐藤は文章を目で流しつつ、ページをめくる。章の終わり近く、四二〇ページで佐藤は手を止め、そのページの文章をじっくり読む。
「これを聞いてるなら、二〇三九便の絶対に破壊されないブラックボックスに耳を傾けているなら、この飛行機が垂直降下を終えた場所に行き、残骸を見渡してみてくれ。破片とクレーターを見れば、僕がパイロットの資格を持っていないことがわかるはずだ。これを聞いてるなら、僕が死んだことがわかるはずだ。」
佐藤「ボイスレコーダーか」
佐藤は本から視線を上げ、窓から見える滑走路をぼんやり眺めながらつぶやいた。
佐藤「使い方わかるかな」
しばらくして、離陸の準備が終わったことが機内アナウンスで伝えられる。客室乗務員がフライト中のサービスと諸注意、非常時の対応を説明する声が機内に響く。乗客たちは乗務員の指示に従って座席のベルトを締める。佐藤もベルトを締め、窓の外を眺める。ターミナルや管制塔や格納庫、ボーディングブリッジと連結された旅客機、着陸した航空機をスポットに誘導するマーシャラー、ハイリフトローダーによる貨物の積み込み作業など、空港内のさまざまな施設や人員が見える。
いよいよ離陸のとき。旅客機はトーイングカーによってプッシュバックされ滑走路まで牽引される。それから離陸許可が管制塔から伝えられると、佐藤を乗せた旅客機はぐんぐんとスピードを上げてゆく。景色があっという間に後ろに流れ、速さが消えたと感じた瞬間に機体が浮かび上がる。空気抵抗による機体の振動と身体にかかるGの不可に不慣れな乗客たちが緊張するなか、佐藤はまだボイスレコーダーのことを考えていた。
吹き込む言葉はもう決まっていて、あとは使い方をどうにかするだけだった。
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