49:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:41:06.93 ID:FQVp12gN0
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「四行連詩集、というのがあるんだね」
50:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:41:46.21 ID:FQVp12gN0
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二句八節を終えたところで区切りとなり、一礼するライラ。拍手が起こる。アラビア語、しかも古典表現なので言い回しも少し独特。それでも、透き通った綺麗な声に、その仕草に、表情に、ファンを魅了するだけのものはじゅうぶんにあった。
51:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:42:22.76 ID:FQVp12gN0
言葉遊びは華。重ねたり、隠したり。
「好きって気持ちを叫ぶのは、夏のお嬢さんの特権ですね。アイスクリーム、だけに♪」
それは先日事務所で居合わせた長富蓮実の言葉だった。買ってきたアイスをおいしそうに頬張るライラのそばにきて、ニコニコしていたのが印象深い。意味を汲みきれずライラが質問すると、面倒がることなく丁寧に説明してくれた。
「これは懐かしい曲のお話ですけど、それに限らず言葉遊びって本当にいろいろあるんですよ」
52:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:07.14 ID:FQVp12gN0
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53:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:59.94 ID:FQVp12gN0
「……本当は少し、あなたを警戒していました」
胸襟を開く空気に思えた。いや、今ならもう少しだけ話せるかもしれないと、そんな気分になったプロデューサー。いささか踏み込んだ言葉だったかもとは思ったが、しかしエージェントは気にする様子でもなく。
「それは当然ですよね。わかりますよ。……今はいいんですか?」
「ここまでのプロデュース、否定をすることなく見守っていてくださったんです。たとえ立場がどうあれ感謝ですし、今度は僕が信じる限りですよ」
54:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:44:43.96 ID:FQVp12gN0
拍手と歓声の鳴り止まないステージ上で、皆で挨拶。
キラキラとした舞台から観客席を、そしてその向こうを、広がる世界を眺めるライラ。
《生きていくために大切なことは二つ。受け入れる柔軟さと、揺るぎない想い。その両方なの》
母の言葉を思い出す。もっともっと、世界を知って。たくさんのことを受け入れられるようになりたい。そして、揺るぎない想いも、伝えていきたい。自らの言葉で。
55:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:45:36.28 ID:FQVp12gN0
「素敵だったわね、千夏さん」
「ええ、ほんとうに」
観客席。今日のステージを一緒に見に来ていた千夏と千秋。拍手が鳴り止むまでそっとしていた千夏が、ようやく腰をあげた。
「さ、行きましょうか」
56:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:46:17.04 ID:FQVp12gN0
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無事閉幕。片付けを終えて、同日夜。
57:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:46:52.18 ID:FQVp12gN0
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58:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:47:46.86 ID:FQVp12gN0
「プロデューサー殿」
ライラは叫ぶ。今一度。小さく、だけど確かな声で。
それは夏だから。そして、それこそが彼女だから。
「わたくしは……わたくしは、わたくしの物語のシェヘラザードになれるでしょうか」
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