【シャニマス】ゼンマイリピート 七草にちか
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4:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:10:48.84 ID:laNpeqI/0
にちかは足で上手くステップをとり、俺は両手をあげて海藻のように腰を左右に振った。二人でアカペラでwow wowとSHHisの一曲『Fashionable』のワンフレーズを繰り返した。
 以前、にちかの仕事がうまく行ったときに「嬉しいなら嬉しいで、それなりに表現してくださいよー」と言われ、それ以来お互いに嬉しい時は小踊りするのが決まりのようになっていた。
「ふふ、二人とも、楽しそうだね」「みっ、美琴さん!」美琴がにちかの背後から声をかけると、にちかはピタリと踊るのをやめた。流石に美琴に見られるのは恥ずかしいのか、「プロデューサーさんにどーーしても! 嬉しいから踊らないかて誘われたので、仕方なく! はい、仕方なく、もう頼まれちゃ仕方ないな〜と思ったので! ね! プロデューサーさん! ね!?」と必死に弁明している。別にそんなことを美琴は気にはしてないだろうけど。
「そうなんだ。……何かあったの、プロデューサー」
「ああ、この雑誌の——「この雑誌でSHHisについて語ってくれてるんですよ〜! もう美琴さんの魅力分かってんなーてぐらいしっかり話してくれてるんですよ! やばくないですか!?」
以下略 AAS



5:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:11:16.31 ID:laNpeqI/0
最近はにちかと美琴の仲も良いように見える。以前にはない友情というか、付き合い方が生まれていた。二人ともお互いの力量をカバーし合う仲間として、力量を認め自分の経験値になるよう切磋琢磨し合うライバルとして良い関係を築けていた。仕事も順調だ。SHHisでのロケや雑誌撮影も増え、数ヶ月後にはまだまだ小さなステージだが、ライブもある。
 そんな折、こんなにも彼女達をよく見て、良く言ってくれるインタビューがあるのは、二人のモチベーションに強く響いただろう。
 SHHisはこれからだ。ここからだ。更なる飛躍がきっとある。
 まだまだ彼女たちが目指す限り、もっと強く輝いていける! 
 
以下略 AAS



6:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:11:48.10 ID:laNpeqI/0
RRR RRR RRr...
『はい。美琴です。どうしたの、プロデューサー』
「あ、いや! レッスン、終わった頃かなと思ってさ。その、怪我とかなかったかて確認の連絡」
『そう。うん、大丈夫。私もにちかちゃんも特に何もなかったかな』
 それは何よりだ。——と言いたかったが。美琴の声がやや反響して聞こえる。まさかとは思うが。
以下略 AAS



7:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:12:38.26 ID:laNpeqI/0
RRR r...
『はい、にちかです』
「今日はお疲れ、にちか。もう家か?」
『えー、なんですか? プロデューサーさんて束縛系ですかー? プライバシーなので答えたくないんですけどー』
 おいおい、確認するて前もって伝えてただろ。
以下略 AAS



8:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:13:14.30 ID:laNpeqI/0
 朝起き、ホテルの備えテレビを付けると、関東で事故があったとニュースがあった。雨でスリップした車両が、横断歩道で信号を待つ人々に突っ込んだという悲惨な事故だった。
 ざわ。胸が萎んだ。
 嫌な予感がした。
(ここ、昨日にちかが言ってたスーパーの近くだよな)
 何度も彼女に連れられて行ったから、道路の感じをよく覚えていた。
以下略 AAS



9:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:13:51.33 ID:laNpeqI/0
愕然とした。ベッドに倒れ込み、天井を仰ぎ見ることしかできなかった。
 自分のアイドルを、心配しないプロデューサーが何処にいるのか。社長やはづきさんの言葉が理解できないわけではない。だが割り切れと言うのはあまりにも残酷ではないか。
 年甲斐もなく、わんわんと涙と声をあげて悲しみを吐き出したくなった。
「プロデューサー!? 大丈夫?」
 戸を叩く音と共に聞こえたのは夏葉の声だった。
以下略 AAS



10:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:14:44.89 ID:laNpeqI/0
『お疲れ様です。無事、イベントは終わり、放クラの皆んなを送り届けました。あれから、にちかの容態はいかがでしょうか』18:23 既読
 返事はなかった。不在だった際のメールや連絡をチェックする。
『再三のご連絡失礼します。容態が心配です。ご返事をいただけますと幸いです』20:16 既読
 返事がない。書類整理と報告書の作成。経費計算などを行った。
『書類整理を終えたので、明日の朝、時間を作り、にちかの見舞いに行きたいと思います。病院と部屋を教えていただけますでしょうか』23:27 既読
以下略 AAS



11:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:15:12.47 ID:laNpeqI/0
地下駐車場に車を停め、関係者口より手続きをする。既に社長が手回しをしてくれていたようで、思っていたより手続きはスムーズだった。
 受付を済ませ、入院病棟まで歩いていると病院特有の清潔感と薬品の匂いが鼻をついた。
 院内の空調が暑いのか、はたまた自分の熱が上がっているからか、やけに汗が出てくる。羽織っていたジャケットを脱ぎ、手に持つ。袖をまくり、ネクタイを緩めてようやく涼しさを感じた。
 入院病棟で自動扉を通ると、すぐにナースステーションがあった。朝の書類を整理しているのか、受付の前に立っても妙齢の看護師はこちらには気付いてはいなかった。
「あの……七草、にちかさんの病室は」と声をかけると、看護師はじろりと目だけを上げて、こちらを見てきた。そして、首から吊るした、受付でもらった許可証を見ると「ああ、はい。連絡にあった方ですね。今、案内させますので」と一人の看護師を呼びつけた。
以下略 AAS



12:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:15:40.72 ID:laNpeqI/0
「なん、て?」
 違和感。沈む。深く。
 手をついたにちかのベッドに、強い違和感を感じた。
 にちかの下半身を覆うベッドの掛け布団に身を乗せているのだ。そこに乗せている手のひらで感じているものが、やけに柔らかい。手が体の重みでやけに沈む。
 本来ならば、そこにあるべき質感、固さ、柔らかさが、無い。
以下略 AAS



13:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:16:09.79 ID:laNpeqI/0
何も返せなかった。自身に恨み辛みをぶつけてスッキリするならばそれが一番だと居座るつもりだったが、彼女が流した僅かな涙に、心の奥底まで自分には救えないと思い知らされたのだ。
 俺はただただ黙って、にちかに一礼をした。
 深く深く、深く。
 長く長く、長く。
 できればこのまま、贖罪のまま時が止まればと願うほどに。
以下略 AAS



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