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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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344 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/06/29(月) 20:11:47.11 ID:Of1GcSB80
>>343
どもです。

>うーん、単純に見ればパシリの言葉も一応説得力はあるんだよね。
一応、彼らは彼らでベストを尽くそうと頑張っております。

>ただ、「なんでこうなった」の深いところまでを自分の目で確認できてないからそれぞれの遺恨やらなんやらをわかっていない。
>まぁそれ以前にこの時代の人間からしたら、「ヌルイ」で終了だろうけど。
これもその通りでございます。
なお、経験をさせないようにどっかの凡人が細工した影響もでかいらしいですよ!

>つうか、二郎さんがなんかカッコいいんですが。さすがハーレムの主。
唐突な賞賛に小躍りしました。やったぜ。成し遂げたぜ。
まあ、ここら辺から二郎ちゃんは苦虫かみつぶす生活が続きそうですがw

>「俺たちは強い」
>いや気にしないかwそもそもの原作(ルナ・ヴァルガー)ではあんま細かいこと気にしてないですしw
ぎりぎりルナさんは履修外なんすよ。いや、何冊か読んでお世話になった記憶はあるのですがそこまで覚えておりません
黄金のワイバーンの群れとか、ちゃらんぽらんなネーミングはかすかに残ってますがw
スラムダンクを想定してました

>これだけ言いたい、二郎さんと文醜顔良のやり取りが某戦車道のあの高校みたくなってるw
ガルパン、いいっすよね……っ!
でもどこ高校だろう。ノリ的にはドゥーチェかにゃ?そんなつもりはなかった。だが光栄ですうぇあ。

>で、韓浩さん。あなたも親方に殴られてくださいね。理由はあっちで明かされるでしょう。いつか(おおい)
韓浩さんは遠慮した。まあ、主君を止めるか態度を改めるかのどっっちかしとけよ的なことはありますね
鉄拳制裁については……理屈と納得がないと表面上の謝罪で終わりそうです
韓浩さん、地味様の意思を尊重しているので、そこまで言うならしゃあないか的な妥協(妥協は多分雷薄さんあたりにため息交じりに仕込まれた)の産物かな


どんどこいきまう。
345 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/06/29(月) 21:48:01.63 ID:Of1GcSB80
「来よったか!」

ガタ、と張遼は我知らず椅子から立ち上がる。
いよいよ、いよいよ勝負の。決戦の時が来たのだ。
ここは虎牢関の司令官室。ぐったりと空腹にへたりこんだ呂布と、伝令の報告にむむむと唸る陳宮のみがいる。
董家軍の、もっとも信頼できる幹部陣だ。本来ならばここには、彼女らを口やかましくまとめ上げる軍師と、それを困ったように包み込む総大将がいるのが常だったのだが。
だから、自分が総大将的な役割にいるのは落ち着かない。いや、向いていないのではないかとすら思ってしまう。
かつては、董卓と賈駆に好き勝手言っていればいい立場だったのに。いざそうなるとこんなにも自縄自縛になるものかと嘆息してしまう。
だが、ようやく決断を下すべき好機が来た。
いよいよ、反董卓連合が水関を出て進軍してきているという。

当然、水関の時と同じく橋頭堡なり、野戦築城しているであろう。
であれば時間が過ぎるほどに勝ちの目は失われていく。
未だまともに備えがない今こそが野戦にて乾坤一擲の機会。

と、言うよりそれしか董家軍の勝ち筋はない。ないのである。
時間をかければかけるほどに反董卓連合――袁家――はその陣容を文字通り分厚く整えてくる。
で、あれば野戦築城する陣地を確保すべく生身の兵が動く、今こそが好機。

まともに野戦を仕掛けることのできる機会は今を置いて他はないのだ。

「董家軍、出撃の時、というわけや!」

虎牢関という要害に籠るのを利点とさせてくれない敵に歯噛みしつつあった張遼は指示を飛ばす。
出し惜しみはしない。する意味が無い。

虎牢関には門扉を守る兵のみでの全力出撃。
それはともかくとして。まあ、まずは。

「ほな、皆な。腹いっぱい食べえや」

これまで飢えていた兵達に思う存分食べさせる。
いや、満腹の兵なぞ使い物にはならないが、まずは士気を上げること。そして、即刻ぶつかり合うことはないだろうという計算もある。
なにせ、払暁から日没までのみ戦闘すると伝えてきて、それを履行してきたのだから。
実際、色々な意味でありがたかった。
だが、それもこれまでである。

なんにせよ、落ち込んでいた士気をどうにか立て直して張遼は手元の軍勢を虎牢関より発したのである。

野戦であれば、一撃で逆転もありうる。ありうるのだから。
346 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/06/29(月) 21:48:27.97 ID:Of1GcSB80
◆◆◆

反董卓連合の本陣。その最奥。急ごしらえの天幕とはいえ、そこは袁家当主が逗留するに相応しい豪奢なつくりとなっている。
だだっ広いその空間に悠然と袁紹は鎮座し、優雅に茶を喫する。

「落ち着いて、らっしゃるのですね」

声をかけたのは郭嘉。袁紹の傍らで対董家軍の方針を立案、統括する軍師である。
元々名家の出身であったがその地盤による栄達を嫌い、名を伏せて中華を放浪したという変わった経歴の持ち主である。
まあ、それで当初仕官を進められていた袁家に結局腰を落ち着けることになろうとは、と郭嘉は苦笑するしかない。
だが、その過程は間違いなく糧であり、それがなければ今の自分もないであったろうと郭嘉は確信している。
なにより自分とは全く違った視点を持つあの友人とは出会うこともなかったはずである。

などと、益体もないことを考えている郭嘉を見ておかしそうに袁紹は笑う。くす、と。

「何か粗相を致したでしょうか」

内心ちょっとだけ焦って郭嘉は問う。いや、ちょっと思いを馳せていただけでおかしな態度はなかったはずなのだが。

「いいえ。でも、心ここに在らず、といった様子がおかしくって」

ころころと重ねて笑う袁紹に郭嘉は憮然として応える。

「――落ち着いて、いらっしゃる」

くす、と袁紹は笑いを軽やかに重ねる。

「ええ、郭嘉さんにそう見えているのならば安心できますわ。
 だって、そうでしょう?総大将が慌てて、狼狽しているような軍が勝てるはずありませんもの。
 ええ、そうですわ。今私にできることは、こうしていることだけですもの。
 前線で槍を振るうことも、献策することもできない。
 それでも。この反董卓連合において一番重要なのは私ですわ」

だから、と袁紹は笑う。華々しく。

「如何に袁家が隆盛か、諸侯が如何に弱小か。この身で示すのが私のお役目ですわ。
 そう、戦わずして勝つ。それをこの身のみで強いられているのです」

だから、と笑う。豪奢で、華麗に、雄々しく、気高く。

「袁家軍については私の手を離れていますわ。既にね。
 だってそうでしょう?」

そして一際艶然と、光輝を放つのだ。

「だって、二郎さんが仰いましたもの」

任せてください。勝ちます。徹底的に。そしてその栄光は貴女に、と。

「だから、私はこうしているのですわ」

全身で語る、放つ。自分の仕事は戦の結果に対して責任を取ることである、と。
既に断は下しているのだ。誰に権限を与えるか、という。

「なるほど。では。私は、その二郎殿に引き立てられたのですから。これはいよいよ負けられませんね」

下手な冗談である。が、そのような戯言を口にすることを知れば程立や趙雲は瞠目したであろう。

「ええ、二郎さんが仰ってましたもの。進むも、退くも貴女次第と。あの二郎さんが全幅の信頼を預けているのですもの。
 くれぐれも変な遠慮なぞしないでくださいましね?
 貴女の献策に立ちふさがるものはこの私自ら裁きの鉄槌を下してやりましょう」

おーほっほと笑いは、高貴に響く。

「いいですこと?わきまえてらっしゃるわね?」

郭嘉は頷く。

「勝利こそ最優先。魂魄に刻んでおりますとも」

「よろしくってよ。その忠勤、嬉しく思いますわ」

袁家鉄の掟。その根底。
勝てない戦に意味はない。しない。だから袁家は最強なのだ。
347 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/06/29(月) 21:48:53.99 ID:Of1GcSB80
◆◆◆

「で、うちらは何をしたらええねん」

怒気すら露わにして李典は郭嘉に問う。心底から彼女は怒っているのだ。
だって、李典は知ってしまったのだ。これからあの青年。自分を取り立ててくれた、かけがえのない青年。紀霊がその命を晒すのだ。
そのような無茶をしなくても、と李典は歯噛みする。例えば連弩だ。紀霊から示唆を受けたのは結構な前のこと。或いは、或いは。
思いつきでしかなかったであろう数多い兵器。その中にはきっと珠玉もあったはずなのだ。それを総動員すれば彼をそのような修羅場に立たせることもなかったのではないか。
そんな悔いが李典にはある。
実用化と量産化さえしていれば、と肺腑が焼ききれそうなくらいに燃え上がる悔恨。

だが、その思いは郭嘉には届かない。
たかが攻城兵器で戦局が移るものかと。いや、移るならば袁家の底知れない、無尽蔵な財源あればこそだ。
それにしたって、と内心苦笑する。

「あんたなあ、勘弁してや。うちらは、ほんまに頑張ってるし、お望みなら不眠不休待ったなしや。二郎はんが珍しくうちらに頼ってきたからな。
 ああ、知っとるわ。戦場で死ぬより過酷やよ。死に至るのは一瞬ちゃうし。
 つまり。ええか、二郎はんのためやったら袁家工兵は一日十二刻休まず職責を果たすで!
 なんなら一日四十八刻の任務も果たしたるわ!」

だから、と李典は訴える。

「二郎はんが何や身の程知らずなことをしようってのは分かってるねん。
 あんたが、だからつれないのも分かってるねん。
 何でもええ。うちに、うちらにできることは言ってほしいねん。
 後生や……」

嗚咽を交え、みっともなく哀願する李典に郭嘉は問う。

「どうしてそこまで紀霊殿に肩入れするのですか。
 貴女の才能については把握しています。どこでも、誰でもそれは評価するでしょう」

冷然とした郭嘉の言葉に李典は激昂する。

「あほ!あんたはあほや!アホ!うちはな!うちは!そんな大したもんやあらへんわ!
 阿呆!うちはな!本来そこらへんで野垂れ死んでるくらいにどうでもええ存在や!そんなもんや!
 うちがな、お役にたってるとしたら二郎はんのおかげや!
 やから!やから!
 うちかて分かるわ!あの呂布に二郎はんが挑むて!
 やから、うちはあんたの相手なんてしたないねん。そんな暇ないねん。 
 水関と同じく土攻めで虎牢関を落としたいねん。
 でもな、二郎はんはそうやないねん。 
 水関みたいに土攻めしたら楽やのに。そのためにうちは、うちらは頑張ってるのに」

幼子のように滂沱の李典。彼女の献身は報われないであろう。
だが、その想いは無駄ではない。

「分かりました。貴女の想い、把握しました。無駄にしません」

郭嘉は思う。
自分はどうにも、おかしいなと。
袁紹の想い。それは高貴であった。そして覚悟があった。信じる男に委ねて揺るがぬ思いがあった。
そして李典の嗚咽。そこには慕情があった。自分を引き立てた男に対する思いは慕情か、感謝か、それとも。

「まあ、それがどうした。と言うべきなのでしょうか」

既にあの青年に毒されているのかもしれない。
そして、既にこの戦に於いて勝利は約束されている。

後は。

「勝ち易きに勝つ。お見事です。後は貴殿の武勇、或いはそれ以外の何か。
 それを楽しみにしていますよ。
 なに、貴方が討死したって……」

袁家に勝利はもたらしますとも。
笑みなぞなく、真面目くさって郭嘉は思う。

願わくば、あの青年が呂布を打ち砕きますように、と。
348 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/06/29(月) 21:50:19.13 ID:Of1GcSB80
本日ここまですー感想とかくだしあー

あうあうあー

題名は、本当に困ってるのです!
かっこいいやつたのみまするよう

お盆までにいけるかなあ
349 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/02(木) 21:31:48.25 ID:JiI9QVaH0
ぺきり、と骨の鳴る音が響く。

「うんとこどっこいしょ、と」

身体を精一杯伸ばし、固定する。背に暖かで柔らかい感触を感じながら精一杯伸びをする。
両腕を伸ばし、背に背を預けて星のやらかくもしっかりした身体に身を預ける。
はい、絶賛ストレッチ中な二郎ですこんばんわ。
ちょっと離れたとこでは斗詩と猪々子が二人組でストレッチをしてます。
まあ、袁家軍では割と一般的な準備運動だったりするのだが、特別ゲストの秋蘭は奇異なものを見るような、何とも言えない視線でこちらを見ている。

いや、そりゃあね?秋蘭みたいにいきなり身体をトップギアに入れられる人はいいよ?
でも俺なんて凡人なんだから、こうやってストレッチしてアップせんと実力をきっちり発揮できないわけで。
いや、まあ。多分この場でそんなものが必要なのは俺だけだと思うけどね?
何にせよこれから万夫不当の恋の相手をせんといかんのだ。斗詩と猪々子が文句ひとつ言うでなく付き従ってくれるのがありがたい。
しかしまあ、これで三人とも討死したら袁家崩壊だよなあとか益体もないことを考えていたら、ストレッチに付き合ってくれてる星が問うてくる。

「しかし主よ。てっきり水関に穴熊を決め込むと思っていたのだが。
 それにいくら万夫不当と言っても相手は黄巾だろう?精兵で圧殺すればよいのではないか?」

ふむ。そういやそこんとこロクに説明もしてなかったな。だというのについてきてくれる斗詩と猪々子に感謝だ。
……秋蘭も無関心を装ってるけど興味津々って感じか。
まあ、いいや。別に知られても問題はなかろう。多分。

「まず、だ。水関に反董卓連合の将兵全員を収容するのは無理だ。これが一点」

流石に十数万の兵を収容できないのだ。それに土に埋もれてるしな。門扉のとこだけ掘り起こしたのよ。

「そして水関の時と同じく野戦築城をしてはいるが完成には程遠い。つか、無理」

「ほう。それはどうしてか聞いても?」

「うん。ぶっちゃけ工兵隊は攻城兵器にかかりっきり。母流龍九商会から技師とか呼んでるけどなあ」

だって、攻城兵器。あれ、真桜がやり過ぎたのだ。でかいのよ。水関の門扉を通らないから一旦分解せんといかんの。ぜーんぶ。
それを再起動して実戦テストしてとか、万全を期したらどんだけ時間がかかるやら。
いや、時間をかけるのはいいのだが、流石に領地を放り出して参加している諸侯が文句の一つでも言おうというものである。
そして、最大の理由。

「なあ、今一番やられたら不味いのは何か、分かるか?」

さて、と小首を傾げる星の髪をわしゃ、と掻き交ぜて。

「一番怖いのは。恋が単騎で特攻してくることだ。それも夜陰に紛れて本陣を衝かれると、どうしようもない」

それだけは避けたかった。だから水関に籠らずに陣を布く。あくまで軍と軍の戦いに持ち込む。
これでも万が一に備えてはいる。麗羽様の本陣には流琉と華佗を。
美羽様のとこには凪と張魯さんを配している。
即死でなければ救ってみせるという張魯さんのお言葉が頼もしいのだ。
そして、いよいよ始まる。

「始まったか」

喧噪が風に乗って聞こえる。
いよいよだ。いよいよ軍と軍がぶつかり合っている。戦法は曹家軍と孫家軍。戦線を支えてくれるであろう勢力である。

「ほう、四万弱、か。出し惜しみはないと見える」

鷹の目、とはこういうことなのだろう。
秋蘭、流石の眼力である。

ともあれ、まずは歩兵のぶつかり合いだ。
その喧噪を聞きながら俺は入念にアップを再開する。
なに、数の上ではどうあれ、曹家軍と孫家軍ならば支えるだろうさ。いや、支えてくれないと困るんだけんども。
俺にゃ無理だけどね!倍の兵と真正面からぶち当たるとか。

そんなことを思いながら
俺は入念にアキレス腱を伸ばすのであった。
350 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/02(木) 21:32:31.51 ID:JiI9QVaH0
◆◆◆

水関と虎牢関を守備する兵。それが怒涛となり前進する。四万の大軍に用兵なし。
ただ前進せよとばかりに真正面の敵にぶつかる。ぶつかる。
そして。

「やるやないか」

数の上では初手に於いてはこちらが上であるのにも関わらず。
真正面からぶつかり合って押し負けることなく、戦線を支えている。いや、このままであれば押し返すやもしれぬ。
で、あれば。

張遼は手を挙げ、振り下ろす。

「いったれー!」

銅鑼が響き、神速と謳われる張遼がいよいよ戦場に姿を現す。
ぐる、と左翼より出でて向かうは袁家本陣。
狙うは袁紹の首級一つ。

孫家軍の脇を掠めて陣を布く袁家に迫る。
涼州騎兵の本領を見よとばかりに駆けに駆ける。

「っしゃおらーー!」

だが、その突撃は勢いよく姿を現した軍勢に阻まれることになる。

張の旗を確認するや否や馬超は無言で出撃する。
言葉はいらない、最早いらないとばかりに。

「張遼!」

最早かつて交わした真名をすら呼ばずに突出する馬超に刹那、切なげに視線を送り馬岱は号令を下す。

「いくよ!」

馬家軍は一つの生き物となり動き出す。走り出す。一つとなって突き進む。そこには熱狂。
そう、馬家軍は一塊の狂戦死と化して馬超に続く。
なんとなれば、馬家当主を喪った怨恨は馬家軍の末端まで刻み込まれ、焔となり吹き出でる。
だから、真正面からぶつかる。神速の張遼なにするものぞとばかりに我先に身を投じる。

よくも、よくもおめおめと我らの前に身を晒したなと。
なるほど、一番槍はお嬢に譲ろう。だが、彼奴らは殲滅してやる。涼州騎兵、舐めるな。

そして騎兵と騎兵が。精鋭と精鋭がぶつかり合う。
初撃は互角。流石に鍛えていると馬岱は内心感嘆しながらも姉の姿を見失わない。

「あああああああああ!」

羅刹と化した馬超はそれでも直線的に馬を走らせる。
張遼からすれば厄介なことに迷いなく張遼に向かい突き進んでいる。その勢いたるや。
351 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/02(木) 21:32:57.95 ID:JiI9QVaH0
「ちい、猪が……!」

罵るもその前進を止めることはできず、ついには眼前に。

「よくも!父上を!」

「あほんだらあ!」

ついには単騎で切り込んだ馬超の槍は張遼に向けられる。
二合、三合と切り結びながらも、矢継ぎ早に配下へ指示を飛ばす張遼こそ褒められるべきであろう。
だが。

「ああもう!うっざ!」

張遼の指示を上回り馬家軍はその勢いを増す。増していく。
打つ手全てに対応し、その裏を掻こうという悪辣な動き。放置すれば致命傷になる嫌らしい一撃。
薄い陣構えを突破しようと下知を下すも言葉一つで阻まれる。

「ここにいるぞー!」

そしていつの間にか馬岱は実際に分厚く防衛線を構築するのだ。

「ええい!うっとおしい!」

張遼は心底叫ぶ。全力で向かえば突破できるだろうに。馬岱ごときが敷く防衛線なぞ。だが。

「張遼!覚悟!死ねえええええええええ!」

その槍は度々張遼に迫る。流石に片手間に対応できるものではない。

「ああもう、やってられん!」

馬家の用兵は支離滅裂なのに、変に噛み合って結局は戦線を押し上げている。
単騎で突撃する馬超。そしてそれを援護しようともしない馬岱。だが、それは結果としてこの上もなく噛み合って張遼の意図を妨げ、戦場を混沌と化している。
そして馬超にかかりきりなれば戦局は馬家に。戦局を優先すれば手元の兵は馬超により切り裂かれる。
これではまるで。

「馬騰はんを相手してるみたいやないか……」

個人の武と軍としての武。それが絶妙に噛み合って匈奴相手ですら連戦連勝であったあの日。帰ってはこない黄金の日々。
それが馬家軍。その一員であったからこそ張遼はその厄介さに舌打ちする。
そしてその刹那の感慨すら読み取るか如くに馬岱は軍を操る。
馬超の影に隠れていた凡庸な係累。それが馬岱に対する評価であった。だが、そんな評を下した過去の自分を切り捨てたいとばかりに張遼は盛大に舌打ちを重ねる。

「く、ここまでやるか!やってくれるやないか!」

だから、後は頼む。馬家軍はせめてここに釘付けにしてやるから、後は頼んだ。

「恋!頼んだで!」

肺腑より絞り上げたその声は、万夫不当の飛将軍に届いただろうか。
どうあれ。その直後、真紅の呂旗が動きだすのであった。
352 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/02(木) 21:33:23.71 ID:JiI9QVaH0
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案は「開戦」です

よろしくお願いします。
353 :赤ペン [sage saga]:2020/07/03(金) 12:38:42.29 ID:SKLFZ13E0
乙でしたー
>>347
>>郭嘉は思う。      この後の言葉をわざわざ目の前で言うのは人の心が分からないにもほどがあるので
○道すがら郭嘉は思う。  (その場を離れる)を行間に入れる感じでどうでしょう
>>348
>>そして李典の嗚咽。そこには慕情があった。自分を引き立てた男に対する思いは慕情か、感謝か、それとも。     慕情があったのか無かったのか
○そして李典の嗚咽。そこには慕情があった。自分を引き立てた男に対する思いは慕情、感謝……それだけではない。  色んなものが混ぜこぜになってそうかな【慕情か、感謝か、】だと一つを選ぶ感じがするのでこれでどうでしょう
>>349
>>両腕を伸ばし、背に背を預けて星のやらかくもしっかりした身体に身を預ける  えっ【やらしくも】?
○両腕を伸ばし、背に背を預けて星のやわらかくもしっかりした身体に身を預ける もしくは【やあらかくも】とか言ってみる?
>>それにいくら万夫不当と言っても相手は黄巾だろう?     間違いではないですがこれだと【黄巾兵の万夫不当】のように読めるので
○それにいくら万夫不当と言っても黄巾を相手にした話だろう? 元黄巾の万夫不当とかいたら怖いなw
>>即死でなければ救ってみせるという張魯さんのお言葉が頼もしいのだ。   間違いではないですが
○即死でなければ救ってみせるという張魯さんのお言葉は頼もしいものだ。  ちょっとした好みのようなものですが
>>戦法は曹家軍と孫家軍。戦線を支えてくれるであろう勢力である。  そんな【戦法;呂布】みたいなスタイルを?
○先鋒は曹家軍と孫家軍。戦線を支えてくれるであろう勢力である。  前衛と言うか先駆けと言うかそういう意味ですよね?
>>350
>>そう、馬家軍は一塊の狂戦死と化して馬超に続く。  こええ…誤字じゃない可能性すらあるのがなお怖え
○そう、馬家軍は一塊の狂戦士と化して馬超に続く。  多分こっちでいいはず
>>羅刹と化した馬超はそれでも直線的に馬を走らせる。  怒りで頭に血が上ってるなら直線的なのは普通では?
○羅刹と化した馬超はその中を直線的に馬を走らせる。  【騎兵同士がぶつかった】=乱戦に掛けるならこの方が良いと思います
>>351
>>馬超の影に隠れていた凡庸な係累。  【影に隠れる】だと黒幕感が出るので
○馬超の影に埋もれていた凡庸な係累。 凡庸な係累ならこの方が良さそうかな?

