15: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:50:08.58 ID:nm7zvJuf0
「ご、ごめんごめん。あのさ、俺の学校に姉ちゃんのファンの娘がいるんだけどさ、なんか……それっぽいこと言ってたからそれで」
「それっぽいこと、って自分が私の言うあの子だ、って?」
いや、徳田さんはそうは言ってはいなかった。
「そうじゃないけど、姉ちゃんの言ってたあの子の話をしたら、そんなの昔の約束だとか迷惑だ、とか言ってたから」
紗代子は少し、いやかなり興味を惹かれたようだ。
もしかして、ずっと会いたいと思っているあの子との接点かも知れないのだ。
「会ってみたいな、そのファンの娘に」
「え? ええっ!?」
「ね、うちに連れてきてよ。弟のお友達で私のファンなら特別に、って言って」
普段の紗代子はもちろん、こういうことを言い出す姉ではない。生来、生真面目な性格でこういう公私混同に近いことはしないのだ。
だが、ことはあの子に関することなのだ。そしてこうと決めた時の姉を止めることは、誰にもできない。
「ね、おねがい!」
強く手を握られて、彼はため息をつく。
そう、こうなった姉は誰にも止められないのだ。もちろん自分にも。
しかし、その時彼はふっと思った。
徳田さんが……ウチに来る?
彼女が――ウチに?
「姉ちゃんが……そう言うなら」
そう言う彼は、必ずしも嫌そうではなかった。
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