黒埼ちとせ「進化論」
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65:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:23:20.46 ID:W5lmC8VA0
「ちとせさん……」

 私は歩み寄り、藍子ちゃんの震える手を取った。

 あは♪ こんなに小さかったんだ――。

「今度のオーディションは私、やっぱり勝ちたいと思うの。
 私にとっての夢のヒントは、アイドルにあると思ったから」

 千夜ちゃんがあれほど夢中になれるものに、価値が無いはずはないのだから。

「でも、もしオーディションで藍子ちゃんに負けたとしても、私は悪く思ったりしないよ?
 それどころか、うんと応援する。藍子ちゃんの小さな幸せを見つけるお手伝い、一緒にやりたいな」

「はい……はいっ。私もきっと、ちとせさんの見つけたかった夢、必ず見つけたいです……!」

 藍子ちゃんは目を潤ませて、力強く何度も頷いてくれる。

「あ、なぁにその言い方。もうすっかり私に勝つ気でいるんだ?」
「えっ!? い……いや、違います! 私は、そんなっ!」
「あははは。いいのいいの」

 顔を真っ赤にして泣きながら慌てふためく藍子ちゃんの鼻をツンっと一つ突いて、私は笑った。


「誰かに引き継いだり、引き継がれたり……。
 そうしてたくさんの歯車が、複雑に絡み合うのが愛おしいんだって、気づけたから」



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