高垣楓「あなたがいない」
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108: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:54:07.41 ID:brMXuKjJ0

「ただいま」

 ひとりマンションへ帰ってくる。体は疲れているものの、自分はやれるという満足感が確かにあった。
 お風呂を沸かすため『ふろ自動』のボタンを押す。そうして私は化粧を落とすため、クレンジングリキッドをコットンに湿らせる。
 ふう。コットンの冷たさが心地よい。目を閉じてしばし、私は現実へと戻ってくる。

 ……え?

 目の前にある目覚まし時計は、帰ってきた時刻からすでに四十分経過していることを告げている。
 そんな、馬鹿な。
 気になって掛け時計を見ると、同じ時刻を指している。
 私、意識が飛んでいた?
 どうやらそういうことらしい。突然眠ってしまうのとは違う、意識が飛んでしまう現象。私の中のバッテリーが、急激にゼロを示したようだった。
 今までとは違う、何らかの副作用。
 薬の増量のせいだとは思いたくない。今やめてしまったら、せっかくここまで持ち直した私自身が、再び動きを止めてしまうようで。不安、いや、恐怖。

 どうしよう、どうしようと、頭の中でぐるぐると疑問が駆け巡る。でも。
 この状態を維持するためにも、さらに頑張らないと。
 私は、自分自身に嘘を吐く。大丈夫。きっと大丈夫だから。
 その根拠は、どこに。




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