麗羽様の尊さとかそれぞれの思いとか…イイね!
稟ちゃんさんの対応の仕方もなんとも面白いというか、まじめくさった思考の後に願い事とか
馬家の以心伝心なのか目標が同じだからこその最高のコンビネーションなのかは知らんけど張遼もかわいそうに…自業自得だけど
354 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 21:19:33.90 ID:11bQfaHc0
>>353
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
よっしゃ。

>麗羽様の尊さとかそれぞれの思いとか…イイね!
どもです。
隙あらば全部持ってく麗羽様ですが、稟ちゃんさんは頑張りました。

>稟ちゃんさんの対応の仕方もなんとも面白いというか、まじめくさった思考の後に願い事とか
ロジックだけでなくエモーションも持ち合わせた最強の軍師になってくれるはずですw

>馬家の以心伝心なのか目標が同じだからこその最高のコンビネーションなのかは知らんけど張遼もかわいそうに…自業自得だけど
元々馬騰さんに目をかけられて幹部になってきたのに、それはないやろうと
そら馬家軍一万総火の玉です(全員気力170)
355 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:04:59.05 ID:11bQfaHc0
蒼天に翻る真紅の呂旗。
右翼よりその姿を現し、眼前の敵に相対する曹家と孫家を尻目に袁家本陣に向かう。
その戦闘には万夫不当。

なに、相手にとって不足はない。

「白馬義従、出るぞ!」

手にするのは兵卒が手にするのと変わらない普通の剣。
だが、それでいい。白馬義従の強さとは、平準されたところに真髄がある。一人の武勇に引きずられる類のものではないのだ。
そして白い奔流が頸木を解かれ、疾走する。

馬家軍のように真正面からぶつかるのではなく、途中で進路を変え併走する。
ニヤリ、と口を歪ませて公孫賛は先手を取る。

「挨拶代わりだ!撃てぇ!」

騎射。白馬義従が匈奴と互角以上に渡り合う所以である。
袁家本陣に直進するため本腰を入れての対応ができないのをいいことに、と陳宮は歯噛みする。
牽制に迫れば退き、こちらが引けば迫る。なんともいやらしいことこの上ない。
そしてまた牽制に一部隊を寄せる。どうせ届かぬだろうが、矢の雨の中進むよりは遥かにマシというものだ。
だが。

「甘い!」

牽制でしかないと見るや公孫賛はその部隊に寄せ、叩き潰す。

「各個撃破、とはこういうふうにやるのさ!」

あくまで袁家本陣への吶喊を最優先するのを見越し、ゴリゴリと消耗を強いてくる。その手際は熟練と言っていい。
そしてその損害が無視できぬほどになり、陳宮は舌打ちを重ねる。
いや、白馬義従を牽制しつつも損害を最小限に保つ陳宮の用兵は褒められるべきものであろう。例え白馬義従が呂布の武威を警戒して不必要に迫ってきていなかったとしても。
だが、その圧力により着実に進路は歪められており、このままでは袁家本陣への吶喊が果たせるかは微妙。いや、正直厳しくなりつつある。

「……公孫賛、片付ける?」

静かに呂布は陳宮に問う。アレが邪魔ならばアレを除けばいいのではないか、と。
一瞬その言葉にうなずきそうになりながらも陳宮は首を横に振る。

「いえ、いけませんぞ。それこそ彼奴らの思うつぼなのです。
 ……恋殿。行ってください。そして、袁紹の首級を」

その見切りこそ陳宮の真骨頂であったかもしれない。
自分たちが呂布の足手まといであると、ある意味軍師としては屈辱的なそれを認めて手元の戦力をもっとも効率的に運用する術を選ぶ。

「なに、公孫なぞ有象無象もいいとこなのですぞ。まともにやりあえば敵ではないのです!」

ちっちゃい体躯を精一杯踏ん反り返して陳宮は呂布を解き放つ。
軍団の長という枷を解く。解き放つ。最強を。

「……わかった。行ってくる」

そして呂布は単騎で進路を修正する。勿論立ちふさがる敵なぞいないも同然。

目標たる袁家本陣に狙いを定めて呂布は単騎で突撃を敢行するのだ。

「ちい、呂布には構うな!陣形を崩すな!」

流石の公孫賛が狼狽える。呂布と、切り離された配下の軍。どちらに対応するか。常ならばそこに乗じて戦局をひっくり返されることもあったろう。
だが。

「大事ない。呂布単騎の突出は想定内。今は目前の敵軍に専念すべき」

韓浩の淡々とした進言が響く。全く、それほど大きい声でないというのに、痛いほどに耳に響く。不思議なこともあるものだ。

「そ、そうだな。こっからが本番だった。すまんな、狼狽(うろた)えた」

「いい。呂布はやはり埒外。アレと戦場で互角以上に渡り合う。そのことにこそ尊敬の念を覚える」

「はは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃあ、呂布がいないんだ。彼奴の武勇に備えこれまでは沈黙していたが……」

にま、と公孫賛は笑う。手控えていた接近戦を、騎兵突撃を、そして騎射を組み合わせた白馬義従の本領を見せてやろうとばかりに。

「行くぞ!白馬義従は伊達じゃない!」
356 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:05:26.00 ID:11bQfaHc0
◆◆◆

単騎で恐ろしい勢いで騎馬が迫ってくる。言うまでもなく恋だ。
まさにそれは飛ぶが如く。飛将軍というのは言い得て妙だな。明らかに先ほどまで軍を引きていた時と速度が違う。人馬一体とはこのことか。
まあ、これからそんな化け物と遣り合わんといかんのだけどもね。
だが、此方も恋対策はしている。

「見せて貰おうか、飛将軍の実力とやらを!」

いや、知ってるけどね。武力100だし。でもまあ、これくらいは言わんと恰好がつかん。

「陳蘭!」

最前列にて構えるは陳蘭率いる長弓隊。既に五千の兵が展開し。ざく、ざくと矢を地に突き立てて臨戦態勢。
通常ならばまだまだ射程距離外だが、虎の子の長弓部隊にとってはそうではない。

「なんと、まあ……」

流石の秋蘭が感嘆する。この距離で届くのか、と。へへ、すごいだろう。いや、彼女なら可能だろうが、それを一般兵がやることに意味があるのだ。集団でね。
そして五千の弓兵はただ一人恋を目がけて矢を射る。ひたすらに。
もはやそれは矢の雨。或いは奔流。点でなく面で制圧するのが長弓兵の戦い。大体の位置に只管(ひたすら)矢を射る。

「……」

それらの矢が、恋には届かない。ただひたすらに飛ぶように馬を走らせる。手にした奉天画戟。残像すら見えないそれが降り注ぐ矢の雨を全て弾き返しているのだ。
マジかよ。
いや、想定はしていたけど実際目にすると笑うしかない。
だから。

「秋蘭、頼んだ」

「任されようとも」

秋蘭は不敵に笑い、静かに弓を構える。

「唸れ、餓狼爪!」

一射で三矢。それを文字通り矢継ぎ早に三射。
山なりに襲いかかる長弓部隊と違い、限りなく水平に襲い掛かるそれに流石の恋が……ってマジか。
眉間に迫る矢を掴み、その矢でもって続く二の矢、三の矢を弾く。
降り注ぐ矢を奉天画戟で弾き返しながら、だ。

だが、そこまでである。フ、と笑う秋蘭。

「依頼は果たした。では私はこれで華琳様の処(ところ)に戻らせてもらおう」

いや、しかし呂布とは恐るべきものだな。或いは討ち取れるかとも思っていたのだがな――。
苦笑交じりに秋蘭は踵(きびす)を返す。
そしてその目的は果たされている。
確かに恋の身体には一矢たりとも届いていなかったが、見事にその乗馬の前足を打ち抜いていたのだ。
倒れ込む馬体から軽やかに身を躍らせて……。

「弓兵、下がれ!」

守備力なぞあってないような虎の子を下げる。ここで消耗させるわけにもいかん。そして。
ここからが本番だ。やっと恋をその身一つにすることが出来た。そして。マジか。いや、詠ちゃんに話を聞いたことはあったが半信半疑だったんだよなあ。

――まさか、本当に。
二本の足で走る方が速いとかどういうことだよ。

ぎゅん、と速度を上げ、土煙を背に恋が迫ってくる。なるほど。人中の呂布とはこういうことか。などと軽く現実逃避をしながらも前に出る。
猪々子と斗詩が付き従ってくれる。

「アニキ。やっぱアタイが前に出た方がいいんじゃね?」

猪々子の気遣いに首を振る。

「なに、たまには俺もいいとこ見せたいのさ」

どんどんと近づいてくる恋。その表情は相変わらず何を考えているか読めない。
まあ、それでも言葉が通じるだけありがたいとしよう。
だからまあ、まずは声をかける。

「恋!」

ん、とばかりに義理堅く速度を落とし、停止する。
さて、とばかりに俺は恋に声をかけるのであった。
357 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:06:00.61 ID:11bQfaHc0
◆◆◆

さて、何と言ったものかと逡巡している間に恋の方から声をかけてくる。

「……ほしいのは袁紹の首級だけ。二郎を殺す必要は別にない。だからそこをどいて」

いやいやいやいやいや。

「――悪いがここは通行止めだ。大人しく帰ってくれよ」

ふるふると、どこか悲しそうに恋は首を振る。

「月のため。どうしても袁紹の首級がいる。だから、どいて」

「そいつはできねえ相談だな。そもそもだ。それが叶ったとして月が帰ってくるとも限らんだろうに」

流石に仮定の話とは言え麗羽様の首級云々なんて口に出せねえし。それに、月のことは、まあね。そうだよね。しゃあないね。

「それでも、いるの。だから、そこをどいて。袁紹一人で済ませるから」

一生懸命に語る恋に泣きたくなる。なんでだ。なんでこんなにも俺たちはぶつかり合わないといけないんだ。
やってらんないね。本当に。

「聞けないな。麗羽様をやらせるわけにはいかん。こっちは三人。まっさか、卑怯とは言わんよな」

斗詩と猪々子が臨戦態勢に入る。

「……どうでもいい。三人が三万人でも大差、ない」

「は、言ってくれる!恋よ、袁家を、舐めるなぁ――!」

そして三尖刀によるブーストを発動させる。吠えて、やる!

「トランザム!」

四肢に力が漲り時の経過が遅くなる。
漲る力に思いを込めて、叫ぶ。
先手、必勝!

「ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
358 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:06:54.18 ID:11bQfaHc0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!

「対戦」

ほら今ひとつなのでs
よろしくお願いします。
359 :赤ペン [sage saga]:2020/07/04(土) 12:47:01.74 ID:iAYY6nXZ0
乙でしたー
>>355
>>その戦闘には万夫不当。  まあ確かに戦闘中だけど
○その先頭には万夫不当。  一番前を走ってるのは、って意味だよね
>>その見切りこそ陳宮の真骨頂であったかもしれない。  ここで過去形って…お前、死ぬのか?
○その見切りこそが陳宮の真骨頂かもしれない。     間違いと言うほどではないですがこの方が良いと思います
>>流石の公孫賛が狼狽える。呂布と、切り離された配下の軍。 ここで【流石】と評されるほどには優秀なんだよなあ
○流石の公孫賛も狼狽える。呂布と、切り離された配下の軍。 地味だけど(真顔)
>>356
>>明らかに先ほどまで軍を引きていた時と速度が違う。 全速力出したら遅いのが孤立するからなあ
○明らかに先ほどまで軍を率いていた時と速度が違う。 【引き連れてきた時】だとなんか違うよね
>>「見せて貰おうか、飛将軍の実力とやらを!」   え、何?見稽古とか言うチート能力に開眼した?飛将軍の実力を貰うとか
○「見せてもらおうか、飛将軍の実力とやらを!」  【コートを脱いでください】と【コートを脱いで下さい】には実は大きな隔たりがあるのだ
>>流石の秋蘭が感嘆する。この距離で届くのか、と。 総合力は別にして長距離に矢の雨(弾幕)を降らせる一点ではどこよりも上かもしれんね
○流石の秋蘭も感嘆する。この距離で届くのか、と。 夏侯淵個人では可能かもだけどこの人数による制圧射撃は、ね
>>手にした奉天画戟。残像すら見えないそれが 呂奉先が使うから字を間違いやすいのかな
○手にした方天画戟。残像すら見えないそれが 馬への矢もすべて弾くとか人間業じゃねえな
>>限りなく水平に襲い掛かるそれに流石の恋が……ってマジか。  ほぼほぼ水平なら打たれた側からすれば【・】ここまではいかなくても大分見づらいだろうに
○限りなく水平に襲い掛かるそれには流石の恋も……ってマジか。 微修正も混ぜつつ
>>降り注ぐ矢を奉天画戟で弾き返しながら、だ。  両手放してってことはやろうと思えばこいつも騎射出来るんだろうな
○降り注ぐ矢を方天画戟で弾き返しながら、だ。  そういや奉天って中国の都市の名前なんだな…ちょっと昔だけど
>>ん、とばかりに義理堅く速度を落とし、停止する。     【ん、とばかりに】とはいったい
○ん、と顔を向けた恋は義理堅く速度を落とし、停止する。  こんな感じでどうでしょう
>>さて、とばかりに俺は恋に声をかけるのであった。
>>◆◆◆
>>さて、何と言ったものかと逡巡している間に恋の方から声をかけてくる。  呼びかけはしたけど声掛けは恋からだよね
○さて、とばかりに俺は恋に向き合うのであった。   いやまあ最初の【「恋!」】はあるけどあれは【さて、とばかりに】に合わないしね

公孫瓚が輝いてる!めっちゃ輝いてるよ!…違った白馬義従が輝いてるよ!!
冗談はともかく軍の在り方としてはガチで最高峰よね、公孫瓚以外がトップに立ってもほとんどパフォーマンス落ちないだろうし
陳宮が被害を最小限に抑えてなお吶喊が厳しくなるとか状況的なものもあるとはいえ凄すぎる
恋はなあ…まあ仕方ないよね。お互いに譲れないモノのために戦ってるんだから会話は平行線だわ
どうにかする手段はいくつもあったけど事ここに至ってはどうしようも…
まあアイツラならそれでもみんなが笑って暮らせる世界のためにとかなんとか言ってどうにかしようとするんだろうが(どうにかできるとは言わん)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/04(土) 15:35:37.11 ID:jfF7oO/lO
乙っしたー

どっかで聞いたセリフがちらほらww

タイトル案「対峙」
361 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/05(日) 05:12:01.42 ID:N9N52iJv0
>>359
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
ほむ。今回は多かったな。頑張るぞいっと。

>公孫瓚が輝いてる!めっちゃ輝いてるよ!…違った白馬義従が輝いてるよ!!
強化しといてよかった白馬義従!です。

>冗談はともかく軍の在り方としてはガチで最高峰よね、
作中少ないネームド軍団ですからね……
虎豹騎実装してないということは、作中最強軍団かもしれません

>恋はなあ…まあ仕方ないよね。お互いに譲れないモノのために戦ってるんだから会話は平行線だわ
おっしゃるとおりここはしゃあないところです。

>どうにかする手段はいくつもあったけど事ここに至ってはどうしようも…
董家ルートでは初手最適解ができたはずなんですよね

>まあアイツラなら
ほんと、魏√での彼らの不気味さといったらなかったw

>>360
どもです。

>どっかで聞いたセリフがちらほらw
ナンノコトカナー

>タイトル案「対峙」
ほむ。対決よりよかですね。ありがとうございますー!
362 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/07/06(月) 21:08:43.21 ID:iXKxy26L0
乙です。

嗚呼……とうとうか。原始の肉体武闘の血生臭き戦が。
で、ちゃっかり現代のアップトレを持ち込んでじゃないの。二郎さんw

チェストーって薩摩示現流じゃないの。二郎さん前世は鹿児島出身?

今回のクレームwwwwww
癒し愛人幼馴染の陳蘭ちゃんを前線に出すんじゃないのw
しかも活躍までさせてさw
これも陳蘭ちゃんの愛のカタチ?

個人的には真桜さんの魂の叫びというか慚愧というかが一番印象に残りました。


でさ、どっかの親方が陳宮ちゃん拉致りたいそうなんだけど……どうでしょう?
363 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 21:33:10.65 ID:ST1CGF8G0
>>362
どもです。父上乙ですた。あっちにもちょっとしたら行きますのでお待ちくだしあ。

>嗚呼……とうとうか。原始の肉体武闘の血生臭き戦が
やはり肉体言語ありきですよね。

>で、ちゃっかり現代のアップトレを持ち込んでじゃないの。二郎さんw
ベストを尽くすということで一つ。少しでも勝率を上げないといけませんのでね。アスリートによればアップに30分以上かけるらしいですね。

>チェストーって薩摩示現流じゃないの。二郎さん前世は鹿児島出身?
中の人が示現流の道場で立木打ちを体験したくらいの関係ですw
猿叫については作品により表現が様々ですが、ここはやはり旧作をリスペクトな感じです

>癒し愛人幼馴染の陳蘭ちゃんを前線に出すんじゃないのwしかも活躍までさせてさw
紀家は武家にて、彼女の掌握している部隊も同様。ガチ戦力で虎の子なのです。
呂布にぶつけようとするくらいには稟ちゃんさんからも戦力として計算されておりますん
ということで一つ。

>個人的には真桜さんの魂の叫びというか慚愧というかが一番印象に残りました。
ありがとうございますー!
彼女は本来楽しく技術開発してキャッキャウフフしてたい人生だったのですが、惚れた男が悪かった
研究開発以外のことも、考えないといけないという立場になってしまっております
それが、なんだかなあー、って感じと、惚れた男のためになるので嬉しかったりする真桜です

>でさ、どっかの親方が陳宮ちゃん拉致りたいそうなんだけど……どうでしょう?
短期留学、かつ彼女の心根(呂布原理主義)は変わらないなら、かなあ
364 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 22:15:15.42 ID:ST1CGF8G0
「ちぇすとおおおおおおおおおおおお!」

全力での俺の一撃。脳天目がけて三尖刀を振り下ろす。文字通りの全力全開の一撃。その一撃を恋は難なく躱す。身をよじるだけで。
うん、知ってた。

「ちぇいぃ!」

地面に三尖刀を叩きつけた反動を利用してもう一撃食らわす。横薙ぎの一撃。

「秘剣、燕返し!」

流石に三撃を同時展開なんていう人間離れした剣技なんて俺にはない。これが精いっぱい。
無理やりな軌道での連撃は、だが恋には届かない。バックステップ一つ。なんつー超反応だよ!
全力の一撃であったので俺の身体は今度こそ完全に流れてしまった。

「……覚悟」

ゆらり、と身を揺るがして恋が奉天画戟を振り上げる。このままでは間違いなく脳天からばっさりであろう。
が。

「斬山刀、斬山斬!」

恋の死角に回り込んでいた猪々子がその大刀を渾身の力で振り下ろす。
一か八かの大振りの一撃。

「――!」

サイドステップ一つ。恋の身には届かず、斬山刀は大地を抉る。
豪快に土煙が巻き起こり、視界が妨げられる。そしてそれを煙幕代わりに離脱しようとする猪々子を恋は逃がさず追撃。流石、速い!

