姉がアイドルということ
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5: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:41:51.70 ID:nm7zvJuf0

 放課後、彼女は予告通りやって来た。
 やはり可愛い。こういう娘がわざわざ自分の所にやってきてくれて話ができるというのは、彼が高山紗代子の弟であることによる利点としては、ほぼ初めてのものだ。
「いいことなんてないでしょ? アイドルが姉って」
「そんなことも……」
以下略 AAS



6: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:42:35.54 ID:nm7zvJuf0
「高山君は……」
「え? 僕?」
「高山君は……お姉さんが、好き?」
 この場合の好きというのは、もちろん男女の好きの意味ではないだろう。
 あくまで姉として好きか、という意味だと思う。
以下略 AAS



7: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:43:40.94 ID:nm7zvJuf0
「そうだ。いいことあったよ、ひとつだけ」
「え? もしかして姉がアイドルで良かったこと?」
「うん。ライブとか、関係者席に呼んでもらえるんだ」
 またしばらく徳田さんは押し黙った。そして口を開く。
「行ったこと、あるんだ」
以下略 AAS



8: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:44:21.69 ID:nm7zvJuf0
「高山君は、まつりちゃんが好きなんだ」
「え?」
 誰が好きかと聞かれたので、まつり姫と答えてその理由を話したのだが、徳田さんはなぜだか不満そうに、頬を膨らましながらそう言う。
 そして教室から小走りに出て行った。
「えっと……なにか悪いこと言ったかな……」
以下略 AAS



9: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:45:13.42 ID:nm7zvJuf0

「はいほー! みんな、おはようなのです」
 劇場に徳川まつりが機嫌良く入ってくると、同僚であるアイドル達も笑顔で彼女を迎える。
「まつりさん、今日は随分と機嫌がいいみたいですな〜。これはなにかあったに違いありませんぞ〜」
「ほ、さすが美也ちゃん。実は昨日、姫はとってもいいことがあったのです」
以下略 AAS



10: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:46:18.01 ID:nm7zvJuf0

「……」
 昨日と同じく、放課後になると徳田さんは高山少年のクラスへとやって来た。
 が、特に何も言わずに黙っている。
「あの……」
以下略 AAS



11: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:46:52.93 ID:nm7zvJuf0
 髪型を少し変えているということは、着こなしも……
「制服、ちょっと変えた?」
「あ、わかっちゃう? えへへへへ。高山君、私のことよく見てるよね」
 実際には、はっきりと気づいたわけではない。
 ただパターンとして、そういうことが多いのでそうではないかと聞いただけだが、彼女が嬉しそうにしているので、これも如才なく彼はその件について黙っておいた。
以下略 AAS



12: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:47:49.86 ID:nm7zvJuf0
 彼の姉は別段、気むずかしい女の子というわけではない。
 しかし自身の容姿にあまり自信を持っておらず、だがアイドル志望ということもありファッションや雰囲気作りというものには敏感だ。
 なるべく気づいてあげ、そして良いと思えばそう伝えるのが彼女を喜ばせる一番の方途なのだ。そして気づいて欲しい時に姉がどう接してくるのかを、彼はよくわかっている。

「じゃあね。高山君」
以下略 AAS



13: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:48:34.55 ID:nm7zvJuf0
「わかった。じゃあ聞くけど、高山君はお姉さんにアイドルをやめて欲しくはないの?」
「え?」
 落胆しながらの徳田さんの質問は、少し意外なものだった。
 そんなことは考えたこともない。
 姉がアイドルとして有名になって、周囲から質問されることが多くなっても、そんなことを聞いてきた人はいなかった。
以下略 AAS



14: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:49:27.49 ID:nm7zvJuf0

 帰宅中、高山少年は今日のあの徳田さんの言動について考えていた。
 あの時彼女は、あきらかに自分のこととして「迷惑だ」と言っていた。
 もしかして姉の言う『あの子』が、徳田さんなのだろうか……
 帰宅すると、彼はその疑問を姉にぶつけてみる。
以下略 AAS



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