105: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:52:39.30 ID:brMXuKjJ0
「なるほど。会議中に眠ってしまう、と」
「はい」
先生との問診で、私はこのところの居眠りを打ち明けた。
106: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:53:06.66 ID:brMXuKjJ0
「先生」
「なんでしょう」
「本当に、申し訳ありません」
「いえいえ、高垣さんがきちんと自分に向かい合っているわけですから、私はそのお手伝いだけですよ」
107: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:53:37.33 ID:brMXuKjJ0
薬を最大量まで増やして二週間。効果が出てきた気がする。
なにより、動きが軽く感じられるのだ。
「よしそこまで! 高垣。だいぶキレが出てきたな」
108: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:54:07.41 ID:brMXuKjJ0
「ただいま」
ひとりマンションへ帰ってくる。体は疲れているものの、自分はやれるという満足感が確かにあった。
お風呂を沸かすため『ふろ自動』のボタンを押す。そうして私は化粧を落とすため、クレンジングリキッドをコットンに湿らせる。
109: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:54:48.65 ID:brMXuKjJ0
ライブに向けてのレッスンは続く。
目標マイナス三か月。本番に向け、そろそろ最終形を作らなくてはならない時期。私たちはそこに向け、スタッフ総出で問題点をつぶしにかかっていた。
「はい! 楓さん、オッケーです」
110: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:55:27.90 ID:brMXuKjJ0
目標マイナス二か月。ライブチケットはすでにソールドアウト。ファンの期待が高まっているのを、実感せずにはいられない。
今日も仕事の合間にライブのレッスン。体力も気力もゴリゴリと削られるけれど、私は歩みを止めない。
ファンの皆さんが待っているから。Pさんが期待しているから……
もういないPさんに操を立てているわけではないけれど、私の一挙手一投足はすべてPさんに見守られていると、そう信じていたい。
111: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:56:20.26 ID:brMXuKjJ0
お互いにグラスと前菜がそろう。私たちはグラスを手に取り、唱和した。
「お疲れさま」
112: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:57:08.87 ID:brMXuKjJ0
「ああ、ごめんなさい。実は楓ちゃんのこと、少し知ってる。申し訳ないんだけれど、ちひろさんから聞いたの」
「え、じゃあ」
「うん。今、楓ちゃんが『うつ』で苦しんでいること、知ってる。でも安心して。私しか知らないし、誰にも教えてない」
113: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:57:55.41 ID:brMXuKjJ0
「楓ちゃん。今度のライブが終わったら、しばらく仕事から離れなさい」
「え? なにを瑞樹さん突然」
「ダメよ。このまま楓ちゃんが走り続けたら、あなた絶対壊れる」
114: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:58:41.73 ID:brMXuKjJ0
息が上がる感覚。私は、頭に血が上るのを感じた。
「なぜ、ですか……それが、いけないんですか」
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