「はぁっ!」

だが、土煙は猪々子の離脱用じゃあない。奉天画戟を振りかぶる恋に迫る斗詩をこそ隠すためなのだ。
裂帛の気合いを響かせて双剣を振るう。

「やったか!」

確かに斗詩の双剣が恋の身体を捉えた……と見えたのだが、間一髪、紙一重で躱す。

「しぃっ!」

だが、斗詩の攻撃は連撃、そして相手を追い込む運足の妙が持ち味。更に舞うが如く追撃を加える。躱す恋の動きは斗詩とは対照的に野生の獣を思わせる。

「くっ!」

舞いながら、双剣の軌道を捻じ曲げ、恋の体幹部分。回避しづらい部位に斬撃を次々と繰り出すのだが、少しずつ恋が対応し始める。
流石の斗詩の連撃が勢い弱まってくる。あの連撃は無酸素運動を続けるものだからそれほど長く続けることはできない。
だが、それで十分。斗詩は確実に獲物を追い込んでいる。
既に恋の死角を押さえた!五臓六腑に気合いを込めて、迸る裂帛の咆哮。

「ちぇすとおおおおおおおおおおおおおお!」

俺が全力の一撃を振るう。完全に入ったと思ったのだが。

「これが当たらんのか!」

二の太刀も躱されてしまった。ぐぬう。

「どっせーい!」

猪々子によって再び抉られる大地。そして巻き起こる土煙。その中から斗詩が接近して連撃を加える。
次々と死角に回り込み攻撃を加える俺たちの動きはまさに三位一体。そのコンビネーションは恋を少しずつ、少しずつ追い詰めていく。無論、一度でもしくじれば即死につながるという危険極まりない綱渡りなのではあるが。

「うし!」

思わず歓声を漏らしてしまう。
紅い筋が一筋恋の身体に刻まれている。糸のように細いそれは確かに一撃が届いたという証。斗詩の双剣が届いたのだ。

「いける!」

恋に向けて幾度三尖刀を振るったか分からない。だが、今度は届く。その確信がある。
ここぞとばかりに斗詩が死力を尽くして恋を追い詰める。もう一筋、今度は恋の脇腹に紅い筋が。

「殺った!」
365 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 22:15:42.06 ID:ST1CGF8G0
いかに恋の身体能力が化け物じみていても流石に三尖刀の全力の一撃を喰らえばひとたまりもない。はずだ。あの飛将軍に届く。俺の一撃が届く。そう確信してにやり、と口が歪むのすら認識しながら三尖刀を振り下ろす。

「な――!」

その腕から急速に力が抜けていく。いや、腕だけではない。全身を脱力感が襲う。くそ!時間切れか!
三尖刀がもたらしてくれていたブーストの効果が切れ、代わってその副作用が顕現してしまう。

「畜生!」

それでもなんとか、なんとかこの一撃だけはと振り下ろそうとするのだが。
恋は生まれた隙を見逃してはくれない。瞬時に間合いを詰め、蹴りを放ってくる。

「が、は!」

鈍い音が全身に響き、盛大に吹っ飛ばされる。

「二郎さん!」
「アニキ!」
斗詩と猪々子が悲鳴を上げ、すぐさま俺の前に立って恋に向かい合う。
二人とも乱れそうな呼吸を必死で整えようとし、それぞれの武器を構える。だが、一度切れた緊張の糸はもはやつながることは無い。

「……結構、強かった。でも、終わり」

奉天画戟を手にした恋がゆっくりと近づいてくる。
風が仕掛けた洛陽での物流の混乱による飢餓。長弓部隊による面制圧。秋蘭による乗騎の射殺。
それもこれも全部恋の弱体化、疲労を誘うそのためだけに為されていた。あんだけ何回も奉天画戟を振るい、その足で全力疾走を続けて間違いなく消耗しているはず。だのにそれでも、三人がかりでも届かなかった。
だが。

「まだだ、まだ終わらんよ!」

切り札は最後に切るもの。主役は最後に出張るもの。俺たち三人が挑んだのも仕掛けに過ぎない。恋に更なる消耗を強いるための一手。いや、危険すぎると稟ちゃんさんには呆れられたけどね。
いやだって兵卒万単位で投入とかしたらそりゃ消耗を強いれるかもしらんけど乱戦で恋を捕捉するなんて不可能じゃん。だからこれしかなかった、と個人的には思っている。
そして、腹部の痛みに顔をしかめながらも、叫ぶ。いや、これアバラ何本かやられてるんじゃないかな。

「星!出ませい!」

痛みをこらえつつ、今の俺に出せる精一杯声を張り上げる。

「全く、無茶をなさる。出番があるのは喜ばしいのですが、正直肝を冷やしましたぞ」

真打、登場である。

手にした愛槍龍牙を一つしごき、高らかに名乗りを上げる。

「常山の昇り竜にて紀家一の将、趙子龍。推して参る!
 一手、馳走になる!」
366 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 22:16:08.34 ID:ST1CGF8G0
◆◆◆

ようやっとの出番である。趙雲は軽やかに舞台に躍り出る。
不敵で無敵。そう嘯(うそぶ)く常と変らずに、笑みを浮かべ愛槍龍牙をしごきあげる。
だが内心穏やかではいられない。
何となれば主と定める青年、そしてその傍らにある二人は袁家の宿将たる人物。なぜ自分がその場にいないかと内心臍を噛む思いなのだ。
いや、理解はしているのだ。してしまっている。
過日見た飛将軍の武威。それは趙雲をして手の届かない所に感じられるほどに遠いものであった。最強を見せたかったという主の言を受けて尚、その隔絶した差に絶望さえ覚えたほどだ。だが。
お前ならば至ることが出来ると、閨で囁かれた時に趙雲は決意した。そして理解した。
自分の主は本気であの飛将軍、人中の呂布に克つことを求めているのだと。自分ならばできると本気で思っているのだと。
それを理解して後、趙雲は愛してやまなかった酒すら断ったのである。

多忙な紀霊や顔良、文醜とは中々手合せできなかったが、典韋や楽進、陳蘭と暇さえあれば武を競った。
仮想敵はあくまで呂布。
ついには眠っているときにさえ呂布と打ち合うほどに武を追求する。
だが、それでも。それでも呂布には及ばない。あの日あの時見た呂布に及ばないのだ。
だから、だから主はこのように策を重ねたのだと趙雲は理解している。無論、不本意ではある。このように策を重ね、消耗を強いて得た勝利に意味はあるのか、と。

「勝てない戦はしない。だから袁家は最強なのです。
 星、いいですか。そもそも貴方の武人としての誇りというものに私は何の価値も認めていません。
尊重くらいはしますがね。勝てないまでも負けないための策すら忌避しようというそれは百害あって一利なし。傍迷惑この上ないですね」

郭嘉は忌憚なく語ったものだ。自分に伝わると信じてだろう。そして自分がどのような思考回路で策を積み重ねるかを示して。
だが、と言葉を重ねる。そのような武人の誇りと言う奴すら自分は考慮して策を重ねていると。

「まあ、正々堂々と遣りあって袁家の武家三将と星、貴女が揃って討死しても構いません。それでも袁家は勝ちます。そのように策を重ねています。風と私がそうしているのです。ですから、貴女はお好きにしなさい。ええ、ご随意に」

甘えるな。

親友からのその言外の叱咤を趙雲は正しく受け止める。そして思い知るのだ。寄せられる期待の重さを。
紀霊自ら、他の二将まで動員して呂布の消耗を図るなぞ。いや、紀霊は笑っていたが。

「なに、恋の消耗を図るのはいい。だが、俺と斗詩と猪々子でかかるんだ。倒してしまっても構わんのだろう?」

冗談めかして笑ったあの声。
希代の演出家が拵えてくれた舞台なのだ。なにせ、黄巾の乱を率いたという三姉妹の舞台だって紀霊が助言を与えてからその飛躍が始まったと程立は漏らしていた。
だったら。
だったら、期待に応えねばならない。そして今の自分は程立、郭嘉の策を重ねて。
趙雲の目から見ても紀霊たち三人の連携は完璧であった。なのに呂布を討ち取るに至らない。だからこそ無様は晒せない。
最高の舞台をあつらえてくれたのだ。ならばそこにおいて蝶のように舞おう。そして蜂のように刺そう。

「常山の昇り竜にて紀家一の将、趙子龍。推して参る!」

そして、挑む。最強に。口元には優雅で、雄々しい笑みを。そして華麗な勝利こそが袁家にはきっと相応しい。

◆◆◆

先手を取ったのは趙雲である。猛る呂布が動くのを制するが如く槍を突き出す。舌打ちと共に呂布はそれを紙一重で躱す。

「はいはいはいはいー!」

連撃。けしてそれは神速ではないし洗練もされていない。
だがそれを呂布は躱すのに精一杯で反撃もできない。いや、それを趙雲が許さないのだ。

闘いは傍目には一方的にすら映るほどに趙雲が圧倒している、ように見える。

それまでの、紀霊との戦いとは打って変わって防戦一方、それも心底嫌そうな表情の呂布が呟く。

「お前、気持ち悪い」

にやり、と趙雲は笑う。
ああ、そうであろう、そうであろうとばかりに。
呂布の武。それは天性のもの。野生の獣が獲物を襲うときに無駄な所作がないように、呂布の動きには全く無駄がない。
ただ、振るう一撃が最適にして最強。生まれ持った強靭な肉体と獣の本能こそが呂布を最強たらしめているのである。
それに対し、呂布を襲う趙雲の一撃はそこまで鋭くもなく、重くもない。だというのに防戦一方。じりじりと下がり、いらいらとした様子の呂布を翻弄するが如くまた槍を振るう。
367 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 22:16:34.12 ID:ST1CGF8G0
◆◆◆

「なあ、アニキ。なんで呂布はやられっぱなしなんだ?
取り立てて速くもないし重くもなさそうな攻撃なのにさー」

怪訝そうに猪々子が俺に問いかけてくる。いや、答えてやりたいんだが今は呼吸をするのが精一杯。いやこれ何本肋骨持ってかれたのやら。蹴り一つでご覧の有様だよ!
代わって応えてくれたのは俺が背を預けている斗詩だ。声と共に柔らかいものが震える感覚が多少なりとも痛みを和らげてくれる。気がする。いえい。

「文ちゃん、駄目だよ。二郎さんは負傷されてるんだから」

「あ、そっかごめんね、アニキ」

ひらひらと手の平を振って気にするなと伝える。

「あれはね、恐らくだけど。後の先。
 星さんは呂布が槍を振るうその予備動作を感じ取って先んじているんだと思う。
 私だって理論は知ってたけど、まさか完成させていたなんて……」

後より出(い)でて先に穿つ。まさにカウンターの極みである。そりゃあさぞかし恋はやりにくかろう。自分が攻撃しようと思ったら敵の攻撃が迫っているのだから。
いや、そっから躱したり打ち返したりする恋の化け物っぷりもすごいんだが。
ただまあ、基本的に本能で動いている恋に対しては鬼札だろう。つか、人の技が恋に対して有効なのだと思うと胸に熱いものがこみ上げるよ。

「なるほどなー。以前アニキが言ってた奴かあ。でもまあ、押してはいるけど星も見た目以上に消耗してそうだなあ」

猪々子の言う通りである。いかに後の先で主導権を握っているとはいえあの恋の相手を一人でこなしているのだ。心身ともに消耗は激しいはずだ。しかも決め手に欠けているときたもんだ。いや、そんな中きっちりと猛攻を仕掛ける星はすごいわ。

「うん、そうだね。このままじゃ、ちょっと厳しいかも……」

悔しそうに斗詩が呟く。だが、現状俺らにできるのは見守ることくらいだ。

さて、どうしたものかと思っていると、けたたましい銅鑼の音が響く。どうやらここではないどこかで戦局が動いたようである。
368 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/06(月) 22:17:36.42 ID:ST1CGF8G0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!

今回の草案は「VS呂布」でいs

よさげでかっこいいやつたのみまするよう
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/07(火) 15:39:18.82 ID:99brJZgQo
乙です

この、ここからの戦闘シーンが本当にカッコよくてずっと好きなのです
いやぁほんと、弱者たる人の技術が生まれもっての強者たる呂布に届くというのは熱くなりますよね


ということで題案ですが
『人技にて天才に挑む』
『星は昇りて、天に届くか』
みたいなかんじでー
370 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/08(水) 05:59:03.46 ID:cl8kAEE80
>>369
どもです。

>この、ここからの戦闘シーンが本当にカッコよくてずっと好きなのです
ありがとうございますー!気合い入れて作ったシーンなので嬉しい限りでございます

>いやぁほんと、弱者たる人の技術が生まれもっての強者たる呂布に届くというのは熱くなりますよね
原作での星ちゃんは、どこか諦めている風すら感じさせるムーブですからねえ
このまま折れずに進んで欲しいところです

>『人技にて天才に挑む』
>『星は昇りて、天に届くか』
ほむ。詩的でよきですね
ストックさせていただきます!
371 :赤ペン [sage saga]:2020/07/09(木) 15:04:46.73 ID:F0uvBfph0
乙でしたー。私はとても悲しい(ポロロン)
>>364
>>地面に三尖刀を叩きつけた反動を利用してもう一撃食らわす。横薙ぎの一撃。  脳天めがけて振り下ろした↓反動だと横薙ぎ→は難しいかな
○地面に三尖刀を叩きつけた反動を利用してもう一撃食らわす。切り上げの一撃。 ↗か↖だと思うので…反動を利用しないなら人外の膂力で可能かもですが(全力全開からの急制動)
>>ゆらり、と身を揺るがして恋が奉天画戟を振り上げる。 震えたの?
○ゆらり、と身を翻して恋が方天画戟を振り上げる。   それとも恋はバックステップしてたから【と距離を詰めて】とか【と歩を進めて】かな?
>>奉天画戟を振りかぶる恋に迫る斗詩をこそ隠すためなのだ。 それとも原作で奉天画戟って言ってる場面あったっけ?だとしたらごめんなさい
○方天画戟を振りかぶる恋に迫る斗詩をこそ隠すためなのだ。 一応モバゲの方の恋姫だと方天画戟なんだけど
>>流石の斗詩の連撃が勢い弱まってくる。  【勢い弱まる】って文章としては勢い良いね
○流石に斗詩の連撃も勢いが弱まってくる。 この場合【流石の斗詩】と言うまでもなく【恋】は格上なので(呂布の前では)と前に付けるつもりでこれでどうでしょう
>>紅い筋が一筋恋の身体に刻まれている。 【目から滴が一滴】みたいな微妙な違和感が
○紅い線が一筋恋の身体に刻まれている。 もしくは【赤い筋が一本】とかどうでしょう
>>365
>>奉天画戟を手にした恋がゆっくりと近づいてくる。 確かこれについては随分前にも言ったはずなんだけど
○方天画戟を手にした恋がゆっくりと近づいてくる。 ましてや前回>>359も…
>>あんだけ何回も奉天画戟を振るい、 方天画戟がゲシュタルト崩壊しそう
○あんだけ何回も方天画戟を振るい、 この悲しみは月詠の幸せな未来でないときっと晴れないなあ(ゲス顔)
>>痛みをこらえつつ、今の俺に出せる精一杯声を張り上げる。  喋り言葉としてはこれでもいいっちゃいいんですが
○痛みをこらえつつ、今の俺に出せる精一杯の声を張り上げる。 の方が良いと思います
>>366
>>だがそれを呂布は躱すのに精一杯で反撃もできない。 間違いではないですが文脈がちょっとゴチャットしてるような違和感が
○だが呂布はそれを躱すのに精一杯で反撃もできない。 もしくは【だがそれを躱すのに精一杯で呂布は反撃もできない。】の方が良いと思います
>>ただ、振るう一撃が最適にして最強。 前の文章が例えば【呂布の戦いには武の理が無い】みたいな否定のものならこれでいいんですが(ただ(し)、振るう〜】みたいな
○ただ振るう一撃が最適にして最強。  そうではないので一息で言った方が良いと思います
>>367
>>代わって応えてくれたのは俺が背を預けている斗詩だ。 《出来る?》と言う問いに《出来る!》と言うのは答えですが
○代わって答えてくれたのは俺が背を預けている斗詩だ。 もしくは内心と言うか痛みに苦しんでる状況を考えれば
○俺が背を預けている斗詩が目くばせに応えてくれた。  阿吽の呼吸的な感じでこれもありか?

二郎は随分とフラグを建ててますなwお前そのセリフは一矢報いるけど途中退場のセリフやろがい!
多重次元屈折現象やらフラガラックやら運命好きね
人事を尽くして天才に克つ。か…二郎ちゃんに頼まれてつぶれ役を引き受けた二人とかあらゆるものを策のうちに練りこんで憎まれ役まで買って出た軍師とか見どころ満載やね
372 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/07/09(木) 21:28:25.18 ID:adKo1iIT0
乙です。一ノ瀬さんと二郎さんと文ちゃん顔ちゃんに。

感想は書けないです。ひたすら引き込まれて一気読みしましたので。強いて言えば、二郎さん、文ちゃん、顔ちゃん、趙雲さん、呂布さん。
皆さんお疲れ様です、かな?
でも、呂布対趙雲はまだ続いているからこの対決も期待かな。
つか、呂布さん。これ終わったら、おじさんがお腹一杯中華料理御馳走してあげるから、死ぬんじゃないよ。いいね。

二郎さん、骨折なめてるとこの先で不具合出るからちゃんと固定して安静にしなさいよ。あとリハビリもしっかり。
武家だろうがブースト持ちだろうが基本は人間だからね。つか顔ちゃん、そのまま押さえときなさいよ。
無茶しやがって。がまるっと当てはまる場面ですな。
373 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:48:50.99 ID:cRY7Feyw0
>>371
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
いつもより多いな(当社比)。頑張るぞいっと。

>私はとても悲しい(ポロロン)
出たなトリスタン!うっせえお前を犯人です(暗黒翡翠)。

>二郎は随分とフラグを建ててますなw
お守りみたいなもんですねw ないとガチダイスロールが発生しますのでw

>お前そのセリフは一矢報いるけど途中退場のセリフやろがい!
パインサラダがないからセーフ。

>人事を尽くして天才に克つ。か…二郎ちゃんに頼まれてつぶれ役を引き受けた二人とかあらゆるものを策のうちに練りこんで憎まれ役まで買って出た軍師とか見どころ満載やね
三国志を題材にしたらその瞬間呂布と向かい合わないといけないですものねw
まあ、当初プロットでは稟ちゃんさんも星ちゃんも陣営にいないはずだったのです。
どうやって勝つんだろう(ノープラン)
あ、普通にデッドエンドですねw

>>372
俯瞰者さん、どもです。

>感想は書けないです。ひたすら引き込まれて一気読みしましたので。
やったぜ。何よりの感想です。嬉しいす。

>強いて言えば、二郎さん、文ちゃん、顔ちゃん、趙雲さん、呂布さん。皆さんお疲れ様です、かな?
今回に限っては、二郎ちゃんが一番身体張ったかもしれませんね。体当たりで恋ちゃんに挑んでくれましたw

>二郎さん、骨折なめてるとこの先で不具合出るからちゃんと固定して安静にしなさいよ。あとリハビリもしっかり。
あれ、痛いんですよね……っ。骨接ぐときは呻いてしまいましたわw

>武家だろうがブースト持ちだろうが基本は人間だからね。つか顔ちゃん、そのまま押さえときなさいよ。
声援ありがとうございますー!

