高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:00:34.25 ID:s2H4XrND0
「ふぅ……」
「……えっと……」
私は思わずそのお客様に声をかけた。
「さっきの二人から逃げていたんですか?」
「え?」
「いや、あの、答えたくなかったら答えなくていいんです!すいません、いきなりそんなこと聞いてしまって」
「ああ、いえ。大丈夫ですよ……そうですねぇ……あの二人からも逃げていた、というのが正しいかもしれません」
お客様はもう一度ため息をついた。しばらくの間、オールが水を切る音だけが耳に響いた。アイさんもお客様も何もしゃべらない。私は何とかこの少し重たい空気を換えるべく、もう一度お客様に話しかけた。
「あの……私、高森藍子って言います。差し支えなければ、お客様のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
私が勤めて明るい声でそう尋ねると、お客様も返事をしてくれる。
「藍子さん、ですか……私は、佐久間まゆって言います」
「なるほど……では、まゆさん、とお呼びしてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
お客様、もとい、まゆさんはそう答えた。私はこのままの流れで話を続けることにした。
「まゆさんは、どうしてこのネオ・ヴェネツィアに?」
「お仕事です」
「お仕事ですか。どんなお仕事をされてるんですか?」
「私、普段はアイドルをやってるんです。今回はちょうどここでライブ公演があって」
「まゆさん、アイドルなんですか!?」
私は思わず大きな声でそう言ってしまった。すぐに自分の声の大きさに気が付いてトーンを下げる。
「……すいません。いきなり大きな声を出してしまって……まゆさん、アイドルだったんですね……どおりで綺麗な方だなと思っていたんですよ」
「……ありがとうございます……アイドル、か……」
まゆさんはそう言って、遠くの方を見つめた。そんなまゆさんの横顔は、なんだか儚げで今にも消えてしまいそうに美しかった。
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