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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 355 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/03(金) 22:04:59.05 ID:11bQfaHc0
- 蒼天に翻る真紅の呂旗。
右翼よりその姿を現し、眼前の敵に相対する曹家と孫家を尻目に袁家本陣に向かう。
その戦闘には万夫不当。
なに、相手にとって不足はない。
「白馬義従、出るぞ!」
手にするのは兵卒が手にするのと変わらない普通の剣。
だが、それでいい。白馬義従の強さとは、平準されたところに真髄がある。一人の武勇に引きずられる類のものではないのだ。
そして白い奔流が頸木を解かれ、疾走する。
馬家軍のように真正面からぶつかるのではなく、途中で進路を変え併走する。
ニヤリ、と口を歪ませて公孫賛は先手を取る。
「挨拶代わりだ!撃てぇ!」
騎射。白馬義従が匈奴と互角以上に渡り合う所以である。
袁家本陣に直進するため本腰を入れての対応ができないのをいいことに、と陳宮は歯噛みする。
牽制に迫れば退き、こちらが引けば迫る。なんともいやらしいことこの上ない。
そしてまた牽制に一部隊を寄せる。どうせ届かぬだろうが、矢の雨の中進むよりは遥かにマシというものだ。
だが。
「甘い!」
牽制でしかないと見るや公孫賛はその部隊に寄せ、叩き潰す。
「各個撃破、とはこういうふうにやるのさ!」
あくまで袁家本陣への吶喊を最優先するのを見越し、ゴリゴリと消耗を強いてくる。その手際は熟練と言っていい。
そしてその損害が無視できぬほどになり、陳宮は舌打ちを重ねる。
いや、白馬義従を牽制しつつも損害を最小限に保つ陳宮の用兵は褒められるべきものであろう。例え白馬義従が呂布の武威を警戒して不必要に迫ってきていなかったとしても。
だが、その圧力により着実に進路は歪められており、このままでは袁家本陣への吶喊が果たせるかは微妙。いや、正直厳しくなりつつある。
「……公孫賛、片付ける?」
静かに呂布は陳宮に問う。アレが邪魔ならばアレを除けばいいのではないか、と。
一瞬その言葉にうなずきそうになりながらも陳宮は首を横に振る。
「いえ、いけませんぞ。それこそ彼奴らの思うつぼなのです。
……恋殿。行ってください。そして、袁紹の首級を」
その見切りこそ陳宮の真骨頂であったかもしれない。
自分たちが呂布の足手まといであると、ある意味軍師としては屈辱的なそれを認めて手元の戦力をもっとも効率的に運用する術を選ぶ。
「なに、公孫なぞ有象無象もいいとこなのですぞ。まともにやりあえば敵ではないのです!」
ちっちゃい体躯を精一杯踏ん反り返して陳宮は呂布を解き放つ。
軍団の長という枷を解く。解き放つ。最強を。
「……わかった。行ってくる」
そして呂布は単騎で進路を修正する。勿論立ちふさがる敵なぞいないも同然。
目標たる袁家本陣に狙いを定めて呂布は単騎で突撃を敢行するのだ。
「ちい、呂布には構うな!陣形を崩すな!」
流石の公孫賛が狼狽える。呂布と、切り離された配下の軍。どちらに対応するか。常ならばそこに乗じて戦局をひっくり返されることもあったろう。
だが。
「大事ない。呂布単騎の突出は想定内。今は目前の敵軍に専念すべき」
韓浩の淡々とした進言が響く。全く、それほど大きい声でないというのに、痛いほどに耳に響く。不思議なこともあるものだ。
「そ、そうだな。こっからが本番だった。すまんな、狼狽(うろた)えた」
「いい。呂布はやはり埒外。アレと戦場で互角以上に渡り合う。そのことにこそ尊敬の念を覚える」
「はは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃあ、呂布がいないんだ。彼奴の武勇に備えこれまでは沈黙していたが……」
にま、と公孫賛は笑う。手控えていた接近戦を、騎兵突撃を、そして騎射を組み合わせた白馬義従の本領を見せてやろうとばかりに。
「行くぞ!白馬義従は伊達じゃない!」
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