61:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:12:19.02 ID:W5lmC8VA0
「今日は藍子ちゃんに、私の自己紹介をしたいなと思ったの」
「自己紹介?」
「ロクに私のこと、教えてこなかったでしょう?」
62:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:14:51.87 ID:W5lmC8VA0
「あはっ♪ なぁんだ」
それならそうと言ってくれたらいいのに、と悪い癖でまた茶化してしまうと、藍子ちゃんは頬を掻いた。
「言いたくないご事情があったのかなぁ、って……それで、深入りしませんでした」
63:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:17:57.71 ID:W5lmC8VA0
言うべきかどうか、少しだけ迷ったけれど、私は打ち明けることにした。
自らの境遇を。
「魔法使い……私のプロデューサーと、約束させられたの。
もし私が、今度のオーディションに合格したら、アイドルを続けなさいってね」
64:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:20:37.86 ID:W5lmC8VA0
フレデリカちゃんは、子供達のために風船を取ってあげたいという夢が代々引き継がれたからだと言った。
一方で、進化論では首の長い動物は、生存競争のためにそのフォルムを変えてきたという。
どっちにしても、そうして強く望むことが、世代を超えていつしか形になるのなら――。
65:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:23:20.46 ID:W5lmC8VA0
「ちとせさん……」
私は歩み寄り、藍子ちゃんの震える手を取った。
あは♪ こんなに小さかったんだ――。
66:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:28:12.83 ID:W5lmC8VA0
使命という言葉は好きじゃない。
だけど、強いて私にも、この世界に生まれ持って携えた使命がもしあるとしたら――。
名も無き部品として、世界を傍観していくことじゃない。
大それたものでなくても、歯車の一つになって、私も干渉し続ける。
67:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:29:26.46 ID:W5lmC8VA0
見渡す限り、まっさらで何も無い野原。
こっちに背を向けて、中腰の姿勢でせっせと何かに勤しむ女の子に、気づくと私は声をかけている。
68:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:32:25.32 ID:W5lmC8VA0
「お水?」
「そう! うえきちゃんに☆」
その子が一歩身を引いたそこに植わっていたのは、頂部の花のつぼみに相当する部分が人の顔のようにも見える、奇妙な植物だった。
69:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:34:46.71 ID:W5lmC8VA0
促されるまま、彼女の後をついていくと、頂上へ着くのはあっという間だった。
うえきちゃんの顔の横、大きな葉っぱの上に二人並んで座り、眼前に広がる街並みを眺める。
あれ?
70:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:37:09.99 ID:W5lmC8VA0
そうだ――藍子ちゃんが言っていたんだ。
相手を嫌な思いにさせてやろうなどとは微塵も考えない、346プロの中でも有数の気ぃ遣い屋さんなのだと。
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