17: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:34:39.40 ID:S7yVE8bX0
○
足を組んで座ったまま寝落ちしてしまっていたせいか、おかげか。
ぴりりと痺れる爪先の感覚で私は目を覚ました。まだぼんやりとした意識の中、周囲を見渡してみる。
18: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:35:16.42 ID:S7yVE8bX0
○
彼が寝ているうちに、と着替えが行える付近の施設を探して、私はジャージへの換装を終える。
19: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:35:59.35 ID:S7yVE8bX0
「どれにする?」
満面の笑みでおにぎりをもぐもぐとしている彼が背後から、私に訊ねる。
ので、「んー。これは? プロデューサー、できる?」とグローブとボールを持って、彼に見せてみた。
20: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:37:06.89 ID:S7yVE8bX0
○
「九回裏、抑え込まれていたおしぶ打線が最後の意地を見せました。クリーンナップが鮮やかに出塁し、本日初めて訪れたチャンスらしいチャンス! 満塁で迎えますは主砲、渋谷選手です。さぁアウトカウントは二つ、試合は彼女に委ねられました!」
21: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:37:40.03 ID:S7yVE8bX0
プロデューサーは本当に打たれるとは思っていなかったようで、目を白黒とさせていた。
「はい。私の勝ち」
「いや、えー? 野球できたの?」
22: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:38:56.62 ID:S7yVE8bX0
○
それから、ボールはすぐに見つかったものの、よほど負けたことが悔しかったのか「野球はもう終わりです」と彼は私を散歩に誘う。
23: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:39:45.76 ID:S7yVE8bX0
○
その後、最短距離で東京へと舞い戻り、私は自宅への帰還を果たす。
もう既に半日近く彼と遊んでいたと思うと、一日の過ぎ去る速度に驚いてしまう。
24: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:40:12.79 ID:S7yVE8bX0
けれども、母はそんな私の思いなど察しているかのように笑って「気にしないの。凛が生まれる前は二人でやってたんだから」と言った。
「それに、まだ何日かお盆休みもらってるんでしょう? 凛の気が済まない、っていうなら空いてる日に手伝ってくれたらいいわよ」
「うん。その日は頑張るから」
25: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:41:53.23 ID:S7yVE8bX0
○
結局、私とプロデューサーが再集合することができたのは、空が薄ぼんやりとしてきた頃だった。
日中あれだけ猛威をふるっていた太陽は影も形もなく、代わりにぽつりぽつりと星が瞬いている。
26: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:45:14.78 ID:S7yVE8bX0
「なにそれ」
「ああ、えっと、これはクーラーボックス」
「それはわかるけど、なんで?」
「良いものが入ってる」
27: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:50:54.96 ID:S7yVE8bX0
「あ」
「え」
間の抜けた声が重なる。
32Res/40.69 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20