高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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53: ◆jsQIWWnULI
2020/08/30(日) 19:00:34.25 ID:s2H4XrND0
「ふぅ……」

「……えっと……」

私は思わずそのお客様に声をかけた。

「さっきの二人から逃げていたんですか?」

「え?」

「いや、あの、答えたくなかったら答えなくていいんです!すいません、いきなりそんなこと聞いてしまって」

「ああ、いえ。大丈夫ですよ……そうですねぇ……あの二人からも逃げていた、というのが正しいかもしれません」

お客様はもう一度ため息をついた。しばらくの間、オールが水を切る音だけが耳に響いた。アイさんもお客様も何もしゃべらない。私は何とかこの少し重たい空気を換えるべく、もう一度お客様に話しかけた。

「あの……私、高森藍子って言います。差し支えなければ、お客様のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

私が勤めて明るい声でそう尋ねると、お客様も返事をしてくれる。

「藍子さん、ですか……私は、佐久間まゆって言います」

「なるほど……では、まゆさん、とお呼びしてもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」

お客様、もとい、まゆさんはそう答えた。私はこのままの流れで話を続けることにした。

「まゆさんは、どうしてこのネオ・ヴェネツィアに?」

「お仕事です」

「お仕事ですか。どんなお仕事をされてるんですか?」

「私、普段はアイドルをやってるんです。今回はちょうどここでライブ公演があって」

「まゆさん、アイドルなんですか!?」

私は思わず大きな声でそう言ってしまった。すぐに自分の声の大きさに気が付いてトーンを下げる。

「……すいません。いきなり大きな声を出してしまって……まゆさん、アイドルだったんですね……どおりで綺麗な方だなと思っていたんですよ」

「……ありがとうございます……アイドル、か……」

まゆさんはそう言って、遠くの方を見つめた。そんなまゆさんの横顔は、なんだか儚げで今にも消えてしまいそうに美しかった。


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