111: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:56:20.26 ID:brMXuKjJ0
お互いにグラスと前菜がそろう。私たちはグラスを手に取り、唱和した。
「お疲れさま」
かちん。
澄んだ響きが心地よい。
実のところ、家でこっそりお酒をたしなむことはあったのだけれど、外で呑むのは久々だった。
「……ふう。美味しい」
「あら、誘った甲斐があるわね。よかった」
私がふとそんなことを口走ると、瑞樹さんは笑って答えてくれた。嬉しい。
長命水は、心の扉を軽くさせる。久々の瑞樹さんとの呑み会は、私のエントロピーを下げてくれる、そんな気がするのだ。
そんな私の隙を、瑞樹さんは見逃さなかった。
「ところで楓ちゃん。ライブの準備はどう? 順調?」
「そうですね……まあ順調と言えば順調、ですかね」
「まあ楓ちゃんのことだから、そのあたりは抜かりないと思うけど。でも、ほんとに順調?」
「……それって」
「今の楓ちゃん、ものすごく無理してる、気がする」
瑞樹さんの瞳が、私の心を射抜く。なにか見透かされているようで、私は怖くなった。
216Res/171.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20