12: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:47:49.86 ID:nm7zvJuf0
彼の姉は別段、気むずかしい女の子というわけではない。
しかし自身の容姿にあまり自信を持っておらず、だがアイドル志望ということもありファッションや雰囲気作りというものには敏感だ。
なるべく気づいてあげ、そして良いと思えばそう伝えるのが彼女を喜ばせる一番の方途なのだ。そして気づいて欲しい時に姉がどう接してくるのかを、彼はよくわかっている。
「じゃあね。高山君」
13: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:48:34.55 ID:nm7zvJuf0
「わかった。じゃあ聞くけど、高山君はお姉さんにアイドルをやめて欲しくはないの?」
「え?」
落胆しながらの徳田さんの質問は、少し意外なものだった。
そんなことは考えたこともない。
姉がアイドルとして有名になって、周囲から質問されることが多くなっても、そんなことを聞いてきた人はいなかった。
14: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:49:27.49 ID:nm7zvJuf0
帰宅中、高山少年は今日のあの徳田さんの言動について考えていた。
あの時彼女は、あきらかに自分のこととして「迷惑だ」と言っていた。
もしかして姉の言う『あの子』が、徳田さんなのだろうか……
帰宅すると、彼はその疑問を姉にぶつけてみる。
15: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:50:08.58 ID:nm7zvJuf0
「ご、ごめんごめん。あのさ、俺の学校に姉ちゃんのファンの娘がいるんだけどさ、なんか……それっぽいこと言ってたからそれで」
「それっぽいこと、って自分が私の言うあの子だ、って?」
いや、徳田さんはそうは言ってはいなかった。
「そうじゃないけど、姉ちゃんの言ってたあの子の話をしたら、そんなの昔の約束だとか迷惑だ、とか言ってたから」
紗代子は少し、いやかなり興味を惹かれたようだ。
16: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:50:44.56 ID:nm7zvJuf0
翌日。
事務所で思いっきり突っ伏しているまつりを見て、朋花は小首をかしげる。
「どうしたんですか〜? まつりさんは」
「それがですね〜。昨日あれからまつりさんは、妹さんを問い詰めたそうなんですよ〜」
17: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:51:22.47 ID:nm7zvJuf0
翌日、高山少年は初めて自分から隣のクラスへ行った。
「徳田さん、いるかな?」
とりあえず近くにいた生徒に声をかける。
「徳田……? いやそれ、もしかして徳……」
18: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:52:21.62 ID:nm7zvJuf0
「姫はもう、なにがなんだかわからないのです……」
事務所ではまつりが、手に頬を乗せて浮かぬ顔をしていた。
「今度はなんですか〜? また妹さんが冷たい態度になったのですか〜?」
「それが逆らしくてですね、朋花ちゃん」
19: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:52:57.22 ID:nm7zvJuf0
「それなら、そのお下がりを貸さなければよかったんじゃないですか〜?」
「でも、もしかしていつか妹が着てくれたら……そ思っていた姫も着ていた服を、妹が自分から……それもバッチリ似合っていたのですよ!」
「ではそれで、よしとしませんか〜? 妹さんも、まつりさんも嬉しいのなら、それで良いではありませんか〜?」
まつりにしては珍しく、美也の言葉にギクリと核心を突かれた顔をする。
20: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:53:36.60 ID:nm7zvJuf0
「あ」
「うん」
駅のホームで、高山少年は目当ての娘を見つけた。
私服の彼女は新鮮で、そしていつも以上に可愛かった。
21: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:54:29.46 ID:nm7zvJuf0
「ようこそいらっしゃい。初めまして、かな。高山紗代子です」
「あ、は……い。初めまして。いつも応援しています」
家に着くと、待ちかねたように姉……紗代子が2人を迎え入れてくれる。
「とりあえずリビングへどうぞ。なにかもってくるね」
42Res/43.05 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20