無茶もせなあかんタイミングと言う奴ですね。三尖刀については、ほぼ全て固定イベントです。
それで勝てるかはともかくないと普通に死ぬのですw

頑張るぞいっと。

つか、お忙しいだろうさなかに、ありがとうございますー!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いでございます

みんながんばろう
374 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:49:32.82 ID:cRY7Feyw0
「なかなか、やるわね……」

くすり、と口に笑みを浮かべて曹操は薄く笑う。
戦場が供する喧騒を楽曲が如く、その音色を掌(たなごころ)の上で弄ぶ曹操。その讃辞は無論目前の敵兵に向けてのものではない。曹家一万、孫家五千。対するは五万という圧倒的な兵力を前に曹操は既に勝ちを確信している。
例えばこれを賈駆や董卓が率いていたならば話は別であるが、曹操自ら指揮をする曹家軍にとって数なぞ全く意味をなさない。少数を以って大軍を翻弄、撃破するその用兵の冴え。
それはこの瞬間は余技に過ぎない。

「楽しませてくれるものね……」

その視線の先にあるのは孫家軍である。
曹家軍一万と孫家軍五千。対する敵軍は五万。いささか兵数の差が大きすぎる。故に義勇軍を後詰、そして寡兵である孫家軍への編入を提案したのだが。

「お断りしますぅ」

陸遜に拒否されてしまった。曰く。義勇軍、我知らず。故に不要、と。

まあ、実にもっともな話ではあるのだが。
あるのだが。

「兵は孫家に押し付けて関羽だけ引っ張って来ようと思ったのだけれどもね」

そして関羽は客将として腕を振るうのだ。そして曹家軍の精兵を率いる喜びを知る。そしてこの自分の用兵の冴え。その命に従い、その指揮に心服するのだ。そのはずだったのだ。
それを。

「よくも台無しにしてくれたわね……」

だからこれは意趣返し。
曹操が相対するのは孫家軍。勿論直接矛を交える愚は犯さない。だから。
数十、数百の単位で孫家軍に敵軍を誘導しているだけである。陣の綻びそうな所に、陣形を維持する急所に、或いは伝令の通り道に兵を置く。
無論それは弱兵によるものではあるが、曹操が振るうそれは苛烈にして執拗。兵の逐次投入と波状攻撃の何が違うかと言うと、要は費やす兵数である。そしてそれは半ば無尽蔵に目の前にあるのだ。

「まだまだいくわよ?どこまで凌げるか、楽しみね」

不敵に笑い、曹操は戦場を支配する。そう、曹操によって戦場は支配されつつあった。

◆◆◆
375 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:49:58.84 ID:cRY7Feyw0
「んー。中々にしつこいですねえ」

陸遜は小首を傾げて呟く。
いや、実際に執拗に妨害は続いている。正面の敵兵のみでなく、側面からの圧力にも対応せねばならない。それを孫家軍の首脳は理解しつつある。
……僚軍の不穏な動きに陸遜は即座に対応していた。いや、予測すらしていた。なんとなれば、あの紀霊が徹頭徹尾警戒する英傑。その為人(ひととなり)は彼の洞察――陸遜は紀霊の人物評について高く評価している――を閨においても根掘り葉掘り聞きだしている。
そして曹操から事前にあった提案。義勇軍の参戦について突っぱねた。一見穏やかそうな曹操の顔(かんばせ)に刹那浮かんだ凶相を見逃す陸遜ではない。なるほど。確かに理性的でありながらも激情家のようだと納得したものだ。
そしてその有能さについては語るに及ばず。前面の、ひたすら押し寄せる敵よりもむしろ側面より誘導されてくる敵兵の方が何倍も厄介である。

「でもでもー、無意味ですぅ」

陸遜は嬉々としながら矢継ぎ早に幾度目かの指示を飛ばす。臨機応変こそ孫家の本領。不安定な水上。風向き一つで変わる戦況。それに比べればなんとまあ読み易いことかと。

「穏、大丈夫?」

主の言葉に深く頷く。

「ええ、突如吹き荒れる東南の風と比べればどうということはありません。都合のいいことに、あれはこちらの弱点を的確に衝いてきます。

――故に備えは万全。
 ご安心くださいな」

その言葉に頷きつつも孫権は眼前の戦況、そしてそれを可視化した盤から目を離さない。自分の用兵の才は甘寧に、軍略の才は陸遜に遠く及ばずとも。せめて現状の把握くらいはせねばならぬとばかりに目を凝らす。
その様に満足げに視線を一つ。そして陸遜は再び曹操と向き合う。そしてくすり、と笑う。兵の数は少なくとも孫家軍は精鋭。江南の地を、流血でもって治めてきたのだぞとばかりにお返しに弓の斉射をくれてやる。なに、一度ならば誤射で済まされる。済まさせる。
そしてこちらには切り札がある。こちらが挑発に乗らなければそう看破するかと思ったのだが。
いや、それをすら見越しているのだろうか。

「あらあら〜。まだやりますか。んー。孫家を甘く見たことを後悔させてあげちゃいましょうかしらねえ〜。
あまりこちらにばかり構っていたら、お手柄は孫家総取りしちゃいますけども」

くすくす、と陸遜は朗らかに笑う。その笑みに艶の色が混じっていく。嗚呼、この戦場を今や陸遜は認識している。把握している。なんという悦楽か。
欲情し、恍惚とした貌の彼女はいよいよその思考を研ぎ澄ましていくのだった。

◆◆◆
376 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:50:25.65 ID:cRY7Feyw0

「みんな、がんばってー!」

応!とばかりに野太い声が応える。
激励する声の主は孫尚香。寡兵を以って大軍に挑む孫家軍の消耗は必然。その、歴戦の精鋭をもってしてもこれほど絶望的に兵数が開いた戦いを経験したことはない。
だからこそ孫尚香は最前線にその身を置いている。兵を率いることは甘寧に任せている。だから、単騎での鼓舞と遊撃がその使命。
孫家の愛くるしい三の姫の鼓舞に孫家軍の兵士はその身に力が沸き立つのを実感する。

「孫家万載!孫尚香様万歳!」

轟く雄叫び。孫家軍はその精強さを驚くほどに継続し、敵の波状攻撃を弾き返す。

「全く、孫家の血筋というのは……」

甘寧は最前線で剣を振るいながらそう思う。あの人望は。最前線で兵卒の士気をあそこまで操るのはまるで、と。かつて仕えた孫堅、そして孫策を連想させると。

一方孫尚香は治まらない。いや、このままではいけないという焦燥感すらある。だから更に前線に向かう。孫家の守護獣たる白虎に命じて前線に向かう。けして敵中に向かうなと姉から言われたことなぞ無かったかの如く。

「シャオの邪魔をすると、ひどいんだから!」

追走する周泰は嘆息する。或いは感嘆する。
そしてある時から孫尚香の動きの質が変わった。縦横無尽に駆け廻り、自陣を鼓舞する。そして敵陣を崩すのは変わらないのだが。

戦場を駆け、血に染まるほどに孫尚香は内より出でる本能に身を任せ、ついには敵陣に単騎で突撃する。
慌てて付近の兵が陣形が崩れるのも構わず追走する。ここで彼女を喪う訳にはいかないとばかりに。

「ええい!流石に孫家の息女は、やってくれる!」

甘寧は一声吠えて苛立ちを解放する。そして淡々と戦線を復旧させる。なに、孫家の血筋によって前線がかき回されるのは慣れっこだ。そして腹立たしいことに彼女らの一手はこの上なく有効なのだ。

「あんなもの、真似できるはずもない……」

そんな甘寧の嘆息なぞどこ吹く風か。孫尚香は敵中枢に単騎で切り込む。そして返り討ちにしてくれんとばかりに取り囲む敵兵は端的に言って不幸だったろう。

「GAAAAAAAAAAAAAA!」

孫家の守護獣たる白虎が咆哮する。それは圧倒的な存在感。生物としての階梯の差。捕食者と被捕食者の差。圧倒的なその立場の違う存在からの咆哮に周囲の兵は白目を剥き、失禁し失神する。その咆哮はいともたやすくその戦意を刈り取り、恐慌を与える。

「やっちゃえー!」

再度、咆哮。

砕ける戦意、士気は地に墜ちる。
そこに押し寄せるのは孫家の精兵。
かくして虎牢関守備兵の主力は大崩れすることになったのである。
377 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:52:03.79 ID:cRY7Feyw0
◆◆◆

「兵が、引いていく……」

銅鑼の音と共に董家軍が退却を始めるのを見て北郷一刀は誰にともなく、呟く。

「張、呂の旗は無事、か……。霞も恋も、生き残ってくれたか……」

その声に劉備がにこやかに笑う。

「うん、みんな無事でよかった!よかったね!ご主人様!」

「ですがこれより追撃戦があります……。翠さんも白蓮さんも機動力では大陸屈指でしょう。虎牢関に入るまでの追撃が心配です……」

「あわわ……大丈夫だよ朱里ちゃん。
白蓮さんは恋さんを深追いしないと思う……。
 殿に決死の恋さんがいたらそれだけで公孫の軍が瓦解するくらいの被害があると思うの……。
それより心配なのは霞さん……。きっと翠さんは、馬家軍は霞さんを討ち取るまで追撃をやめないと思う。
でも、神速と異名を取る霞さんなら、きっと逃げ切れる、と思う……」

頼れる軍師二人の言に頷きながらも胸を襲う焦燥に北郷一刀は今にも駆け出したくなる。そんな様子を見かねたか関羽が声をかける。

「よろしかったのですか?今の虎牢関ならばもぬけの空。我らのみでも隠密裏に落とすことは可能だったはず」

そしてその手柄と引き換えに董卓一派の助命を、という案を摂らなかったのは北郷一刀だ。

「ああ、朱里も雛里も虎牢関を落とすまでは容易いと読んでいたけどな。その後がどうにも難しいんだろ?」

「は、はい!虎牢関に迫った時に翻る劉の牙門旗。それはとても目立ちますし、分かり易いお手柄ではあります。
でも、そうなれば帰るところのない董家軍は殲滅されてしまいます。それに、虎牢関に籠った状況で紀霊さんと交渉しようにも伝手は白蓮さんくらいしかありません。
 いえ、白蓮さんならば仲立ちをしてくれるとは思うのですが、虎牢関を盾にしての交渉というのはいかにも悪手です」

「朱里ちゃんの言う通りです。そして紀霊さんは私たちにいい感情を持っていません。交渉は難航するでしょう。
 そして最悪、反董卓連合が私たちの籠る虎牢関を力づくで落としにかかる可能性だってあります。そうなれば結果は言うまでもありません」

苦渋の表情で暗鬱たる未来を語る軍師二人に関羽は黙らざるをえない。
だが、それでは誰も救えないのではないかと目で訴えかける。その視線を真正面から受け止めて北郷一刀は力強く頷く。

「大丈夫だ。なんとかなるさ。虎牢関に籠っても交渉材料には弱い。だったら、もっと凄い交渉材料を、武勲を手にしたらいい」

「ですが、一体、どうやって……」

関羽の疑問に北郷一刀は重々しく口を開く。

「なんとかなると、思う」

そして語る。伏せていた天の国について。自分がいかなる存在かということを。

「俺が桃香と一緒にいるっていうのは、きっと意味があると思うんだ。
 だから、皆の力をこれからも貸してほしい」

皆が笑って暮らせる世の為に、と劉家軍首脳はその団結を新たにするのであった。
378 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/09(木) 21:53:57.04 ID:cRY7Feyw0
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案は「趨勢」

はい、よさげなのを求めております

「董卓軍、袁本初への強襲を断念して兵を退き、天の御遣い、天の国を語り救済を改めて誓う。」

講談ならこれなんだろうなあ(他力本願寺)
379 :赤ペン [sage saga]:2020/07/11(土) 18:00:24.09 ID:BBVBboHJ0
乙でしたー…一応できれば奉天牙戟について回答願いたい…悲しいなあ
>>374
>>まあ、実にもっともな話ではあるのだが。 好みの話ですが大切な事だから2回言ったなら同じ行にした方が良いかと
あるのだが。
○まあ、実にもっともな話ではあるのだ。  もしくは一回目は否定を入れないか
あるのだが。
○まあ、実にもっともな話ではあるのだが。あるのだが。 まあ間違いと言うほどではないですが
>>376
>>甘寧は最前線で剣を振るいながらそう思う。あの人望は。最前線で兵卒の士気をあそこまで操るのはまるで、と。かつて仕えた孫堅、そして孫策を連想させると。 【そう思う】だと前の文にかかるので
○甘寧は最前線で剣を振るいながらそう呟く。あの人望は。最前線で兵卒の士気をあそこまで操るのはまるで、と。かつて仕えた孫堅、そして孫策を連想させると。 もしくは【嘆息する】とかするか
○甘寧は最前線で剣を振るいながら思う。あの人望は。最前線で兵卒の士気をあそこまで操るのはまるで、と。かつて仕えた孫堅、そして孫策を連想させると。  後の文にかけるならこうですね

ちょっと風呂入ってきます…そのまま飯かな?
380 :赤ペン [sage saga]:2020/07/11(土) 22:16:28.43 ID:BBVBboHJ0
さて続きをば…ああそうだ前スレの685でも奉先については触れてたんですよ(にっこり
>>376
>>一方孫尚香は治まらない。 【気がおさまらない】という意味なら
〇一方孫尚香は収まらない。 【収拾がつかない】となるのでこれですね
>>慌てて付近の兵が陣形が崩れるのも構わず追走する。ここで彼女を喪う訳にはいかないとばかりに。  そりゃそうだよな(納得)だけどそれって孫家軍が「やべえよやべえよ」ってなってるから状況としては尚香ミスってるよね
〇慌てて付近の兵が陣形が崩れるのも構わず追走する。彼女の進む先にこそ勝機があるとばかりに。   寡兵という状況でも引っ張られて勝利を確信できる、みたいな統率力としてはこうかな?
>>「GAAAAAAAAAAAAAA!」  ドラゴンとかならいいんだけど東洋の白虎でこれは…端的に言って好みでない(笑)
〇「牙呀荒昂鳴啼吼!」   使ってる漢字は適当ですが実際に使う場合は3,4つ【が】と【あ】を2つくらいがおすすめかな?【呀荒嗚呼嗚呼】とか【呀嗚嗚呼呼】とかって感じで
>>圧倒的なその立場の違う存在からの咆哮に ちょっと違和感が
〇圧倒的に立場の違うその存在からの咆哮に もしくは【立場の違う圧倒的なその存在からの咆哮に】の方が良いと思います
>>377
>>董卓一派の助命を、という案を摂らなかったのは北郷一刀だ。 【採決】と考えるか【執行】と考えるか…
〇董卓一派の助命を、という案を採らなかったのは北郷一刀だ。 【採用】か…一番楽なのは【取らなかった】だけど

>>「うん、みんな無事でよかった!( ^ω^)・・・ウン!ソウダナ!
>>紀霊さんと交渉しようにも伝手は白蓮さんくらいしかありません。 馬家のお嬢さんがものすごいいい笑顔で自分を指さすよ!よ!(もしもそれをやればほぼ確実に張遼を殺れてそれは本郷たちのおかげだと思うだろうしね!)
>>そして紀霊さんは私たちにいい感情を持っていません。 ご覧ください。本人の目の前で部下の勧誘をしたり厚かましい乞食をしてなお、良い土地に推挙されたり糧食を恵んでもらっておきながらこれですよ
いったいどんなトリックをもってすれば馬超と張遼が一緒に笑って過ごせる未来が来るというのか
ネームドはいないわ、董卓軍の大義名分は微妙だわ…董卓の人柄にひかれて部下になった人たちからすれば洛陽の現状は…ねえ。前回の水関があっさり落とされたことも併せて考えるとむしろよくここまでもったよ
381 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/12(日) 21:49:02.11 ID:6q8F18s+0
>>379
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>方天画戟
ですね。これは完全に辞書が悪い(他責)
読み返してもなんかスルーしてましたね。いやあ、申し訳ない。

>ドラゴンとかならいいんだけど東洋の白虎でこれは…端的に言って好みでない(笑)
ほむん。
文字化しない方がええかもしれませんね。これは迷ったんだよなあ。

>ご覧ください。本人の目の前で部下の勧誘をしたり厚かましい乞食をしてなお、良い土地に推挙されたり糧食を恵んでもらっておきながらこれですよ
彼らなら言うという確信がございます。苦労もしてませんしね。

>いったいどんなトリックをもってすれば馬超と張遼が一緒に笑って過ごせる未来が来るというのか
お花畑でキャッキャウフフすればきっとおめめぐるぐるしてみんなしあわせ!

>前回の水関があっさり落とされたことも併せて考えるとむしろよくここまでもったよ
まさに、です。
382 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/14(火) 21:30:57.39 ID:HaclHHix0
「おお、効く効く……」

脇腹に当てられた掌からじんわりと熱が伝わってくる。少しずつだが確実に痛みが引いていき、呼吸のたびに激痛が走っていたのがどんどん楽になっていく。極楽極楽生き返るぅ。

「そうか、それはよかった。しかし、無茶をする。下手をしていたら死んでいてもおかしくなかったぞ?」

そう言って文字通り手当てをしてくれているのは華佗である。
普通骨折とか月単位で治癒に時間が必要だと思うんだが、もう一刻もすれば痛みも完全に消えそうである。曰く、【気】のちょっとした応用、だそうである。【気】、半端ないって。そんなんできひんやん普通。
知ってたつもりだったが、実際自分の身で体験すると違うね。すごE。
これは習得に頑張ってもらわんといかんなと冗談混じりに言ったら、凪はえらく深刻な表情で頷いていた。いや、そんなに真に受けられても逆に申し訳ないんだが……。

閑話休題(それはともかく)。
……鳴り響いた銅鑼はどうやら退却の合図だったようで、恋も一瞬の隙を突いて戦場から離脱していた。流石に全力で逃げられると、流石の星でも追撃を諦めないといかんくらいであった。見事な逃げ足である。是非とも見習いたいものだ。
どうやら真正面でがっぷり四つに組んでいた曹家と孫家の軍が相手を潰走させたらしい。あれ、相当に数的不利だったはずなのだが。戦線を維持してくれたらいいか、くらいの割り振りだったのにね。詳細聞けば聞くほど華琳と穏がしゅごい。
もっと言うとシャオが頑張ったのがもっとしゅごいそうなんだが、意味が分からない。流石孫家の血筋ということだろうか。末恐ろしいことこの上ないやね。こわE。

馬家と公孫家は散々に追撃したらしい。流石に白蓮は引き際を心得ていたみたいだが、翠はもう、執念深く深追いしてしたたかに逆撃を喰らったそうな。まあ、想定内ではある。稟ちゃんさんの想定だけどな!

それはさておき、ちょっと心配なのは真桜である。えらい剣幕で俺のとこに来て、顔を見るなり「あほ!」ときたもんだ。それ以来不眠不休で工兵を指揮し自らも攻城兵器の再組立てと調整に奔走しているらしい。いかんよ、きちんと休まんと。と苦言を口にしようとしたんだが。

「……いえ、好きなようにやらせてあげてください。私も真桜の気持ちは分かります」

ここで稟ちゃんさんのインターセプトである。
ほむ?そんなもんかね。
と、首を傾げていたら一通り治療が終わったらしい。

「二、三日もすれば違和感もなくなると思う。思うが、余り無茶はするなよ」

そう言って立ち去る姿はマジイケメンである。野郎、凪に気の応用を教えるのはいいが粉かけたら許さんからな。
そういや、あいつ女の噂聞かないな。どうなってんだろう。

などと小物丸出しの益体もないことを考えていたら音もなく近寄った七乃が耳打ちしてくる。

「そうか、真桜にゃ悪いが攻城兵器の出番はなくなりそうだな」

降伏の使者として張遼自らが訪れたとのことである。
まあ、籠られてもこっちゃ力押しで完勝しちゃうからなあ。妥当な判断だろうて。

◆◆◆
383 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/14(火) 21:31:25.32 ID:HaclHHix0
「なんや、恋の本気の一撃喰ろうたて聞いたから死んだかと思たらえらい元気そうやないか」

「ご挨拶だな。まあ、こう見えて不死身なもんでね。あれしきの怪我、どうということはないのさ」

「ふうん。別に強がりってわけやなさそやな。ま、ええわ。
 うちは七面倒くさい口上とかは苦手やさかい、単刀直入に用件を言うで」

まあ、用件自体は予想通りである。無条件降伏と言う奴だ。

「勝ち目があらへんからなあ。これ以上ついてきてくれた兵達を犠牲にするわけにもいかんわ。一か八かの博打にも負けてもうたしなあ」 

せやから、と苦い笑みを浮かべながら言葉を繋ぐ。

「これ以上の抵抗は無意味やろ。月と賈駆っちにもまあ、義理は果たしたわ」

いっそさばさばと、張遼は呟く。そこには深い苦悩の跡が見て取れ、揶揄なぞできようはずもない。

「やからまあ、あんじょう頼むわ」

「おうよ。悪いようにはせん。知らん仲じゃないしな」

「ん、おおきに……」

用は済んだとばかりに去ろうとする俺に、らしくなく弱々しい声が届く。

「なあ、月と賈駆っち。なんとかならんか?」

きっとそれをずっと聞きたかったんだろう。そのために彼女らは必死になっていたんだろうし。だが、その問いに対する答えは決まっている。既に決まっているのだ。

「ならんな」

「……そ、か」

最早、是非もなし。
ただし、このろくでもない事態を引き起こした奴についてはきっちり落とし前をつけてやる。

らしくなく、悄然とした張遼を室に置いたまま室を辞する。そして俺はぎり、と歯を食いしばる。
虎牢関を落としたことに昂揚なんぞ欠片も感じない。最高にくそったれな気分である。

後は、洛陽をどうするかだけだな。

こっからはマジで慎重にいかんと、なあ。
384 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/14(火) 21:31:53.06 ID:HaclHHix0
◆◆◆

さて、虎牢関を落としたら次は洛陽なのだが、一旦ここで足踏みである。なんせ董家軍の主力が降伏したんだから、これ以上干戈を交える必要はない。まさかに洛陽に攻め寄せるわけにもいかんからに。
虎牢関を落として一番助かったのは、洛陽とのやり取りにかかる時間が大幅に短縮されたことだ。メイン軍師たる風とのやり取りがスムーズになったのは本当に大きい。これには稟ちゃんさんもにっこりである。
ちなみに使者には毎回張?を派遣している。人材の無駄遣いと言うなかれ。ここのやり取りは本当に重要だから、万が一にも使者が途中でぶっ殺されたり買収されたりするわけにはいかんのである。
これが他の場合であれば何人も色んなルートで書状を送ったりするんだが、張?ならば問題はない。だって多分素で俺より強いしね。それに無論諜報畑だから色んな、俺の知らない機微にも通じているだろうし。うむ、餅は餅屋、である。

「随分と張?君を買ってらっしゃるんですねえ」

「うお!」

気配もなくいきなり耳元でふう、と息を吹きかけつつ囁いてきたのは七乃だ。前張家の当主であり、今も穏然と影響力を持っている。
と思う。
その隠密スキルは大したもんで、ここまで密着されるまでほんと察知できなかった。ガチで。
いや、俺の気配察知スキルが低いという説もあるけどね。

「脅かすなよ。寿命が縮んだかと思ったっての」

「おやおや。おやおやおや?
寿命が縮んだのはこっちですよ?まさかほんとにあの、人中の呂布と遣り合うとは思ってませんでしたからね。
いいですか?二郎さんは、二郎さんが思っている以上に重要人物なんですよ?死なれたら色々と困るんです」

にこにこしながらしなだれかかってその身体の柔らかさを伝えつつ耳をがじり、と齧るという高等テクニックを駆使しながらそんなことを言う。いやほんと、ごめんて。

「いやいや、俺もこんなところで死ぬつもりは全くなかったし。あれはあれで蓋然性があったし」

「ふうん?本気でそういうこと言ってるあたり救われませんねえ。美羽さまなんて、ほん  
 と、どれだけ枕を涙で濡らされたか。それだけでも万死に値しますよ?」

マジか。これは後でご機嫌伺いに行かんといかんなあ。嫌味混じりでもそういうことをきちんと伝えてくれる七乃にはマジ感謝である。流石袁家の諜報を一手に握っていただけのことはある。そういう機微は超一流だね。
いや、そういうのをきっちりしとかんと意外と組織の円滑な運用って難しいのよね。中元歳暮、年末年始の挨拶マジ重要ってなもんである。
とは言え、聞いてくれよ。

「だってさあ、恋を軍で迎え撃ったら見失って本陣への侵入を許したかもしれないじゃん。
 それに、あの子万単位で兵の相手できちゃうからな。常備軍たる袁家の兵卒をそんなとこで使い捨てにはできんて」

徴兵したら揃うってわけじゃあない。時間も金もかけてるのだよ、袁家の兵には。何せ常備軍なんだから。

「六万の兵卒を使い捨てにしてもよかったと思いますけどね。個人的には。
 ま、そこは二郎さんと私の認識の差でしょうね」

「まあ、最悪俺が討死してても袁家勝利は揺るがなかったろうしな。稟ちゃんさんも保証してくれたぞ?」

「ほう。あの女狐がそんなこと言って二郎さんをけしかけたのですか。これはいいこと聞いちゃいましたねー」

「え?俺余計なこと言った?」

「いいええ。そんなことはないですよ?ただ、ですねえ。二郎さんの価値について見解の相違があるというだけです。そうです。この戦いだけであればいいでしょうが、二郎さんがいなくなっちゃったら、結構めんどくさいことになるんですよ?」

ああ、そっか。紀家の跡継ぎとかいないしな。そういや文も顔もか。いや、軽挙妄動しちゃったかもわからんね。

「……分かってなさそうですねえ、その顔だと。ま、いいです。所詮些事ですから、貴重なお時間ですものね。失礼しちゃいました!」

いやいやいや。

「いや、ちょうどいい。呼ぼうと思ってたんだ」

「おや?珍しいですねえ。ああ、戦(いくさ)の後は激しいですもんね。
じゃあ、ちょっと失礼して……」

おもむろに服を脱ぎだそうとするのを慌てて止める。

「違う、違うから!いや、別にそれが嬉しくないってわけじゃあないけど、そうじゃなくて!そうじゃなくってだな!本当に相談したかったんだってばよ!」

こっから先について、な。

一応稟ちゃんさんには確認したし、これから風からの添削も来るとは思うが。やはり謀略と言えば七乃である。にこにことしたままの七乃に、俺が思う所を語ったわけである。
385 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/14(火) 21:32:44.96 ID:HaclHHix0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は
陥落

です

ええ感じのやつ、オナシャスる
386 :赤ペン [sage saga]:2020/07/16(木) 12:16:57.99 ID:nd/JbgFZ0
乙でしたー
>>382
>>普通骨折とか月単位で治癒に時間が必要だと思うんだが、もう一刻もすれば痛みも完全に消えそうである。 それが分かるとか医学の心得でもあるのか…抗生物質作らなきゃ!
○普通骨折とか月単位で治癒に時間が必要だと思うんだが、もう少しすれば痛みも完全に消えそうである。  もしくは【もう一刻もすれば痛みも完全に消えるそうである。】素人診断するなら時間はふわっと、時間を指定するなら華佗の診察によるものにした方が自然だと思います
>>流石に全力で逃げられると、流石の星でも追撃を諦めないといかんくらいであった。 【流石】が2階続くと違和感が
○恋に全力で逃げられると、流石の星でも追撃を諦めないといかんくらいであった。  もしくは【流石に全力で逃げられると、あの星でも】とかどうでしょう
>>えらい剣幕で俺のとこに来て、顔を見るなり「あほ!」ときたもんだ。      間違いじゃないよ?あくまでも好みの問題で
○えらい剣幕で俺のとこに来て、顔を見るなり「この、どあほう!」ときたもんだ。 むしろ【こん……ドあほう!】とかの方が雰囲気出るかな?

