高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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48: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 18:54:41.64 ID:s2H4XrND0
「これで藍子殿に追いつきましたよ!」

二人が嬉しそうにそう言う。そんな二人を観て、私もなんだかうれしくなって。思わず二人に抱き着いた。

「おめでとう!あずきちゃん、あやめちゃん!」
以下略 AAS



49: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 18:55:30.65 ID:s2H4XrND0
「じゃあ、始めよっか」

「はい」

少し遅めの朝食の片付けを終えて、アイさんはそう言った。今日は、週に一度あるアイさんが直接指導してくれる日だ。ARIAカンパニーを一人で切り盛りしていただけあって、アイさんは結構忙しい人だ。アイさんの予定表はいつも予約でいっぱい。でも、こうして忙しい時間を縫ってこうして私の練習を見てくれる。すごく、ありがたい。それと同時に、何となく申し訳ない気分になる。本来なら、この時間はアイさんの自由に過ごせる時間なはずなのに、私に時間を割くことで、それもなくなってしまっている。……アイさんのためにも、はやく一人前の水先案内人にならなければと、強く思う。
以下略 AAS



50: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 18:56:47.89 ID:s2H4XrND0
「……左手に見えますのが、ヴェネツィア共和国時代に存在した大富豪のうちの一人、ジュゼッペ・ペッシーナのお屋敷です。ジュゼッペ・ペッシーナは14世紀に貿易で財産をなしたペッシーナ家でも特に財を成した方と言われています。彼は植物が好きだったようで、今でもこのお屋敷の裏庭には季節ごとに違った花が顔をのぞかせてくれています。今の時期ですと、ピンクやオレンジといった可愛い色合いの花びらを持つヒャクニチソウなんかが咲いていて、とっても綺麗ですよ」

何とか記憶から情報を手繰り寄せ、言葉にする。水先案内人は、ネオ・ヴェネツィアのガイド役も担う。ガイドは、いかにこのネオ・ヴェネツィアが素敵な場所であるかを、少しでもお客様に知ってもらうための機会だ。だから、しっかりと出来るようにしておかなければならない。

ガイドの練習は、あずきちゃんやあやめちゃんと一緒の合同練習の時にはあまりできない項目だ。なぜならその情報が本当に正しいのかどうか、恥ずかしながら確信を持つことができないからだ。バリバリ現役で活躍している水先案内人であるアイさんにガイドの練習を見てもらうのが、ガイドの上達には一番だと私は思う。
以下略 AAS



51: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 18:57:42.51 ID:s2H4XrND0
来たことのない水路でゴンドラを漕ぐのは、結構神経をすり減らす。慎重になりすぎるあまりゆっくりになって、他の人の進行を邪魔してもいけないし、だからと言ってゴンドラの規定スピードを超える速さで移動することもできない。水先案内人はいつだって、一定のスピードを求められるのだ。

のろのろ

……なんて言っても、今私は既定のスピードより遅いスピードで走行しているけど。
以下略 AAS



52: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 18:58:44.23 ID:s2H4XrND0
そんなふうにしてのろのろとゴンドラを漕いでいると、どこからか声をかけられた。

「あのっ……」

声のした方を見ると、そこにはフードを深くかぶった女性の姿があった。
以下略 AAS



53: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:00:34.25 ID:s2H4XrND0
「ふぅ……」

「……えっと……」

私は思わずそのお客様に声をかけた。
以下略 AAS



54: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:02:03.96 ID:s2H4XrND0
「……そういえば、目的地を聞いていませんでしたね。すいません。目的地はどこですか?」

「目的地、ですか……考えていませんでした……とにかく今は戻りたくないから」

先ほどからまゆさんは暗い顔をしている。戻りたくないってことは、きっとアイドルとしての活動の際に何かあったのだろう。
以下略 AAS



55: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:04:10.45 ID:s2H4XrND0
しばらく無言で水路を通る。大回りをするためには、裏道的な水路をいくつか通らなくてはいけないから、その間は観光案内もできない。いや、出来るのかもしれないけど、今の私にはできない。誰も何もしゃべらない。ただ、ゴンドラのきしむかすかな音が、オールが水を切る音が、水路の上を撫でるように過ぎていく風が、そこにはあった。

けれど、なんだかこのゴンドラの空気感が少しいたたまれなくなって、私は再びまゆさんに話しかけた。

「……まゆさんは、今どうして逃げてるんです?」
以下略 AAS



56: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:07:24.56 ID:s2H4XrND0
「まゆ!」

マルコポーロ国際空港広場前で、そんな男性の声が聞こえた。

「……プロデューサーさん……?」
以下略 AAS



57: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:08:55.71 ID:s2H4XrND0
しばらくして、プロデューサーさんから離れると、私の方に来た。そしてまゆさんが口を開く。

「藍子さん、ありがとうございました」

そして、深々とお辞儀してくる。
以下略 AAS



58: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:09:41.42 ID:s2H4XrND0
二日後

「……次で、私のソロパートはラストです」

「……実は私、今日でアイドルを引退しようと思っていたんです。あ、今は全然そんなこと思ってないですよ。安心してください、今日で引退はしないですから……」
以下略 AAS



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