姉がアイドルということ
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13: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:48:34.55 ID:nm7zvJuf0
「わかった。じゃあ聞くけど、高山君はお姉さんにアイドルをやめて欲しくはないの?」
「え?」
 落胆しながらの徳田さんの質問は、少し意外なものだった。
 そんなことは考えたこともない。
 姉がアイドルとして有名になって、周囲から質問されることが多くなっても、そんなことを聞いてきた人はいなかった。
「どう?」
 腰に手を当て、少し挑むように彼を見つめる徳田さんはそれでも可愛いな――そんな見当違いなことを考えながら、彼も口を開く。
「そんなこと考えたこともなかったかな」
「……そうなの?」
「姉ちゃん、言ってやめるような人じゃないし」
 どうやら徳田さんは、何か思い当たることがあると上方の虚空に目をやるくせがあるみたいだ。
 今もそのくせを存分に披露しつつ、彼女は黙ってしまう。
 沈黙が続くので、仕方なく高山少年は口を開いた。
「姉ちゃんは、アイドルになるって約束してる人がいるんだ」
「……高山君のこと?」
「え? 違うよ。姉ちゃんの幼なじみの子で。いつも一緒にアイドルごっことかして遊んでて、それでいつか2人で本当にアイドルにって」
 今度は徳田さんは下を見た。
 これはどういう感情なんだろうか?
「いつか……本当に……か」
「? うん」
「そんなの、子供の頃の話じゃない……!」
「うん……え?」
「そんな約束にいつまでもこだわって……迷惑だよ!!」
 徳田さんは、なぜだか少し感情的になっていた。
 なぜ――?
「えっと……その……」
「私、帰る!!!」
 今日の徳田さんは、戻ってくることなくそのまま去っていってしまった。
 彼にはなぜだかそれがとても残念で、もしかしたら彼女が昨日みたいに戻ってくるんじゃないかとしばらくの間待ち続けていた。




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