>>「六万の兵卒を使い捨てにしてもよかったと思いますけどね。個人的には。 あぁ〜重い愛が心地よいんじゃあ…実はこれって下手したら6万が無駄死にして失敗する可能性があってなお言ってるよね…基本的に美羽様以外は自分も含めてみな平等に無価値と見てそうな彼女が二郎のことは美羽様の次あたりにおいてそうな良き描写でございました
一応ここからでもどちらかだけなら助ける道はあるんだけど…それしても助けられた方は救われないんだよなあ
両方を救う道はすごい無理をするしその後で一体どれだけの血が流れるかを思うと…二郎ちゃんは選ばないんだろうなあ

そういえば思ったんだけど二郎ちゃんを凡将呼ばわりしていいか微妙になったよね…少なくとも呂布に戦いを挑もうとするだけでネジ外れてるわ
そして分かってないんだろうけど君が呂布に打ち取られて、かつ呂布が君の遺体を持ち帰らなかった場合降伏の受け入れは…
387 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/16(木) 20:37:18.73 ID:54pRcYUb0
>>386
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>あぁ〜重い愛が心地よいんじゃあ…
えへへ

>実はこれって下手したら6万が無駄死にして失敗する可能性があってなお言ってるよね…
これはその通りですね

>基本的に美羽様以外は自分も含めてみな平等に無価値と見てそうな彼女が二郎のことは美羽様の次あたりにおいてそうな良き描写でございました
貴重な?七乃さんのデレでございました。七乃さんが自覚してるかどうかは、どうなんでしょねw

>一応ここからでもどちらかだけなら助ける道はあるんだけど…それしても助けられた方は救われないんだよなあ
ほむ。どちらも覚悟完了してますからねえ。

>両方を救う道はすごい無理をするしその後で一体どれだけの血が流れるかを思うと…二郎ちゃんは選ばないんだろうなあ
おとぎ話の主人公なら、それでも両方救うのでしょうけどね。凡人だからね。ある意味諦めてますからね。

>そういえば思ったんだけど二郎ちゃんを凡将呼ばわりしていいか微妙になったよね…少なくとも呂布に戦いを挑もうとするだけでネジ外れてるわ
関羽とやり合ったり、呂布と弓比べしてるから(記憶曖昧)セーフ?

>そして分かってないんだろうけど君が呂布に打ち取られて、かつ呂布が君の遺体を持ち帰らなかった場合降伏の受け入れは…
こわや、こわや……っ!
388 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:28:17.89 ID:HQeadq550
てすと
張?
389 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:28:43.85 ID:HQeadq550
てすと
張郃
390 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:46:21.14 ID:HQeadq550
「おや、虎牢関が落ちましたか。予想より早かったですねえ。
 しかし、二郎さん自ら矛を交えるというのはいただけません〜。これ、誰もお止めしなかったのですか?」

小首を傾げる少女の表情は眠たげであり注意力散漫といった風ではあるが、それは擬態であろうと張郃は推測している。
なんとなれば目前の少女――程立――は単身洛陽に残り、後方より董家軍に有形無形の被害を与え続けていたのだから。まあ、その功績はごくごく限られた人物しか知ることはないであろうが。

「ふむ。紀家当主の強い意向とのことだったな。それに文、顔の当主までが賛同したならば否やはないだろう」

反対意見も根強くあったが、押し切られたというのが実際のところだと張郃は答える。

「それでは致し方ありませんね〜。まあ、それは置いておきましょう」

そのような綱渡りをさせたのは自分にも責任があると程立は追及の手を緩める。内心忸怩たる思いはあるのだが、毛ほどにも顔には出さない。

「それでは参りましょう。護衛の方はお願いしますね?」

「ふむ。それは一向に構わんが……」

この期に及んで誰と会うのだという視線での問いにくふふ、と程立は笑う。

「今日は忙しいですよ〜。まずは賈駆さんのところですねえ。それからはまあ。その後に決めましょうか〜」

ふむ、と張郃は頷く。

「もとより異存はない。虎穴に入ったとしても、君一人くらいならばなんとでもしてみせよう」

「これは心強いですねえ。そのような事態は起こらないとは思いますが、その時はお願いします〜」

にこやかに笑う程立。その胆力を目にして、張郃も感嘆の念を惜しまない。
そこいらの自称武人よりもよほど腹が据わっている。

「いえいえ、風は出が庶人ですから〜。この程度は鉄火場とは言えません〜」

頼りになる護衛もいますしね、と柔らかな笑みを浮かべて言う。

「そう言えば二郎さんと初めてお会いしたのも野盗に襲われて万事休す、という時だったのですよ。ええ。あの頃は毎日が生きるか死ぬかでしたねえ」

程立は刹那どこか遠くを見るような目つきをする。

「ふむ。鉄火場にて狼狽されるよりは余程いいな。では、参ろうか」

彼らが向かう先は紛れもなく戦場。血の一滴流れることもない戦場。だが、その結果いかんでは屍山血河が生じるであろう。

「はいはい、よろしくなのですよ〜」

そのような気負いなぞ一切なく程立は含み笑いを一つ漏らすのみであった。

◆◆◆
391 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:46:47.29 ID:HQeadq550
「……そう、虎牢関が落ちたの」

賈駆は嘆息する。伝令より早くもたらされたその悲報。それが意味するところを解さないほど鈍ってはいない。

「どれだけ袁家の諜報力は凄いのよ。まあ、今更だけどね。虎牢関失陥については今初めて聞いたわよボクは」

その一言でも千金の価値がある。どうやら賈駆はここに至って情報を出し惜しみするつもりはないようである。

「ではでは、単刀直入にいきましょかね〜。
 董卓さんはご無事ですか〜?」

その言葉に賈駆は僅かに身を震わせながら首を横に振る。

ふむ、とばかりに程立は数瞬瞑目する。
双眸には深く隈が刻まれ、疲労の色がいかに濃くあろうとも賈駆の能力については高く評価しているのだ。
その彼女が、執金吾――洛陽の治安を司る役職である――の権限をもってしてもその足跡が掴めぬというのはどういうことかと。
そして、至る。

「――さて、かしこき方についても?」

その言葉に賈駆はバリ、と頭を掻きむしる。緑の黒髪が乱れるのを惜しいな、とあの青年ならば思うのであろうか。益体もないことを程立は思う。

「――初手でやられたわ。禁軍は皇甫嵩の手の内。禁裏にボクの手は及ばない」

「結構。ではこれにて失礼するのですよ〜」

用は済んだとばかりに程立は室を辞そうとする。

「待って!」

「……何か?」

その、程立の問いに賈駆は口ごもる。

「え、その。ね。あの……」

いっそ優しい貌で程立は応える。

「後はお任せくださいな。ええ、後始末はきっちりと。それはもうきっちりと致しますから。
 ――二郎さんと、お会いする機会も作りましょうからに」

賈駆は瞠目し、しばし言葉を失う。そして辛うじて言葉を捻りだす。

「月を、よろしく。そして。
――二郎にも、よろしく伝えてちょうだい」

にこり、と無言で程立は踵を返す。ここからは時は千金に値するのだ。寸暇も無駄にできない。

「やれやれ、厄介なことなのですよ」

だがまあ、と思う。洛陽に踏みとどまっていたのは無駄ではなかったと。
矢継ぎ早に指示を出すそんな程立に張郃は無言で付き従う。寄り添う影のごとく。
392 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:47:28.63 ID:HQeadq550
◆◆◆

「なんと、虎牢関がもう陥落したというのか」

嘆息交じりに劉協は瞑目する。西の函谷関と並び称され、天下に鳴り響いた要害がこうもあっさりと落とされるものかと。

「まあ、それは気にせぬがよいでしょう。なにせ守護するのが董家軍。かの軍は騎馬を以って敵を討つが本領です。もとより拠点の防御については不得手極まる」

相性が致命的に悪かったと皇甫嵩は首を振る。
彼の後ろに控える王允と李儒は身じろぎひとつせずに皇甫嵩と劉協のやり取りを注視している。
今や賈駆がなりふり構わずただ董卓の行方を追うことに全力を尽くしている現状、洛陽に於いて漢朝を動かしているのはこの二人である。政務を劉協が、治安や軍事――と言っても洛陽に限られるが――を皇甫嵩が担っている。
お世辞にも大過なく運営しているとは言い難いが、それでもいいというのが両者の共通した認識である。あくまで董卓が相国として全権を担っている。暴政ならば董卓の責任、うまく回ったら自分たちの尽力の成果ということだ。

「しかし、袁家の怒りは予想以上のようでした」

いささか芝居がかった仕草で皇甫嵩は肩をすくめる。

「む。まあ、無理もないか。当主自らが身の危険を感じての逃避行。聞けばあの豪奢な髪をも自ら切り捨てたとか。いや、もったいないことだ」

劉協はかつて見かけた袁紹の、光輝を背負うが如くに輝いていたその容貌を思い出して惜しむ。

「それだけではありません。董卓の手の者が袁紹殿の逗留地を襲った際に、かの匈奴大戦よりの古参の宿将雷薄、更には袁家の幹部候補生が多数討死しております。
あれは、いかにもまずかった」

せめて、やるならばきっちりと袁紹の首級を上げないと。それができないからこうなる。皇甫嵩は刹那その秀麗な顔を歪めるが、気を取り直して言葉を続ける。

「そう、袁家は本気です。勅すら無視するほどに」

「うむ、そのことよ。何進より事前に密勅があったというが真だろうか」

劉協は懸念を口にする。切り札の一つであった勅命。それをすら袁家はものともしない。勅を以って勅を制するなぞ埒外にもほどがある。

「……なんとも言えないですね。ただ、先ほど程立という人物と話しました。かの怨将軍紀霊の腹心です。何とも読めない人物でしたが……」

茫洋と、掴みどころのないその言動には流石の皇甫嵩もその真意を掴むのは容易ではなかった。無論それは意図的なものだ。
こと鉄火場修羅場をくぐるという意味において、程立の経験は皇甫嵩を遥かに凌ぐ。火花が散るようなその戦場での一挙手一投足に至るまで細心の計算に基づくものである。例え傍目にはいささか呑気な小娘に見えようとも。
その程立をして最大の警戒を抱かせる皇甫嵩こそ傑物であったろう。失意のどん底にある賈駆から情報を吸い出して尚、傍らに張郃を控えさせていたのは故あってのことなのだ。
けして程立は相手を甘く見ない。俯瞰し太極から見据えるのが彼女の本領だからして。

「ある程度の流血はやむを得ないでしょうね」

その言に胡乱げに劉協は問う。

「いささか抽象的だな。袁家は何を求めている?まさか帝位なぞということはなかろうな」

「袁家は北方の防壁にして漢朝の藩屏。そこは揺るぎませんよ。ただ、袁術殿が輿入れする以上、帝位は……」

「劉弁のものとなる、か」

苦さを隠そうともせずに劉弁は口惜しそうに嘆く。あの惰弱、無能、無気力の凡人に帝位を、至尊の座を再び与えねばならないのか、と。

「ですが、劉協様におかれましては陳留王の地位を用意する準備があるとのことでした」

隠居隠遁の必要もなしということである。むしろ、これからも漢朝に影響力を保てるということ。

「ふむ、中々に殊勝ではないか。いや、漢朝の行く末を見れば当然の判断か……」

つい先ほどまでは偽帝として討たれる可能性すらあった劉協は安堵する。なかなか袁家も分かっているではないか、と。

「ええ。ですがここは一度お姿を隠すべきかと思います。邪知暴虐の董卓とは無関係であるということを示すためにも。あれと一連托生する気はないのでしょう?」

可笑しげに、唄うような皇甫嵩の言に内心苦々しいものを感じながらも劉協は頷く。

「そう、だな。一時の雌伏。致し方あるまいて」

返り咲く際には、と劉協は思いを巡らす。

なに、宮中は如何様にもなる。宦官勢力は曹操が押さえるのであろうが、それはきっと袁家の掣肘により大幅に打撃を受けるだろう。
ならば、地力に勝るであろう自分が主導権を握ることができるはずだ。

同床異夢。ほぼ同じ思惑を抱いているのを知ってか知らずか。皇甫嵩と劉協は比較的穏やかにその場を後にするのであった。
393 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/17(金) 07:48:03.59 ID:HQeadq550
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案は「波紋」です

ええ感じのやついただけたら嬉しいんやなって
394 :赤ペン [sage saga]:2020/07/18(土) 12:19:08.89 ID:0mmXyFUK0
乙でしたー
>>392
>>せめて、やるならばきっちりと袁紹の首級を上げないと。それができないからこうなる。                    前の言葉からすると
○せめて、やるならばきっちりと袁紹の首級を上げないと。それができないならば次に繋げるための布石にするべきだ。それすらできないからこうなる。 雷簿の死やら何やら…生け捕りにしてればまだ交渉材料になったのに…(なお覚悟完了の死兵…机上の空論ってやつだな
>>俯瞰し太極から見据えるのが彼女の本領だからして。    間違いではないですが好みとしては
○俯瞰し太極から見据えることこそが彼女の本領だからして。 とかどうでしょう

>>貴重な?七乃さんのデレでございました。七乃さんが自覚してるかどうかは、どうなんでしょねw
つ【袁家二の姫と女郎蜘蛛】 彼女はきっちりと二郎が自分にとって特別だと気付いていますですよ
>>関羽とやり合ったり、呂布と弓比べしてるから(記憶曖昧)セーフ?
水木しげるとか手塚治虫とか羽生善治とか織田信長とか徳川家康とかに転生した一般人が本人と同じことをできても中身は凡人認定するかっていうと…しないんじゃないかなあ?
>>茫洋と、掴みどころのないその言動には流石の皇甫嵩もその真意を掴むのは容易ではなかった。
真意を掴むのは容易ではなかった(掴めたものは真意とは言っていない)ですかね…見ているものが違い過ぎる凡人の考えを知らない以上彼女の目指すものを読み取るのは無理な気がする
李儒はともかく王允の立場がよく分からんな…ここまで知って良いというか知るべき立場なのか…能力があるのは分かるけどそれはそれとしてクーデターまがいのことに積極的に与する程権力好きって印象もないし首脳陣には組み込まれてないと思ってたけど違ったのか
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/20(月) 00:00:03.99 ID:8CW2ywaU0
otuです
一刀たちにはぜひ空気読まずにばっちょさんに袁家へのとりなしをお願いしてもらいたいのだが・・・董卓たちを救うために
396 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 06:28:58.53 ID:A34dce7M0
>>394
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>雷簿の死やら何やら…生け捕りにしてればまだ交渉材料になったのに…(なお覚悟完了の死兵…机上の空論ってやつだな
これはマジでそうです。

>水木しげるとか手塚治虫とか羽生善治とか織田信長とか徳川家康とかに転生した一般人が本人と同じことをできても
たとえがすごいw
熱帯で妖怪見たり、医学部入ったりとかむーりー
敦盛踊れないし三河武士の頭領とかやってられないしw

>李儒はともかく王允の立場がよく分からんな…
元から皇甫嵩の手飼いという設定、確かに解説していなかった気もします。どっかで付け加えておくか。

>>395
どもです。

>一刀たちにはぜひ空気読まずにばっちょさんに袁家へのとりなしをお願いしてもらいたいのだが・・・董卓たちを救うために
え?!よりによって馬家に?
多分翠の政治力のアカンさを幼女が察してインターセプトするんじゃないかなあ……っ!
あえての突撃も面白そうではありますね
397 :赤ペン [sage saga]:2020/07/20(月) 14:03:18.33 ID:8CW2ywaU0
まあ手飼いだろうな、とは思ってたけどこういう場に連れ込むほどだったのか…とね
皇甫嵩って自分の頭の良さに自信持ってそうだからいざと言うときの護衛役はいてもこういう時の相談役みたいなポジションがいるのが意外だわ
水木さんとかが無理ならあれだ…ピース又吉で。転生得点に彼の書いた作品を完全記憶で
398 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:25:35.98 ID:A34dce7M0
>>397
どもです。

>まあ手飼いだろうな、とは思ってたけどこういう場に連れ込むほどだったのか…とね
どちらかというと、何進はそれでもそれを重用しないといけなかったという。
うーーん、でも実務というよりつながりですかねえ

>相談役みたいなポジションがいるのが意外だわ
そういう感じではないっすね
おっしゃるとおりです
使い捨てのコマですわ

>水木さんとかが無理ならあれだ…ピース又吉で。転生得点に彼の書いた作品を完全記憶で
勘弁してくだしあw
399 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:54:49.98 ID:A34dce7M0
「しかしまあなんだね。陳留王とはまた張り込んだねえ」

むしゃむしゃと茶菓子を頬張りながら魯粛は程立に問う。陳留王は権威がありすぎるのではないかと。なんとなれば国政に口を出すことを認めたも同然であるのだ。

「そですか?妥当なところだと思うのですが〜」

くふふ、と陽だまりのような笑みを漏らしながら程立は応える。

「劉協どのを陳留王として封じる。これにより袁家が洛陽に兵を進めても至尊の座に座る彼は命脈を保つことが出来ます。彼が一番懸念していることはまあ、言ってみれば保身に尽きますから〜。これに否やはないでしょねえ」

「そこだよ。紀霊さんにしては甘っちょろいんじゃない?」

どこか不満げに魯粛は程立にぼやく。魯粛としては地味な後方支援に徹しながら期待していたのだ。苛烈なまでの、怨将軍たる紀霊が本気になって動いた時の酷烈さを。かつて郭図率いる義勇軍を貶め、殲滅せしめたように。洛陽の奥底に潜む汚泥をきっと焼き払うと思っていたのだが。その一端を担っていたのは魯粛ではあるし、だからこそ洛陽に派遣されていたと思っていたのである。

「とりあえずは慎重にいかないといけないのですよ。洛陽を火の海にするわけにもいきませんしねえ」

やけに主君たるあの青年は洛陽が戦禍に巻き込まれるのを気にしていた。防ごうとしていた。ならばそれに至る可能性を排除するべし。

「ああ、ちらっと聞いたよ。洛陽を焦土として諸侯軍の消耗を図る。更には長安に遷都するって与太話でしょ?正気の沙汰とは思えないね」

やれやれとばかりに魯粛はそれを一笑に付す。

「まあ、正気の沙汰かどうかはさておき、なんとも嫌な一手ではありますね。無論前提として、玉体を手にしていないと意味はないのですが」

それもそうかと魯粛は頷く。故に劉協との交渉はこの上なく重要だったのだろう。そして禁軍を掌握する皇甫嵩とも。

「まあ、よかったんじゃない?禁軍は諸侯軍の進駐に対して無血開城するんでしょ?」

「ええ。どだい、正面から禁軍単独では袁家軍単独にすら勝ち目はありません。ですが流石に洛陽を袁家の手で攻め寄せるのはいかにも世間体が悪いですからねえ」

「あれ?勝てばよかろうなのだじゃなかったっけ?」
400 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:55:31.47 ID:A34dce7M0
袁家鉄の掟的なものを思い起こして問いただす魯粛に程立は苦笑して返答する。

