高垣楓「あなたがいない」
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114: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:58:41.73 ID:brMXuKjJ0

 息が上がる感覚。私は、頭に血が上るのを感じた。

「なぜ、ですか……それが、いけないんですか」

 ふつふつと。言葉が止まらない。瑞樹さんは、言い終わってはっとした顔をした。でも、もうダメ。

「それが、いけないことですか! 私は!」

 私の心が叫びをあげる。今まで抑えてきたすべてが、暴発する。

「私は……私は……」

 そう言いながら、私はぼろぼろと涙を流す。
 顔を伏せ、涙のままに私は打ち明けるしか、ない。

「Pさんは、私のことを導いてくれたんです……私、Pさんになにも返せていない……なにも」
「……ごめん、なさい。言い過ぎた」

 瑞樹さんは謝罪する。でも。

「謝らないでください……分かっていました。分かっているんです……」

 どんなに頑張ったところで。
 Pさんは、いない。

 それが現実というのなら、現実は私には残酷すぎる。それでもなお、希求してやまない、心。
 どうして。
 どうして。
 いくら自問しても、答えなど出てこない、袋小路。

「……ひっ……ううっ……」

 私はただ、泣き続ける。瑞樹さんは私に寄り添い、ささやいた。




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