64:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:20:37.86 ID:W5lmC8VA0
フレデリカちゃんは、子供達のために風船を取ってあげたいという夢が代々引き継がれたからだと言った。
一方で、進化論では首の長い動物は、生存競争のためにそのフォルムを変えてきたという。
どっちにしても、そうして強く望むことが、世代を超えていつしか形になるのなら――。
「藍子ちゃん、私ね……?
自分の人生は、自分だけで完結するものだって、思っていたの。
でも……」
像の台に、そっと手を置いてみた。
ひんやりと、心なしか少し湿っている。
にわか雨でも降っていたのか、噴水の水しぶきがこちらまで届いていたせいなのかは分からない。
「たとえ、私では達し得ない夢であったとしても……本当に、たとえばの話。
何かを強く望む私の姿を、どこかの誰かが見てくれて……その誰かが、また誰かに引き継がれて、そうしていつか……」
この間は悪く言ってしまったけれど――もしかしたらこの像にも、私の知らない想いが託されていたのかも知れない。
幾度となく作り直されるとしても、変容していく中で、当時から引き継がれた想いが。
「私ではなく、いつか誰かがたどり着けるのだとしたら、この命も無駄じゃない。
あなたとフレデリカちゃんのおかげで、私もそう思うことができたの。
だから……藍子ちゃん」
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