「いえいえ、ここに至って勝つのは当然なのですよ。そして当代の袁家当主からは勝ち方についてもご指定頂いていますしね〜」

華麗とか優雅とか雄々しくとか。まあ、勝ち方を気にすることが許されるほど余裕がある、ということでもあろう。

「とすれば洛陽を灰塵に帰するわけにはいきませんしね」

くふふ、と笑う程立。そこを混乱に叩き落としておきながらどの口が言うのだろうか。脱力しながらも魯粛は更に問う。

「でもさ、皇甫嵩にしても劉協にしても傑物なんでしょ?まあ、そんなのが本気で抗戦するよりは取り込む方がいいってのも分かるんだけどさ。実際今の朝廷を牛耳ってる人らでしょ?
普通に考えて獅子身中の虫になんない?」

魯粛の問いにごもっともとばかりに程立は深く頷く。

「いやいや、魯粛さんのおっしゃる通りなのですね。ですが、それはそれで悪くありません。意外と袁家の戦略には合致しやしませんか?」

は思考を広げる。なんとなれば、離れてなお、袁家を引っ張るあの青年の軍師は自分であるのだから、との矜持とともに。
401 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:55:58.94 ID:A34dce7M0
はあ?と魯粛は反射的に返すが、刹那考えてぐぬぬ、と唸った。

「なるほどねえ。そういや紀霊さんの戦略というか方針は三竦みだっけか。当初の目論みでは何進、清流派、そして宦官を率いる曹操さん。それが今回の件で変わったと。何進の位置に劉協殿。それに対して清流派、曹操さんの立ち位置は変わらずかあ。なるほどね。
ぶれないんだね、紀霊さんの戦略って」

なるほどと魯粛が頷く。揺るがぬその方針。それは簡にして単。故に強固。それが察知されても揺るがぬその重厚さよ。

「まあ、今回の乱で曹操さんの権力基盤になるだろう宦官勢力には掣肘が加わるか。となると、ちょっと三つ巴にするには宦官が弱くない?」

その言ごもっとも。しかし、と程立は苦笑する。

「傍目にはそうなのですがね。如何せん曹操さん、そして側近の力を加味すれば、それでも削り足りないのじゃないかと思ってらっしゃるみたいですよ」

「ふうん。私は曹操さんと会ったことないからよくわかんないんだけど、そりゃ厄介だねえ。
でもさ、ちょっと思ったんだけどね。曹操さんの優秀さを置いといたらさ、普通に考えて清流派と劉協さんに組まれたら結構厄介じゃないの?」

「まあ、そこでこれまでの布石が活きてくるのですよ。幾度も上洛して漢朝を欲しいままにする機会あれども袁家は北方の護りに専念してきました。もはや中央に対する権勢欲なぞないと認識されています。
つまり」

董卓亡き後の洛陽、ひいては漢朝は文字通り三つ巴に混沌とするであろう。いやさ、なんとなれば曹操がいない今こそが次の漢朝を手にする好機。
漢朝という極上の餌を前に、清流派を率いる皇甫嵩と劉協が手を取りあえるものだろうか。

「二虎、相喰らう、ってこと?」

にまり、とした程立の貌に魯粛は苦笑する。

「そっか、そうだよね。そうなってもいいし、三つ巴になってもいい。前提が違うんだ。もう、違っちゃったんだね。袁術様が入内される宮中をそのままに放置するわけがない。その嚆矢でもある、か」

そう。袁家は確かに武門。だがその、二の姫が入内するにあたり権力闘争に無関心ではいられないであろう。そしてそこには張勲が傍らにいるのだ。

「ああ、なるほどねえ。袁家はこれまで通り我関せずと思わせておいて後宮に鬼札を潜ませる、か。いやあ、程立さんも悪だねえ」

「いえいえ、それほどでもないのですよ」

袁家の外において張勲という政治的化け物の真価を察していたのは、水面下で暗闘を繰り広げていた何進くらいのものだろう。李儒ですら怪しい。

「まあ、どう転んでもいいようにするのが風達のお仕事ですので〜」

その言葉を合図にやれやれとばかりに魯粛は重い腰を上げる。これからはまた、洛陽に集まり配分される物流を混乱させる簡単なお仕事が待っている。
正直気が滅入るその仕事についても、お役御免となるのは近いうちであろうが。

室を辞した魯粛を見送り、程立は顔を引き締める。

「あれで、身内に厳しい方ですからねえ、二郎さんは」

いっそ董卓一派を無罪放免するくらいに公私混同するのならばよかったのだが。
師匠筋の薫陶よろしくむしろ身内には厳しい処断を下すであろう。それはいい。
それはいいのだが。

「あれで、情に脆い方ですからねえ……」

どうせならば情に棹差して流されればいいのにと程立はくしゃり、と顔を顰める。
きっと余計なものを背負ってしまうのだろうなあと思うのである。

「或いはお側に侍っていた方がよかったでしょうか……」

あれで繊細なところもあるのだ。あの青年は苦悩するだろう。だがまあ、致し方なし。何事も万全で挑めることはないのである。

だから、責は果たした。洛陽進駐に於いて禁軍との武力衝突は避けられた。謀略の種も仕込んでいる。できることはしたはずだ。役割は果たしたはずだ。

それでも内心穏やかでないというのは。

「これが、心の贅肉というやつなのですかねえ」

やれやれ、と程立は肩をすくめる。どうにも仕える主に入れ込み過ぎているのかな、という自問と共に。
そしてその、自らの思いすら秤に乗せて程立
402 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:57:06.73 ID:A34dce7M0
そしてその、自らの思いすら秤に乗せて程立は思考を広げる。なんとなれば、離れてなお、袁家を引っ張るあの青年の軍師は自分であるのだから、との矜持とともに。
403 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/20(月) 22:57:55.31 ID:A34dce7M0
最後ちょっとミスりましたが本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!

「黒幕会議」

そこまで黒幕かなあ
404 :赤ペン [sage saga]:2020/07/21(火) 11:49:26.51 ID:rqiELf7R0
乙でしたー
>>400
>>は思考を広げる。なんとなれば、離れてなお、袁家を引っ張るあの青年の軍師は自分   誰だお前?
○程立は思考を広げる。なんとなれば、離れてなお、袁家を引っ張るあの青年の軍師は自分 まあ筆頭軍師なら彼女か
>>401
>>幾度も上洛して漢朝を欲しいままにする機会あれども これが来ちゃったかあ…難しい解説はググってもらうとして
○幾度も上洛して漢朝を縦にする機会あれども     ホシイママの書き方は一般的には【恣】(好き勝手に、ぞんざいに)【縦】(したい放題、勝手気ままに)【擅】【独り占め、自分勝手に】の意味を含むので一番近いのは【縦】かなあ?
○幾度も上洛して漢朝を思う儘にする機会あれども   そのものずばり《思った通りに》な感じで、もしくは【漢朝を思うがままにする】こっちはより独善性と言うか意味としては【(自分の正しいと)思うがままに】な感じですね

いっそ公私混同して、どうせなら情に流されて、と言う考え方が良いですね〜二郎ちゃんは本当にもっと恣にしても周りがどうにかしてくれるのよ?(それによってどれだけ多くの外側の一般人が切り捨てられるかを気にしなければ)
ぶっちゃけ背負い込み過ぎだよね、まあ二郎ちゃんとしてはどっちかと言うと殺すことで背負い込みたくないから生かす道を模索してるのかもしれんけど
そう考えると背負い込むというよりは囲い込むの方が近いか?沢山の人たちで手を繋いだ中で更に沢山の人を庇護しているというか…
405 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/22(水) 05:42:26.68 ID:AAQSJSuG0
>>404
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>二郎ちゃんは本当にもっと恣にしても周りがどうにかしてくれるのよ?
二郎ちゃん、愛されてますからねえ
知らぬは本人ばかりなり。なお知ったらもっと苦しむ模様

>ぶっちゃけ背負い込み過ぎだよね
これは正直そうですね。もっとお気楽に生きてもいいのに。
どの口がいうかというのは置いといて。。。
主人公してくれてます。
406 :赤ペン [sage saga]:2020/07/22(水) 11:37:51.39 ID:F8MZ8cvZ0
補足説明でもしとこうかな
【ほしいまま】が【欲しい儘】じゃない理由…なおこの説明は私の個人的意見によるものであり文部科学省その他による公式解答ではありません

例文として【パイを欲しいままにする】…食えよ。となります【欲しい】なら自分のものにすればいい
でも実際には【ほしいまま】は自分の好きなようにする、と言う意味が強く(もちろん独り占めにする意味合もありますが)【自分の物にする】と言うよりは【自分の物のように扱う】感じがするので【欲しい儘】だと意味がずれるんですね

で、【恣】は下心があるので【思い通りに、我儘勝手に】が強く出ます、また上の【次】は【欠】が屈んだ人、【二】が揃えるを意味するので【座ったまま部屋を片付けるようなぞんざいな】意味があります
【縦】は糸偏に従うで糸をのばすこと、ひいては伸ばす方向を決める意味も含み【追従させる】形になり【多くのものを】が強く出ます
【擅】は手偏があるので【自分の手で】ひいては【自分だけで、独り善がり】が強く出ます

ただメンドクサイのでそれぞれの持つニュアンスをそのまま抜き取って別の言葉に置き換えた方が楽です
きちんと文字の意味を理解したうえで使えば文章としての奥行とか厚みが出ますが…とりあえず例文でお茶を濁して終わります

董卓は洛陽を恣にする悪魔だ。……好き勝手、ぞんざいに扱う場合。感覚的には無駄遣いしてるニュアンスですかね
何進は漢朝を縦にする悪魔だ。……7好き放題、思い通りに扱う場合。感覚的にはワンマン社長とかの引っ張ってるイメージですね。大体助長になりますが
富も名声も擅にした天下の怨将軍だ。……一人で自由に、独占する場合。まあもう少し小さい範囲でまとめて【麻薬の流通を擅にするギャングのボス】とかでも良いのかな…他二つよりも使い勝手が悪いイメージ
407 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/25(土) 21:19:45.42 ID:mnDPLlQC0
>>406
あうあうあうあうあー

非常に繊細なご指摘感謝とともに、あれなんです。
今回のご指摘でちょっと気付いてしまったことがございまして。
ここだけの話ですが、凡将伝では一部システム的なアレがアレする登場人物がいらっしゃいます。

まあ、CPB(カリスマピーチビーム)とか一刀さんとかは優遇枠ですのですが。

他にメタ的視点とか持ってるのは韓浩と風ちゃんでしたのです。
まあ、どっちも微細なものでしたが。

これ風ちゃんは周回プレイしてますね。
なるほど、本来星ちゃんも稟ちゃんさんも二郎ちゃんとこに来ない予定でしたもん。
そらそうですよね。あの三人まとめて登用とか、ね。

ということになりまして。
納得しました。風ちゃん、頑張ってるんやなって。
幾つものバッドエンドを、なんとなく認識してはるんやろうね。

ということになりそうです。

これは本当に赤ペン先生のご指摘から派生いたしました。

ああ、風ちゃんが手腕を発揮してしまうw
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/25(土) 22:48:14.44 ID:3wo2Zapc0
それって前回の周回の時(多分曹操に仕えた)に「この人の下はもういいかな」ってなったってこと?…ブラックだったんやな
409 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/26(日) 06:11:28.32 ID:6IY1Gbmq0
>>408
どっちかっていうと、他の周回に二郎ちゃんいないんで
「お、特異点かな?ついてったろ」
くらいの軽いノリじゃないかと
410 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:05:48.70 ID:z2f4tQkH0
虎牢関を落とした後、反董卓連合は一度その軍勢を集結させていた。
その大軍を虎牢関に収容しきることはできず、洛陽まであと二日ほどという地点に拠点を築いている。圧倒的な戦力を背景に無言の圧力を洛陽に加えているが、なぜ攻め寄せないのかという不満が諸侯軍からは寄せられている。
その不満は諸侯軍がこれといった武勲を挙げていないということの裏返しである。
董家軍は中華でも屈指の強さを誇る軍勢であるというのは共通認識であり、そのような精強な軍団に手持ちの、さほど練度も高くなく数も多いとはいえない軍勢をぶつけるのに躊躇していたからこそ活躍の機会がなかったのである。
無論諸侯もそれを理解しているのだが。いや、だからこそ残されているであろう、武勲を立てる機会に群がろうとしているわけである。

「つか、ある意味、皆暇を持て余しているってことだよなあ」

誰にともなく呟いたその言葉に関羽は柳眉を逆立てる。

「ご冗談でもそういうことを口になさらないでください。我らはあくまで後ろ盾すらない義勇軍。つけ入るすきをご主人様自ら作られてどうするのですか」

その言葉に北郷一刀は苦笑する。

「いや、ごめんよ愛紗。そういうつもりはなかったんだ」

そして内心感謝する。
何かと口うるさい彼女がそれでも付き従うのは万が一のことに備えてのこと。常在戦場とはよく言ったもので、彼女は常にその凛とした態度を崩すことはない。
むしろ、もっと楽にしてくれてもいいのになあ、と北郷一刀は思うのである。

「翠のとこに行くんだからそんなに気を張らないでもいいんじゃないの?」

馬家軍は反董卓連合においても有数の武家である。その武力は質も量も袁家をして一目も二目もおかざるを得ないほど。その馬家の本陣に向かうのだから、そんなに気を張る必要はないのに、と。

「いえ、だからこそお傍を離れるわけにはいきません」

その、いかにも暢気で、器の大きさを感じさせる言に関羽は首を横に振る。なんとなれば所詮自分たちは義勇軍。
有象無象を束ねている存在である。軽んじられるのは慣れているが、思う所がないわけではない。武門の名家である馬家が相手ならばなおさらのことだ。

舐められて、たまるか。

関羽の心境はこれにつきるのである。

◆◆◆
411 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:06:17.20 ID:z2f4tQkH0
「ああ、一刀か。久しいな。うん」

北郷一刀は馬超のその言葉に、その様子に内心ため息を大きく吐く。
だって。もっと、もっと。
この子は元気で、全身でその清冽な気を発していたのに。見ていられない。見ていられないほどに鬱屈としているのだ、あの錦馬超が。
だからこんなことを言う。

「翠、翠だよな?」

「は?あたしはあたしだ。何を言ってんだよ一刀」

その声も弱々しく感じる。北郷一刀の知る馬超ならば、そのような妄言あれば刹那の間もなく鉄拳制裁が来たはずなのだ。だから、らしくない。後ろに控える関羽すら違和感を覚えるほどである。

「無理するなよ」

そして張りつめていた糸はその一言で崩壊する。

「は?あたしがなにを無理してるって?なに?あたしのなにを知ってるのさ。何でそんなことを言うのさ。
 いい加減なことを言うのだったら、一刀と言えどただじゃおかないぞ……?」

湧き起こる殺気は本気のもの。無言を貫いていた関羽が主を庇うべく前に出ようとするのを制して北郷一刀は言い募る。

「分かりはしない。
 でもな。
 翠がそんなんで馬騰さんが喜ぶのかな?」

その言葉に、名前に馬超は激昂する。

「ち、父上のことを!言うな!何も知らないくせに!」

反射的に出た槍を関羽が弾く。
それに一層激昂して言い募る。

「父上が、死んだんだぞ!あの父上が!それでなんの馬家軍だよ!
まだ、もっと!教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全部、伝えられなかった!」

力任せの連撃。関羽は苦虫を噛み潰したような貌でそれを弾いていく。

「それでも、翠は今、生きているだろ!馬騰さんが今の翠を見てどう思うか考えろよ!
 そんな翠、見てられないよ。なあ。翠……」

「なんだよ!なんなんだよ一刀!お前は一体なんなんだよ!」

手にした愛槍――銀閃を取り落して馬超はこれまで抑え込んでいた悲嘆を吹き出す。
嗚咽を漏らす。
その馬超に、北郷一刀は優しく声をかける。

「なあ、翠。馬騰さんは凄い人だった。俺なんかが言っても説得力がないと思うけどさ。
 そんな俺でも分かるくらいに馬騰さんは凄かった」

その言葉に馬超はこくり、と頷く。

「だからさ、翠。馬騰さんの死にざま、ちゃんと、さ」

思えば、敬愛する父の死にざまを知っていなかったのだと馬超は愕然とする。

「そ、そりゃそうだけど……。でも、張遼は絶対に許さないからな!」

その、抗う声に北郷一刀は苦笑する。そんなこと一言も言っていないのに、と。

「いや、まあ、なんだ。話は聞こうよ、な?」

馬騰さんの最期を看取ったに違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。
暫しの沈黙。そして。
伝えられる言葉。最期の言葉。
412 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:08:21.59 ID:z2f4tQkH0
◆◆◆

「一刀、済まなかったな」

詫びる言葉。歩み寄りの言葉。
いくらか湿り気のある言葉。

「いや、いいんだ。それより、よかったな。霞と翠が仲直りできて、さ」

……一触即発、紆余曲折あったものの、馬超の、張遼との面会は最上の結果であったと言っていいだろう。

「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。霞には思う所がないわけじゃない。でも、一刀が言った通り、父上はきっとそんなことを望んでないと思うんだ」

――万里を駆けよ。

その、馬騰の遺言はようやく愛娘に伝わったのである。

「一刀が言った、さ。憎しみは何も生まないって、こういうことなのかな。
 一刀の言う通り、確かに霞が死んでも父上が帰ってくるわけじゃあないし……」

未だ煩悶としている馬超だが、それでいいと北郷一刀は思うのである。だって。

「うん、そうだな。翠はそうやって笑ってる方が可愛いよ」

こんなにも馬超は輝いているのだ。鬱屈としていた先刻とはまるで別人がごとく。

「な、なななな!そ、か、可愛いとか、何を言うんだ!」

慌てふためく馬超を見て北郷一刀は思うのである。馬家軍を率いると言っても、やはりというか、年頃の少女なのだなあ、と。
そして思うのだ。きっと彼女の父たる馬騰もそのように、笑っている姿をこそ願っていたのではないか、と。

色々と抗議の声を上げる馬超と戯れながら、思う。皆がこのように笑えるならば、それはきっと素敵なことだろう、と。

◆◆◆
413 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:33:46.99 ID:z2f4tQkH0
洛陽まであと二日ほど。虎牢関より先は遮るものもない。陣を構えて諸侯軍の集結を待つ。いやさ、流石に今いる兵力で突入というわけにもいかん。洛陽を舞台に手柄争いとかされたらかなわんからな。
専(もっぱ)ら最近は、逸る諸侯とか春蘭とか春蘭とか春蘭をなだめるのがお仕事なのである。あと春蘭な。
ええい、無思慮に洛陽につっかけて禁軍と遣り合うつもりかよ!
だが、そんな忍耐の日々もこれまでだ。

「うし、張郃ご苦労さん」

俺は張郃が持ち帰った報に内心胸をなでおろしていた。

「どうやら禁軍と相対することは避けられたようですね」

背後に控えていた稟ちゃんさんの言う通り、風がやってくれました。これはファインプレーです。
押し寄せる反董卓連合軍に対して洛陽を、禁裏を守護する禁軍。その兵権を握っている――その兵権のありかは風がつきとめたものである――皇甫嵩と風が極秘裏に会談を行った成果だ。
見事無血開城をとりつけてくれた風には流石の一言である。

「禁軍とやりあうつもりはないし、洛陽を攻めて花の都を灰塵とするつもりもないからね。
というかそんなこと間違っても起こってほしくないっての」

俺が今一番恐れているのは洛陽が戦場となり、荒廃してしまうことだ。
史実……と言っていいか分からんが、俺の知る歴史的なものでは董卓が洛陽を焼き払った。長安への遷都と併せての焦土作戦は見事の一言だ。
荒廃した洛陽の再建は曹操も諦め、許昌に帝を招くこととなった。
だが、と思うのだ。果たして董卓の焦土戦術のみでそんなにも荒廃するものか。と。
そして、反董卓連合は収穫なく洛陽を後にするのだが、それまでの戦費の回収はどうしたのだろうか、と。
ぶっちゃけ、洛陽からの略奪で補填したんじゃないかなあなんて思ったりするわけである。そりゃまあそうであっても史書には残らんさね。
歴史は勝者が作るものだから。それはいい。俺の妄想である可能性も高い、が。
既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の脱走兵と思われる奴らが略奪暴行をしているという報告も上がっている。そりゃ常備軍として給与が支払われている袁家軍とかと違って徴兵された奴らはなあ。

それはいい。そこいらへんの治安活動は手柄を必死に上げようとしていた義勇軍に任せている。単発で兵卒が起こすそんな事件に対応しきれるならばまあ、たいした求心力である。むしろ義勇軍内部からそういった不逞の輩が出ないかなあなどと思うほどだ。
そんときゃこれ幸いと処分してやるんだがね。

そんな風に暫し思考に耽溺していた俺なのだが。張郃は、にまり、と口を歪めながらとんでもないことを言ってくる。風の差配らしいのだが。マジか。
マジかぁ。

「まあ、洛陽の内実に関してはお詳しい方から聞くがよかろうと思いますな」

そして張郃の手振りでその人物を招き入れる。そして、その名前、その姿に自分の正気を疑う。背後で稟ちゃんの息をのむ音に辛うじてこれが夢ではないのだ、と思い知る。そう、張郃が招き入れたその人物―――。

「賈駆殿です」

緑の黒髪、狷介そうに見えてたまに見せる柔らかい笑顔を彩る鋭い双眸。董卓軍の軍師たる詠ちゃんその人が、そこに、いた。

◆◆◆
414 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:34:56.93 ID:z2f4tQkH0
張郃に招き入れられ、賈駆はその場に身を晒す。
突き刺すような視線は郭嘉のもの。
それによって、却って賈駆は落ち着きを取り戻す。その顔に微笑みすら浮かべられるほどに。

