7: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:43:40.94 ID:nm7zvJuf0
「そうだ。いいことあったよ、ひとつだけ」
「え? もしかして姉がアイドルで良かったこと?」
「うん。ライブとか、関係者席に呼んでもらえるんだ」
またしばらく徳田さんは押し黙った。そして口を開く。
「行ったこと、あるんだ」
「ライブ? うん。姉ちゃんはなんだか見てられないんだけど、他のアイドルはやっぱり心穏やかに見られるし、アイドルってすごいなって思うよ」
「へえ。ね、誰が好き? 765プロのアイドルで」
可愛い女の娘と話せているという高揚感からか、彼は素直に喋ってしまう。
「僕は、まつり姫かな」
「ぶうっ!」
容姿に似合わない吹き出し方をすると、徳田さんは激しくむせ込んだ。
「だ、大丈夫!?」
「ま、まつりちゃん!? まつりちゃんのファンなの?」
心配する彼を余所に、徳田さんは聞いてくる。
「え? あ、うん」
「えー……まつりちゃんってちょっと……なんていうかわざとらしいっていうか、痛々しくない?」
「そんなことないよ!」
知らず、大声になる彼。
「そりゃまあ、僕だってまつり姫が本当のお姫様だとかそんなこと思ってるわけじゃないけど、本当にお姫様みたいじゃない」
徳田さんは、それでも納得しかねる顔で上方に目をやっている。
「なんていうか……そういう夢を見せてくれるところが好きなのかな……って」
かなり長い間、徳田さんは黙っていた。
そしてようやく口を開いて出た言葉が……
42Res/43.05 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20