44: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:22:37.34 ID:Sev9O2YP0
「やっと、やっと!!」
離れたところから声が聞こえた。
そこを見ると、やはり見覚えのある顔があった。
45: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:23:26.82 ID:Sev9O2YP0
暫しの間唖然としていたスタッフが我に返る。
これ以上好きにさせてはならない。そう思い、スタッフは彼女に覆い被さるように突っ込んだ。
輝子はスタッフと揉みあった。絶対に取られまいと、マイクを胸に抱えた。
やがてなかなか彼女を止められないスタッフは痺れを切らし、苛立ちのまま思い切り彼女を突き飛ばした。
彼女は足をもつれさせ、そのまま倒れる。
46: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:24:22.14 ID:Sev9O2YP0
「お前、やりやがったな。みんなを裏切ったな。可愛いお前が好きなみんなを騙して、
よくもまあこんなバカみたいな事をしでかしたよな。本当に気持ち悪い。本当に……」
『それ』は、輝子に手を伸ばし……
47: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:25:15.56 ID:Sev9O2YP0
彼女は立ち上がった。
倒れた時に打ったのか、鼻血が出ていた。
手の甲で血を拭う。当然綺麗に拭き取れる筈もなく、顔に薄く血のメイクが広がった。
彼女は、大きく息を吸った。
48: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:26:13.32 ID:Sev9O2YP0
やがて全ての力を使い果たし、崩れ落ちるように座り込んだ。
それでようやく、観客も、スタッフも、彼女のライブが終わった事を悟った。
「なあ、夏は好きか?」
49: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:27:10.00 ID:Sev9O2YP0
「なあ、私の事は好きか?」
問うような口調だったが、返事を聞く前に彼女は語り続けた。
「言われた事があるんだ。お前は気持ち悪い、メタルは気持ち悪いって」
50: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:28:37.93 ID:Sev9O2YP0
力を出し尽くし満身創痍の彼女はふらふらと控室へ歩く。
控室への扉を開こうとドアノブに手をかけた時。
ドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
なんだろう、そうぼんやりと思い足音の方向を見ると。
51: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:29:19.18 ID:Sev9O2YP0
「そうか」
「私も、メタルと、キノコが好きだ」
「輝子ちゃん……」
52: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:33:05.20 ID:Sev9O2YP0
「輝子!」
やがて一人の男が駆けつけてきた。プロデューサーだ。
「あ、し、親友……」
53: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:34:54.65 ID:Sev9O2YP0
「なあ、お前ごとき弱小プロダクションが……」
「ええ、うちは小さいプロダクションですので──」
プロデューサーはあくまで落ち着いて返す。
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