「――久しぶり、だな」

無表情で、なおかつ鋭い視線を寄越す郭嘉と違って紀霊の言葉には様々な思いが込められている。それを嬉しく感じてしまうのはきっと人として駄目なことなんだろうな、などと賈駆は思う。

「ええ、ほんと。
ほんとに久しぶりね、二郎……」

ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を、はたして。無味無臭に自分は発せられただろうか?
くしゃり、と刹那歪む彼の貌(かお)に自分はどう映っているのだろうか?みっともなく、荒れた顔で彼の前には立ちたくなかった。
――正直頬はこけ、目の下にはくっきりと隈が現れている。肌はかさつき、唇はひび割れて。
それを補うために慣れない化粧を今日は念入りに仕立て上げている。おつきの女官には保障されているが、佳人に囲まれている男にすれば見え透いているだろう。

漂う沈黙。それに身体の奥底から込み上げる激情に飲まれないよう、賈駆は懐より書を取り出す。

「洛陽、それと禁裏の見取り図、それに警備の配置図よ」

「な――」

絶句する紀霊と言葉を交わさずに畳み掛ける。

「洛陽の門扉を守る兵は皇甫嵩に掌握されてるわ。禁裏は言うに及ばないわね。でも、これがあればある程度渡り合えるはずよ」

その言葉に紀霊は瞑目する。
くすり、と漏れそうになる笑みを噛み殺す。思えば、目の前の青年の浮かべるこの表情が賈駆は嫌いではなかった。
自分や、配下の軍師には到底及ばないと苦笑する彼は。それでもこの表情をするたびに、自分では思いつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。そんな彼をからかい、彼と語らう時間は賈駆にとってもかけがえのないものであったはずなのだが。

だから、瞑目している彼に、問うてしまう。

「ねえ、なんで、こうなっちゃったんだろ、ね……」

それは彼女なりの、精一杯の甘えであった。
415 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:35:23.13 ID:z2f4tQkH0
それを知ってか知らずか、見開いた紀霊の目。いつものようにへらへらとしてくれたらよかったのに。
見据えた目は、真剣そのもの。
だから、甘えてしまう。いつかのように。いつものように。

「ねえ、どうしたらよかったんだろう……」

それを、俺に言うか。今になって俺に言うのか。
そんな心の叫びを感じるくらいに賈駆は紀霊と通じ合っていたのだな、などとぼんやり思う。そして、ひび割れたような、途切れ途切れの叫びに身を引き裂かれる。

「言ってくれりゃ、よかったんだよ!言ってくれれば!なんとでもしたさ!したよ!
なんとでも、したさ……」

激した、或いは悲嘆にくれる紀霊の激情に言葉を喪う。なによりその熱さに。

「言ってくれれば、なんとでもしたさ。例えば、何進に内密に打診すりゃあ、月の参内を命じたろうさ。
そうなりゃ、漢朝総出で月の捜索さ。いかに漢朝の闇が深くても、それでも何進はそれをすら制してたんだ。
奴の一言あれば、あの政治的化け物が動けば!」

その叫びは賈駆の全身を打ち据える。

「そっか。そうか……。そうだよね……」

無論、賈駆とてそれは検討した。だが、万が一を考えてできなかった。親友たる董卓の身の安全を思うが故にできなかった。それが正しいと知っていても、できなかったのだ。

「ほんと、ボクって、ほんとに、馬鹿だ……」

その結果がこれだ。

「ボクって、ほんと、馬鹿……」

顔がくしゃりと歪み、嗚咽が湧き出ようとするのを必死に抑えて言葉を継ぐ。せめて、不様は晒したくない、これ以上。
これ以上。だって。

「……執金吾の権でも月の行方は知れなかった。だから、月は、月を浚ったこの度の乱の首謀者は」

畏れ多くもかしこき禁裏に。
それこそが賈駆が自ら足を運んだ理由。せめて、自分たちを陥穽に落とし込んだ首魁くらいは間違えなく伝えたい。

「悔しい。悔しいよ、二郎。
 月も、ボクも。一生懸命だったのに。頑張ろうとしてたのに。それでもきっとボク達は世紀の謀反人。悪逆非道の佞臣ってなるのが、悔しいよ」

伝えようとしたことを伝え、やはり甘えてしまう。言わずもがなのことをそれでも言ってしまう。そんな自分を馬鹿だなあと思っても、最早止まらない。それでも。

「それでも……好きだった。ううん、好きよ、二郎。
うん。愛してる……」

閨にて、幾度も囁かれた睦言。けして返さなかった男のそれに応え、こらえきれずに双眸から溢れる涙。

「好きよ、二郎」

だから。

ボクのこと、忘れないで……
精一杯の笑みを浮かべて賈駆はその場を去る。
くしゃり、としたそれ。柔らかな、透きとおったその顔を。紀霊は生涯忘れることはないだろう。
416 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:36:19.37 ID:z2f4tQkH0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!

仮題はなんだろな
「幸福な結末と別離」

もちっとなんとかなりませんか
417 :赤ペン [sage saga]:2020/07/30(木) 12:53:53.12 ID:Y4a+Y6Th0
乙でしたー
>>410
>>誰にともなく呟いたその言葉に関羽は柳眉を逆立てる。  間違いではないのですがこの言葉はかなり強い印象を受けます(例えるならもしも二郎が呂布に挑むときに顔良をハブにしたりしたら柳眉を逆立てそうかな
○誰にともなく呟いたその言葉に関羽は諫言を以て応える。 関羽が柳眉を逆立てるような気迫で返答したら一刀がそれに苦笑で返したりできなさそうだし、そもそもご主人様相手に本気で怒れないでしょ(信頼感(笑)
>>411
>>教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全部、伝えられなかった!」 【全部】だと既に【馬家を継ぐに値するだけの武を持っている】ように聞こえますが
○教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全然、伝えられなかった!」 【教えてほしいことがたくさんあった】ので自分がまだ未熟だと思ってたようなのでこの方が良いかな?
>>馬騰さんの最期を看取ったに違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。   これだと(多分)看取ったはずだ、みたいな意味になるので
○馬騰さんの最期を看取った事には違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。 下手人な事には違いないけど、みたいな意味で言うならこの方が良いと思います
>>伝えられる言葉。最期の言葉。                この前の文からするとこれ(馬家の天幕内で)沈黙、(その場にいた張遼から)伝えられる言葉になりそうなので
○一刀と共に張遼のもとを訪ねる。伝えられる言葉。最期の言葉。 どう書くかは置いておいて、張遼に会いに行く描写を入れた方が良いと思います
>>412
>>「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。霞には思う所がないわけじゃない。  待って、ちょっと待とうか?君そんなにあっさりと許した感出すとか本当にどうしよう
○「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。張遼には思う所がないわけじゃない。 上で「張遼は絶対に許さない」とか言ってたのにもう真名呼びとかもう少しあるだろ?まさか張遼も義勇軍の大将の前で董卓の真実を語るわけないから何故そうしたのかまで話してないだろうし…えっ話したの?(そんなに口が軽いなら)裏切る前に馬騰さんに話して?どうぞ(馬騰→何進の直通ルートを横目に
>>413
>>俺は張郃が持ち帰った報に内心胸をなでおろしていた。 まあ実際にそういう動作をすることもありますが慣用句なので
○俺は張郃が持ち帰った報に胸をなでおろしていた。   【内心】を入れなくても問題ないと思います
>>既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の脱走兵と思われる奴らが略奪暴行をしているという報告も上がっている。  間違い?間違いじゃない?勝ってる側で糧食は袁家が持ってる諸侯軍から脱走兵って…中抜きされて食うや食わずなんて袁家が許さんだろうし
○既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の兵と思われる奴らが隠れて略奪暴行をしているという報告も上がっている。 そのあと何食わぬ顔で戻ってくるまでがセットで、な気がしますが
>>414
>>ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を、はたして。無味無臭に自分は発せられただろうか? 間違いではないですが
○ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を。はたして、無味無臭に自分は発せられただろうか? 【果たして】は【発せられただろうか】にかかりますのでこの方が良いと思います
>>それでもこの表情をするたびに、自分では思いつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。  ちょっとひと手間
○それでもこの表情をするたびに、自分では思いもつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。 まあ現代人の持つ視点とかがあるからねえ

まあここまでなるとは思ってなかったにしろ…詠ちゃんの未来予想図はどういうものだったんだろう、とは思うね
万が一を恐れて自分だけでなんとかしようとしてたけどそんなことをすれば反董卓連合が組まれるだろうとは思ってただろうしそうなれば信頼できる戦力を外に向けなきゃいけないことも分かってただろうに
洛陽で袁家を襲うときにネームドを派遣しなかったとか、せめても言い含めなかったこととか流されるだけだったから仕方ないっちゃないんだが

天の御使い?あ〜はいはい、すごいね。みんなハッピーにまいしんしてるね
418 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/30(木) 22:08:45.08 ID:EBuKRdwr0
>>417
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
うむ。今回多いな。精進せんといかんね。
しかしお盆に間に合うかなあ。割とギリギリのスケジュールだなあと思ったり。

>まあここまでなるとは思ってなかったにしろ…詠ちゃんの未来予想図はどういうものだったんだろう、とは思うね
それな。
いやほんと、気の毒でしかないですが、目の前のことに一生懸命です
そしてもっと言うと、大戦略とかは彼女の不得手なとこじゃないかなって

>万が一を恐れて自分だけでなんとかしようとしてたけどそんなことをすれば反董卓連合が組まれるだろうとは思ってただろうしそうなれば信頼できる戦力を外に向けなきゃいけないことも分かってただろうに
ここで二郎ちゃんに泣きついてたらねえという董家√
6レスくらいでハッピーエンドですね(確信)

>天の御使い?あ〜はいはい、すごいね。みんなハッピーにまいしんしてるね
猪突猛進dす

がんばる
419 :赤ペン [sage saga]:2020/07/31(金) 11:06:04.36 ID:ZXvRgiRN0
まあねえ、所詮はって言い方もアレだけど馬家の下にいた董家の軍師だったからねえ
戦術レベル、うまくいけば戦略レベルまで考えられるとしても国規模の大戦略レベルで考えられるかっていうと、ね
言ってしまえば全国展開してる大企業の一地方の重役レベルがいきなり本社のトップになったようなものだからね…地方レベルで考えても失敗するのは確定的に明らか

さて、天の御使いについての感想があまりにも雑だった気もするからもう少し書いてみるか
今回の行動はなにも間違ってないし考え方もとても正しいと思うよ、結果も考えうる中で最良と言ってもいいと思うし素直に凄いと思うよ?
前提が間違ってるはずなのに結果が正解になるという異常性があることだけで…そもそもなんで彼女は一人で鬱屈としてて、その状態で一刀と会おうと思ったのさ
親の敵を討って落ち着いたら喪失感が、とかでもなく。そんな状態の姉に対して妹が気を紛らわせようとするでもなく。こんな精神状態だから仕事じゃとじゃないなら一人にしてくれとお付きの兵に追い返させるでもなく。会うからにはと空元気でも虚勢でも張ることもなく弱弱しい姿を見せて。
どう考えても弱ってるから慰めてほしいというアッピールですね、本当にありがとうございました。
420 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/03(月) 06:24:47.78 ID:3UJ9GBCK0
>>419
>まあねえ、所詮はって言い方もアレだけど馬家の下にいた董家の軍師だったからねえ
州を回すくらいまではともかく流石に国家はね。
経験積めばまた別だったでしょうけど

>今回の行動はなにも間違ってないし考え方もとても正しいと思うよ、結果も考えうる中で最良と言ってもいいと思うし素直に凄いと思うよ?
からの
>前提が間違ってるはずなのに結果が正解になるという異常性があることだけで…
上げて落とす!お見事w

>どう考えても弱ってるから慰めてほしいというアッピールですね、本当にありがとうございました。
これには納得です。
なるほどなあ。。。
421 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:00:01.30 ID:o17giggl0
「愛紗。お疲れ様」

北郷一刀は帰ってきた関羽をねぎらう。彼女は先ほどまで近隣の村落を巡り治安活動に励んできたのである。

「いえ、どうということはありません」

関羽の言は誇張でもなんでもない。あちこちと転戦しているのではあるが疲労の影すらなく平然としている。
いや、むしろ兵卒の群れに関羽という豪傑を宛てるというのが贅沢な話であろう。

「しかし、大忙し、だなあ」

彼の言に偽りはない。ここ最近――虎牢関が陥落し、洛陽まであと数日というところまできての足止め。それから劉備率いる義勇軍は東奔西走している。それまでの閑(ひま)さが嘘のように。

「略奪、暴行。ひどいものです」

関羽は吐き捨てる。彼女の言は嘘ではない。後方にいた諸侯軍が合流してこの方、治安や軍規は乱れる一方なのだ。
そんな彼女に気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。

「ご安心ください。彼奴等の性根を叩きなおしてやりましたが……それだけです。命までは奪っておりませんし、致命的な怪我も負わせてはおりません」

数日悶絶する打撲くらいのものだ。骨を折ったりまでは及んでいない。言って聞かない相手にその鉄拳を振るうことに関羽は躊躇しなかった。切り捨ててしまいたいところではあったのだが、主たる劉備や、その軍師たる諸葛亮からも人死には避けるように言明されている。
関羽とて諸侯軍との関係を決定的に悪いようにしたい訳ではない。
例え正義がこちらにあろうとも、人死にが出てしまえばそれを口実に自分たちは不味い立場になるかもしれない。後ろ盾なぞない自分たちなのだ。
故に激発する可能性のある張飛は劉備や北郷一刀という安全弁から離すことは出来ない。
故に関羽のみが劉備一行と離れて行動しているのだが、それが自らに対する信頼の証であると関羽は理解している。
故に、だからこそ軽率なことはできない。例え目の前でどれだけの非道が行われていても、鉄の意志で関羽は激発をすることなく。だが、それでもその憤りは消えることはないのだ。

「どうして、このようなことに……」

関羽には理解できない。どうして同じ漢朝の民にあのようなことができるのか、と。

「――諸侯軍は常備軍ではありません。それが全てです」

静かに諸葛亮は応える。

「――っ。どういうことだ、朱里」

北郷一刀はだから、問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。その理由を彼は知らずにはいられない。

「諸侯軍の多くは徴兵された兵です。故に給与は支払われません」

反董卓連合。しかして完全に常備軍なのは袁家くらいのもの。いや、輜重に至るまでにそうである袁家がおかしいのだ。
つまり、袁家軍は真に戦うための集団。戦うが生業。よくもそのような集団を限界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。

「だったら!さっさと洛陽に入るべきだろう!」

諸葛亮の言葉を受けて北郷一刀は苛立ちを覚える。どうしてこのようなところで足踏みをするのかと。

「おそらく、ですがそのための交渉をしているのではないかと」

未だ洛陽には禁軍がある。そして禁軍との交戦は袁家軍としては何としても避けたいはず。

「此度の反董卓連合。袁家は極めて慎重にその歩を進めています。ええ。持っている影響力からすれば臆病と言っていいほどに……。
あくまで漢朝の臣として。けしてその矩を越えぬよう。越えてはいないと示しながら手を打っています」

いっそ迂遠なほどである。迂闊と言ってもいいかもしれない。
極端な話ではあるが、袁家単独でも洛陽に迫ることは可能であったろうと諸葛亮は思うし、鳳統も同意している。極めて高度に鍛えられた常備軍と、何より攻城兵器群だ。かつて思った通り、事あらば洛陽、とは言わずとも攻城戦を想定していたとしか思えない。
422 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:00:27.20 ID:o17giggl0
「じゃあ、あの、何進が下したという勅も本物だって朱里は思ってるのか?」

時系列を考えればあからさまに怪しい勅であるのだが。

「はい。極めて怪しいと言わざるを得ませんが、真であると思われます。
あの、紀霊将軍は極めて遵法意識が高いように思われます。
ここで彼が手配したならばそうなのでしょう」

諸葛亮としては、その勅が正規の手続きにより下されたとは考え辛いと思っている。だが、何らかの抜け道によりもたらされたのかもしれない。その仮説も捨てきれない。

「うーん。あれで、やることはきちんとやってるってことか……」

北郷一刀は呟く。好きか嫌いかと言えば嫌いな相手である。
が、やっていることは確かなのだな、というのは認めざるをえない。そしてそれは諸葛亮も大いに頷くところである。

「はい。紀霊将軍。恋さんと立ち会ったような武勇伝には事欠きませんが、真に評価すべきはその卓越した政治力ではないかと」

そう考えるとその手腕は恐るべきものである。
彼が武家筆頭となってから袁胤という不穏分子を除き、袁術という不和の種になりかねない人物を見事に駒として活かしている。
まさか入内させるとは。
袁家の威光はこれまで以上に留まることはないであろう。このままでは、袁家にあらんずば人に非(あら)ずというほどに権勢を誇ることすらありえるだろう。

「なるほどなあ。そんなのに董家軍みんなの命を乞う訳か。なかなか大変だ……」

苦笑する北郷一刀に関羽と諸葛亮は肩に入っていた力が抜けるような感覚を覚える。
見据える目標は困難。それでも気負わずに前を向く彼の言葉に決意を新たにするのだった。

◆◆◆
423 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:01:02.52 ID:o17giggl0

詠ちゃんが去ってから数日。洛陽に進駐するスケジュールは皇甫嵩とやりとりし、あらかた固まってきた。

「明後日だ。明後日。日輪が中天に差し掛かるころに洛陽に入る。そう諸侯軍に伝えろ」

そして、けりを、つけよう。

「諸侯軍には前祝として酒を配れ。秘蔵の火酒、全部配って構わん。ありったけを配れ」

そして。

「張郃。配下から選りすぐりをそうだな。百ほど選んどけ」

俺の言葉に張郃はニヤリ、と愉快そうに口を歪める。正しく俺の意図を汲んでくれたようだ。

「ほう。張家からということでよろしいのか?髑髏の面を集めなさるか。出立は?」

「払暁前。もっと言うと、一番鶏の鳴く前」

俺の言葉に稟ちゃんさんが問うてくる。

「それで、よろしいのですか。これまでの名声を地に落とされますか」

幾度か話し合ったことではあるのだが、それでも問うてくる。

「くどい。もう決めたことさ」

別に俺が手を下す必要はないというのはその通りだ。でも、さ。
更に言い募ろうとする稟ちゃんをどこか可笑しげに張郃は眺める。それに構わずに俺は言葉を続ける。

「殴られっぱなしは性に合わんからな。というよりだ。袁家は武家よ。
舐められたままでいられるかよ。このまま矛を収められるものかよ。
――玉無しどもと同じ空気を吸うのもこれまでだ」

そして。

「これは洛陽にて散った者たちの弔い合戦でもある。袁家に仇なすということの意味を教育してやろうじゃあないか」

なに、禁軍とは話が付いている。後宮に残っている男は宦官のみ。ちょっとしたお掃除。それだけのこと。
宦官の誰が悪くて誰がもっと悪いなんて知る術もないならばまとめてポイするのが合理的な発想というものさ。

「最優先は弘農王……いやさ正当なる皇帝陛下劉弁様の身柄。そして宦官は殲滅だ」

「降伏か、死か、ということですかな?」

「違うね。逃げる奴は宦官だ。
降伏する奴は狡猾な宦官だ。
抵抗するのは訓練された宦官だ。
悉(ことごと)く、殺せ。宦官は悪だ。ゆえに鏖(みなごろし)だ」

悪、即、斬。それを体現するだけのこと。

「承知した。なに。禁裏にて血の雨を降らすことに臆するようなものはおりません」

汚れ仕事は張家の誉。その判断はこの上なく正しいと言わんばかりに、恭しく張郃は一礼し、その身を闇に同化させる。
424 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:01:34.86 ID:o17giggl0
「何も二郎殿が手を汚すことはないでしょうに」

苦い声に苦笑する。

「怨将軍とか、英雄とか、そういうのは、いいのさ。
もとより身の丈に合ってなかったしな。だから、いいのさ。いいんだよ」

それに。

「そろそろ路線変更しようかなと思ってたとこだ。
そういうのは、もっとちゃんとした英雄が背負った方がボロが出ない。そして袁家、いやさ紀家には正真正銘の英傑がいるし」

一騎当千、趙子龍。

「天下にその名を轟かせるのは星の方が似つかわしい。そうだろう?」

「――貴方は!」

尚も言葉を重ねようとする稟ちゃんさん。
だが刹那の感情の爆発。その後に紡がれた言葉は別方向からのアプローチであった。

「では、譲られたその英雄の座。星はどう思うか。そして十全に槍を振るえるとお思いですか」

「う……」

流石である。そうきましたか。そして困る。
つまり宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。そこはまあ、怨将軍だから許してほしいな。
とか愚にもつかないことを考えていたのだが、思わぬところから助け舟が出た。ようそろ。

「稟よ。主をそう苛めるものではない。主には、いやさ男には譲れぬ思いがあるものだ」

そして助け舟を出してくれたのは星でした。いやなんで君ここにいるのん。

「ふ。そう不可思議な顔をすることもないでしょうに。まあ、種明かしをすると簡単ですがな。張郃どのから聞いたからですな。風からの伝言通り護衛を兼ねて控えさせていただいただけのこと。
まあ、主には言いたいこともあるのですが」

それでも、と。ニヤリ、と。

「天下一を目指すというのはこの身が発した志。そのために主はその身を挺してまでも飛将軍と渡り合う機会を作ってくださった。
――もっとも、それでも。それでも討ち取れなかったわが身には忸怩たる思いがある」

