50: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:28:37.93 ID:Sev9O2YP0
力を出し尽くし満身創痍の彼女はふらふらと控室へ歩く。
控室への扉を開こうとドアノブに手をかけた時。
ドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
なんだろう、そうぼんやりと思い足音の方向を見ると。
「輝子さぁーーーーん!!」
「おッふ!!」
幸子と小梅が飛び掛かってきた。
輝子の胸元で涙目になりながら、彼女達は輝子を睨む。
その瞳は怒り、というより……
「ああいう曲が、好きなんですね」
幸子は呟いた。寂しそうな顔をしていた。
「ごめん」
「なんで言ってくれなかったんですか……」
輝子は思わず目を逸らしながら、小さく呟いた。
「言ったら、引かれると思って……」
その言葉に噛みつくように、幸子は叫んだ。
「引きますよ!引きましたよ!!でも!でも!!」
ぽろぽろと涙を零しながら言った。
「そんな事で、嫌いになったりしないのに……」
ぎゅうう、と音が聞こえるほど自身を強く抱きしめる幸子と小梅を見て、
なんだか馬鹿な事で悩んでいたのかも、なんて思えてきた。
「ごめんね、二人とも……」
輝子は口元を押さえて言った。
「だから、ちょっと力ゆるめて…は、はきそう……」
幸子はその言葉に急いで手を離したが、小梅は離れなかった、
輝子の腰あたりに顔を埋めたまま、彼女は言った。
「わ、私も、ホラー映画が好きなの……」
小さく震えながら、小梅は続ける。
「ゾンビがうじゃうじゃ出て、血が、ぶしゃーって出るスプラッタ映画が、大好き」
輝子は可愛らしい小梅の口から出る物騒な単語に少し驚いたが、
はにかみながら彼女の背中を叩いた。
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