ライラ「アイスクリームはスキですか」
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58:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:47:46.86 ID:FQVp12gN0

「プロデューサー殿」
 ライラは叫ぶ。今一度。小さく、だけど確かな声で。
 それは夏だから。そして、それこそが彼女だから。
「わたくしは……わたくしは、わたくしの物語のシェヘラザードになれるでしょうか」
 それは彼女なりの決意と確認。己の物語をきちんと綴り、語れるような自分を目指したい。そう思えるようになったこともまた、なによりの宝物だから。
 少しだけ視線を遊ばせた後、彼は頷いた。
「きっと、きっとね。どんな物語であろうと、信じるだけのものは続いていく。語り手であり、主人公でもある。ライラだけの、素敵な素敵な物語が」
 それを聞いてはにかんで見せたライラ。
「…………ありがとう、ございますですよ」
 きっとそう言ってくれるだろうと、そんな気持ちがライラにはあった。
 それはとっても嬉しくて。だけど。だけど少しだけ、足りなくて。
「わたくしだけの物語。素敵な言葉ですね。でも、『だけ』というのは寂しいですねー」
 彼女は続けた。その物語は、隣にプロデューサー殿はいらっしゃいますかと。わたくしは、運命をともにしていますか、と。これからも。
「……そうだね。きっと、ね」
「えへへ。ありがとうございますです♪」
 視線が重なる。何気ない言葉尻をつかまえて語り返すライラは珍しい。そういう意味でなかったことはライラもわかっているけれど。でも、言葉で確認することはとても大切だから。
「今はこの瞬間を、この場所を。プロデューサー殿のそばを、実感させてくださいませ」
 ライラがそっと、彼の肩に頭を寄せた。
 この瞬間も、ずっと続けばいいなと感じながら。

 でも、ライラは改めて思う。
 きっとそのままとはいかないから。変わりゆく運命を、自分は選んだのだから。
 だからこそ、もっときらめきを拾いにいこう。
「いつか……故郷のみなさまもファンになって頂けるように。ライラさん、もっともっと頑張りますですねー」
「きっとできるよ」
 一緒に頑張ろうね、とプロデューサー。笑い合う。




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