暫し視線を地にやり、改めてこちらを見やる。

「紀家軍の指揮、承りましたとも。
下駄をはかせていただいたとは言え、一騎当千のこの身。けして禁裏、いやさ洛陽に余人を近づけませぬとも」

「……すまんな。星」

「何をおっしゃるか。嬉しいのです。
主に受けた恩は計り知れない。ようやく。
ようやくこの身で、この武で返すことができるのです。喜んで果たしましょうとも。
造られた英雄大いに結構。
もとより流浪の、一介の風来坊のこの身。望外の栄光。
見事果たしてみせましょうとも」

そして。

「それに主よ。それがしが聞きたいのはそのような謝罪の言葉ではない。感謝を、鼓舞をこそほしいものです。
と、女からここまで言わせる御身は相当に罪作りですぞ?」

艶然と笑む星。強張っていた思考が動き出す。そうだな。悲壮ぶるのは俺らしくない。
きっとね。

「星、ありがとう。そして何人たりとも洛陽に立ち入らせるな。
――頼りにしてるよ」

「承った。なに、はねっかえりを押さえるだけの簡単なお仕事だろう?」

不敵で無敵。一騎当千な星に見送るしかない俺であった。
あ、微かに。微かに苦笑する稟ちゃんさんを見れたのもすごい収穫だなとかなんとか。

うん、ありがとな二人とも。

それはそれとして。

けじめはつけんとな。

まあ、地雷原での綱渡りではあるのだが、ね。

後始末が、はじまる。
425 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:02:01.65 ID:o17giggl0
寝落ちしておりました

ここまですー感想とかくだしあー

今のところ無題でごんす
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/05(水) 14:03:00.79 ID:1Cc5hk/D0
面白いからよし
427 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/06(木) 12:39:47.66 ID:C090nCv+0
>>426
ありがとうごぜえやす
えっへっへ

それはともかく、お盆には間に合いませんでしたね。
前後編に分けるしかないにゃー
428 :赤ペン [sage saga]:2020/08/06(木) 14:12:30.22 ID:fAoB5U7T0
乙でしたー
>>421
>>そんな彼女に気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。 これだと一刀が関羽に気遣うような視線が向けられてるように読めますね【(一刀が)そんな彼女に〜】
○そんな彼女は気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。 この後の言葉からすると【そんな彼女は(一刀の)気遣う様な〜】だと思うのでこうですね
>>故に、だからこそ軽率なことはできない。 意味が重複してますね
○だからこそ軽率なことはできない。    意味を重ねるなら【だから……だからこそ】とかかな、と思いますけどそうする程でもないでしょ
>>静かに諸葛亮は応える。 関羽の「どうして」と言う問いに対するものなので
○静かに諸葛亮は答える。 答えを教えるということでこちらですね
>>北郷一刀はだから、問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。その理由を彼は知らずにはいられない。 これだと【だから】の掛かり先が分かりづらいので
○北郷一刀は問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。ならば、その理由を彼は知らずにはいられない。 でどうでしょう
>>よくもそのような集団を限界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。 あ?何が限界だって?(チンピラ風
○よくもそのような集団を現界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。 なお最近の造語なので【設立せしめた】の方が良いかな?むしろ袁家の凄さはそれを維持してることだと思うけど
>>「おそらく、ですがそのための交渉をしているのではないかと」 ちょっと【おそらく】の意味が伝わりづらいので
○「おそらくですが、そのための交渉をしているのではないかと」 もしくは【「おそらく……ですがそのための】勿体ぶるというか思索してて考えをまとめる感じならこうですね
>>422
>>袁家の威光はこれまで以上に留まることはないであろう。 間違いではないですが【これまで以上に留まる】と【ことはない】で分けて読むと違和感が出てしまうので
○袁家の威光はこれまで以上に中華に響き渡るであろう。  書いて思ってけど威光って響くのか?【包み込む】?【照り付ける】?【示される】?いっそ
○袁家の威光はこれまで以上のものとなるであろう。    がすっきりしてて良いかな?
>>424
>>つまり宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。    間違いではないですがこれだと前の文章に【つまり】がかかってるように読めて《?》となるので
○つまるところ宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。 趙雲が槍を十全うんぬんかんぬんにかかると彼女も宦官皆殺しに関わってしまうけどそうじゃないでしょうし
>>下駄をはかせていただいたとは言え、 下駄って日本の物っぽいんだよなあ…恋姫世界ならありそうだけど…と言うか星の履いてるのが下駄っぽいっちゃぽいんだよなあ
○嵩上げいただいたとは言え、     もしくは【水増しいただいた】とか?まあ気にしなくても良い事か

>>切り捨ててしまいたいところではあったのだが、 劉備に最も近い位置にいるはずの彼女の思考回路が…お前、何で劉備が止めるのか分かってないだろ。あくまでも劉備が止めるからやってないだけだろ
>>北郷一刀は呟く。好きか嫌いかと言えば嫌いな相手である。 一応聞くがなんで嫌いなん?自分の物(趙雲)に手を出されたから?義勇軍に糧食しか提供しないから?董卓を助けようとしないから?
【凡人、終わり方を整える】と言うかこの場合は結び方?締め方?それにしても張コウ君が愉しそうだわw
喧嘩なんてのは始めようと思えば結構簡単に始められるけど終わらせようとするといろいろと大変なのよね…それが戦争になったらなおのこと
そういや食い詰め略奪して痛めつけられた諸侯軍の一兵卒はその後どうしたんだろ…もともとの諸侯のところに届けたのか袁家に届けたのか自分たちのもとに吸収したのか…
429 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/08(土) 09:47:18.26 ID:UDFWiA2i0
>>428
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
うほう。

>一応聞くがなんで嫌いなん?自分の物(趙雲)に手を出されたから?義勇軍に糧食しか提供しないから?董卓を助けようとしないから?
熱いマジレスありがとうございますw
それもう星ちゃんとの一件から積み上がっている奴でしょうねw

>喧嘩なんてのは始めようと思えば結構簡単に始められるけど終わらせようとするといろいろと大変なのよね…それが戦争になったらなおのこと
ほんとこれです。
詠ちゃんはもう、このために頑張ってるし、月ちゃんはそれを分かってるから死ぬわけにはいかないのですよね

>そういや食い詰め略奪して痛めつけられた諸侯軍の一兵卒はその後どうしたんだろ…もともとの諸侯のところに届けたのか袁家に届けたのか自分たちのもとに吸収したのか…
大体は送り届けて、いくらかは脱走かな
治安が・・・
430 :赤ペン [sage saga]:2020/08/08(土) 09:57:26.88 ID:9ezm9d5b0
高々義勇軍に「お前のところの兵士がチョーシこいて略奪してたから締めといたわwちゃんと見とけよなw」と雑兵を持ってこられた諸侯軍が何を思ったことやら(隙あらばヘイト稼ぎ
431 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/08(土) 10:07:21.45 ID:UDFWiA2i0
>>430
確かにw

「ぐぬぬ」

状況を考えると暗に命令されてた可能性も高いですね。つか、そうだろうなあ。
これはヘイトが充填されますよ!やったぜ!
432 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/08/14(金) 12:17:05.49 ID:3kBKbdp20
乙です。残暑お見舞い申し上げます。

うーわー。とうとう血の雨が豪雨のように降るのかぁ。自業自得とはいえ、個人的にはねぇ。でも必要だから、必要だから。
で、こらパシリ。
嫌いなら帰れや。温い異分子が。消毒用アルコールと純粋次亜塩素と界面活性剤で消毒すんぞコラ。
二郎さんは「どうしてこうなった」を知っている側だからお前が董卓軍の助命嘆願しなくても最善をつくすだろうよ(一応オブラート包装)
ただけじめをつける、筋を通す。この関係で何らかの処分はするだろうけど。
第一、使える人材を殺すなんて愚はぜったいやらない。ハーレムに引き込まれるヒロインは絶対出てくるけど(断言)
だからコラパシリ。黙って消えとけや。コラ。
つうか関羽さんを報いてあげて。劉備込みでも仕方ないからなんか報いてあげて。
おーいチョウコウ君。必殺仕事人の出番だぜい。思い切り目立ってちょうだいよ(応援)つうか大活劇期待。超々期待。

二郎さんを本気で怒らせてしまったようですね。まぁ虎の尾を力いっぱい踏みにじって、逆鱗思い切り殴りつけりゃ、こうなるわな。
つうか趙雲さんが指揮権委譲されること自体紀家軍内部では既定事項のようなような気がするんですが。
幕僚幹部の誰かが文句言ってたとか?
433 :赤ペン [sage saga]:2020/08/14(金) 21:34:20.12 ID:rEb+M6s40
強いて言えば紀霊がそんな簡単に閑職に回されたっていう結果が残るのが問題かな?

(えっ!あのPをPだからって理由でひそかにPしてしかもPをPにPしたって?そりゃ責任取るよね)…一応裏ワザというか力業使いまくればあんなことやこんなこともできるけど一ノ瀬さんがどうするのかを邪魔したくないのでP音多めで
434 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/15(土) 07:22:28.12 ID:Bzh9QCmS0
>>432
どもです。
お元気そうでなによりです。

>うーわー。とうとう血の雨が豪雨のように降るのかぁ。自業自得とはいえ、個人的にはねぇ。でも必要だから、必要だから。
屍山血河。まではいかないはず、はずです。

>ただけじめをつける、筋を通す。この関係で何らかの処分はするだろうけど。
はい。とだけ。

>二郎さんを本気で怒らせてしまったようですね。まぁ虎の尾を力いっぱい踏みにじって、逆鱗思い切り殴りつけりゃ、こうなるわな。
二郎ちゃんには辛い展開が続きますが仕方ないっすね。

>つうか趙雲さんが指揮権委譲されること自体紀家軍内部では既定事項のようなような気がするんですが。
まあ、突然あっちこっちほっつき歩いたり、放浪したりするので紀家軍的にはいつものことじゃないかとw

>>433

>強いて言えば紀霊がそんな簡単に閑職に回されたっていう結果が残るのが問題かな?
か、閑職とか。そんな二郎ちゃんのご希望ルートが通るわけがないですw
あっちの更新が一段落しましたら続きやりますので。
435 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/15(土) 17:18:40.87 ID:Bzh9QCmS0
やってもた
書いてたのが消えた(本日1度目累計数えきれない)
ぴえん

キャストリアが来てくれたら(書き込みはここで終わっている)
436 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/08/19(水) 11:25:14.85 ID:ETPb6Xi90
なんとなく浮かんだ。

タイトル案 「収束への助走」

うーん……うーん……
437 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/19(水) 20:32:32.50 ID:cFjFIKet0
>>436
>タイトル案 「収束への助走」
ほむん。刺さる。ちょっと検討させてくださいい。
何案あってもいいので、思いつきレベルでも結構なので投げてみて下しあ

あ、麹義さんはこの章のために南皮残留でした。
ここが終わったら完全フリー素材となりますのでよろしくお願いします。
幸せにしてあげてくださいませ。

田豊師匠も同様ですが、どっかで私塾兼道場とか立ち上げてそうですねえ。。。
438 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:30:13.95 ID:6LwOn5rb0
「なるほど、明日、か」

劉協は嘆息する。
至尊の座に座るのも明日が最後と思えば、ため息の一つも漏れようというものである。
とはいえ、偽帝として討たれるという心配はない。袁家からは内々に陳留王として政務に携わって欲しいという打診を受けている。
まあ、劉弁は愚鈍にして惰弱。そして洛陽に攻め寄せたという後ろめたさもあるのであろう。皇族、それも優秀な皇族が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。そしてそれは目の前で持参した美酒を楽しむ男にもあてはまる。
皇甫嵩。清流派の首魁にして禁軍を掌握する重要人物である。彼が禁軍を握っているからこそ、朝廷は平穏を保っていると言ってもいい。

「ま、仕方ないね。想定内の事態ではあるし、ね」

軽く肩をすくめる皇甫嵩。彼も袁家より、内々に三公の座を打診されている。状況が落ち着けば、現状よりもその影響力は大きくなるだろう。

悠然と酒杯を干す。その所作に劉協は湧き起こっていた焦燥を噛み殺す。まだ、皇甫嵩と遣り合うには早い。だが。

「陳留王たるわが身、宦官、そして清流派の首魁たる貴殿、か。
天下三分とはよく言ったものだな」

時さえあれば、皇族たる自分が敵対する二者を圧倒するのは自明の理。劉協にとって時間は味方なのだ。
それを思えば喉を潤す酒精が甘露に思える。いや、実際に銘酒なのであろうが。

「そうだね、僕もそう思う。なるほど、天下を三分にすれば即ち三竦み。容易に動けるものではない。見事、さ。誰が考えたかは知らないけどね」

ぐびり、と皇甫嵩は杯を干して笑う。

「でもね、その一角。宦官は明日未明に誅されるよ」

「なに……?
 なん、だって……?」

劉協は言葉を喪う。
何を言っているのだ皇甫嵩は。そんなことができるものか。

「どうやら袁家は宦官という存在を許さないみたいだねえ。いやぁ、怖い怖い」

くすくすとした笑みを深める皇甫嵩。

「き、聞いてないぞ!朕は聞いてないぞ!皇甫嵩!」

「そりゃそうさ、言ってないからね。そして朕とか言うなよ見苦しい。
君は結局偽帝さ。それを認めるのがそんなに嫌かい?」

劉協は言葉を失う。これまでそのような無礼な言葉を聞いたことはない。なんとも不敬か!

「貴様――あ、ぐ、ぶぼ?」

ごぽり、と湧き出る真紅の塊に劉協は言葉を喪う。物理的に。
これは、なんだ。何故、どうして。どうして赤く、染まっているのか。

「まあ、そういうことさ。天下を分ける必要はない。乱れたその後は余計にね。だから、ゆっくり休んでくれたまえ。そして天下はきちんと僕が預かるからさ」

くそ、総取りかと劉協は血を吐きながら目の前で悠然としている男を睨む。せめて、呪われてあれ、と。

「ふふ、負け犬が吠えることもできずに倒れ伏すのを見るのは中々いいねえ。それも特等席ならなおのこと、ね」

宦官勢力が撃滅されたならば敵対するは劉協。そしてあの何進が恐れた才能とまともに組み合うほど皇甫嵩は愚かではない。そして、天下三分。そのうち二つが失われたならば。

「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物へと転がり込むのさ」

計画通り、とばかりにその秀麗な顔を歪めて皇甫嵩は笑う。

「ただまあ、駒が足りないというのがねえ」

文武共に配下の人材については物足りないという言葉では全く足りない。
清流派、とは言え実務に耐えうる人材の少ないことよ。
ことに軍を率いることのできる人材なぞ皆無に等しい。

「いいさ、当てはあるしね」

細工は流々。皇甫嵩はにまりと笑い、室を後にする。
残された劉協は虚空を睨み掴もうとして、無念そのものであった。
439 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:32:31.58 ID:6LwOn5rb0
◆◆◆

「陛下、お目覚め下さい。
 陛下……」

周泰は穏やかでいながら力強く声をかける。それは目指す相手にしか伝わらないという特殊な発声方法である。そして目の前の、健やかな眠りを貪る少年は不承不承、といった風に応える。

「ううん、なんだい。もう朝なのかい?もうちょっと寝かせてくれよ、まだ暗いじゃないか」

それに、と。
自分は陛下と呼ばれる立場にないから起きる筋合いはないかもね、と軽く主張すると同時に寝息を立て始める。

「ど、どうしましょう……」

禁裏の奥の奥、そして裏の裏。後宮より更に奥にある離れの一室。そこまでの道のり、その厳戒を潜り抜けるよりもこの、今の状況をどうしていいか分からずにあたふたと狼狽(うろた)える。

「なんだ、僕を殺しにきたのじゃあないのか」

不意に目前で寝息を立てていた少年――劉弁――は、のんびりとした声を上げる。

「お、起きていらっしゃったのですか!」

驚くのは周泰である。彼女からしても完全に寝入っていたはず。それが擬態ならば驚くべきものである。

「ううん、そうだね。そうだなあ、寝ていたよ。この上なく安らかにね」

面倒くさげに劉弁はぼそり、と。
曰く、何進が誅されてからこの方、いつ殺されてもおかしくないような空気。その中で過ごしていたというのだ。故に、安らかに眠れたのだ。それら不埒な塵芥を周泰が人知れず駆逐したのを――夜が明けて死体が発見されるまでは露見しないはずであるのだが――この少年はなんとなく感じ取っていたのであろう。
いわば小動物の生存本能にも近しいそれ。だが、それを身に付けてしまうというのがどういう状況下であるのだろうか。
周泰は発する言葉を失ってしまう。

「で、お姉さん。僕は用無しになって殺されるってわけじゃないんだよね?」

その声に周泰は自失していた意識を引き戻して慌てて応える。

「は、はい!勿論です!陛下の御身を守護するべく使わされて参りました。
 陛下のご宸襟を騒がせ……」

「なら、それでいいよ。それで、僕はどこかに逃げるのかい?」

「いえ、外に出るのは却って危険です。臣がこの身に代えても御身を守護奉ります」

そうかい、と気安く劉弁は頷き。

「なら、もう少し寝かせてもらうよ。どうにも最近は寝たりなくっていけないからね。
 じゃあね、おやすみ」

言い終えるとほぼ同時に湧き起こる健やかな寝息に周泰は目を白黒させる。

周泰は知らない。これが劉弁なりの保身術。それは何進に仕込まれた保身術。
徹底的に無能で、無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷をただ、浮揚することで生き残る保身術。それを遣り切る、ある意味での強さ。

そして、日が中天に昇り、すべてが終わり。それでも劉弁は呑気に惰眠を貪っていたのである。

そう、惨劇、阿鼻叫喚。これから起こるそれらを全て認識せず。劉弁はただひたすらに眠るのだった。
440 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:34:16.02 ID:6LwOn5rb0
はい、再開です。頑張ります。
本日ここまですー感想とかくだしあー

流血の序章
血の前日


タイトル案はこんなとこです
いいの欲しいっす。。。
441 :赤ペン [sage saga]:2020/08/27(木) 18:25:24.82 ID:3LtJcBy00
乙でしたー
>>438
>>袁家からは内々に陳留王として政務に携わって欲しいという打診を受けている。 【〜して欲しい】は例えば【そのご飯を食べて欲しい】なら違和感が分かりやすいかな
○袁家からは内々に陳留王として政務に携わってほしいという打診を受けている。 形容詞の【欲しい】と補助形容詞の【〜てほしい】の違いらしいですね
>>皇族、それも優秀な皇族が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。  間違いではないですが好みの問題で
○皇族――それも優秀な――が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。 大事な事なので2回言ったのかもしれませんが>>皇族
>>これまでそのような無礼な言葉を聞いたことはない。なんとも不敬か! 言葉は聞いたことあるよね…上偽帝とは呼ばれないって安堵してたし
○これまでそのような無礼な物言いを許したことはない。なんと不敬な! 最後は【何たる不敬か!】の方が良いかな?
>>「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物へと転がり込むのさ」 この自尊心の塊みたいな男なら【転がり込む】は使わない気がします
○「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物の下へ収まるのさ」  これを取らぬ狸の三日天下と言います…イメージは偉そうな椅子に足組んで座って掌で玉璽とか転がしてる感じで
>>439
>>だが、それを身に付けてしまうというのがどういう状況下であるのだろうか。 接続詞に違和感が
○だが、それを身に付けてしまうというのはどういう状況下であるのだろうか。 それとも【それを身に付けてしまうというのがどれほど異常な状況であるのか。】とかかな?
>>言い終えるとほぼ同時に湧き起こる健やかな寝息に周泰は目を白黒させる。 【沸き起こる】って圧力が強くて抑えられないような印象があってちょっと違和感が
○言い終えるとほぼ同時に健やかな寝息を立ち始め、周泰は目を白黒させる。 もしくは【ほぼ同時に漏れだした健やかな寝息】とかどうでしょう…前者は「グーグー」後者は「すやすや」のイメージです
>>これが劉弁なりの保身術。それは何進に仕込まれた保身術。  【保身術】って意味は分かるんですが調べても出てこないっぽいんで
○これが劉弁なりの自衛方法。それは何進に仕込まれた護身術。  あと【保身】って身体よりも権力とかの印象が強い気がするので
>>無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷をただ、浮揚することで生き残る保身術。  【、】の位置に違和感が
○無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷を、ただ浮揚することで生き残る自己防衛。 適当に【保身】っぽいものを並べましたのでお好きな言い回しをどうぞ

それにしても皇甫嵩は袁家の思惑を潰して「じゃああなたが天下人ですね」と言われると本気で思ってるのかしら
極端なこと言えばかつてやろうとしたように袁家の人材で公職全部埋められるかもしれないのに(今回の件で袁家も人財減ってるからできないかもしれないけど)
そもそも天下三分を言い出したのが袁家でその一角を潰す袁家が他をどこまで尊重することやら
442 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/27(木) 21:15:57.14 ID:wTzeDcj70
>>441
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
再開でございます。

>これを取らぬ狸の三日天下と言います…
三日もつかな(ぼそり)

>それにしても皇甫嵩は袁家の思惑を潰して「じゃああなたが天下人ですね」と言われると本気で思ってるのかしら
その座を勝ち取ることができるということを確信していらっしゃりますなw
自分はあいつらとは違う。上手くやれるというやつです。

>極端なこと言えばかつてやろうとしたように袁家の人材で公職全部埋められるかもしれないのに(今回の件で袁家も人財減ってるからできないかもしれないけど)
それすら自分の手足として使いこなせるくらいの自信はあるかと

>そもそも天下三分を言い出したのが袁家でその一角を潰す袁家が他をどこまで尊重することやら
自分が切り捨てられるとは思わないものです
443 :赤ペン [sage saga]:2020/08/30(日) 22:51:25.34 ID:lva6FZp00
三日持つっていうかそもそもとってすらいないから…
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