4: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:56:43.73 ID:hr1ls1V9o
視界が開けた。そして気づく。
そこは車内なんかではなく、エレベーターの中だった。……エレベーター?
慌ててスマホを確認、ええと……あれ、先程気を失ってからかなりの時間が経っている。計算が正しければ、一本収録を終えて丁度いいくらいには。俺はそこに自分の両足で立って、帰り支度をして乗っていた。
記憶が無い。俺は今まで何をしていたのだろうか。全身から汗がぶわっと吹き出てくる。
5: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:57:14.31 ID:hr1ls1V9o
数日後、再び妙なことが起きた。
「誰だよ、こんな……イタズラにしちゃ意味分かんねえし」
ラジオ収録のために訪れた局の駐車場に、停めてあった黄色い車の運転席側のドアノブの上。そこに落ちないように、器用に駄菓子が置かれている。個包装のまま。
6: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:58:11.80 ID:hr1ls1V9o
「でもやってる人、好意なんすかね?」
「……どういう事?」
「平子さんのためにやってのかって話よ、菓子だし。もしくは『俺はお前の住所知ってんだからな』的なこととか」
7: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:59:04.96 ID:hr1ls1V9o
それは根本的な解決にならねえよ、と言いかけて、とりあえず言い分を聞いてみる。
「平子さんでけぇし、いたらバレると思うんすよね。毎日は無理かもしんねえけど、イケそうな範囲で行ってみます」
「それこそ無理だろ」
8: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:59:37.46 ID:hr1ls1V9o
動画が流れる。
画面中央で停めてあるのは、黄色い車。
そしてそこに、人がやってくる。見覚えのある服装、
見覚えしかない顔。
9: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:00:06.45 ID:hr1ls1V9o
◇
夢を、見ていた。
夢とはっきり分かった。
10: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:01:09.05 ID:hr1ls1V9o
「平子さん!!!」
くっそうるせぇ声で意識を取り戻した。
どうやら硬いコンクリートにぶっ倒れていたらしい。時間はそんなに長くない。全身があまり痛まないのは、恐らく暗転の直前に酒井が受け止めてくれたお陰だろう。
11: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:01:59.06 ID:hr1ls1V9o
スマホを向けられた。
その画面では、先程とまた違う動画が流れている。
見覚えがある顔付きの男だが、見覚えない顔色と、聞き馴染まない声色でおどおど喋っている。会話の相手は酒井だ。
「や、ちょっと平子さん、もうマジ切れますよ俺」
12: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:02:31.50 ID:hr1ls1V9o
「最初はなんか上手くいかなくて、それで……あの、『×××』って番組ありましたよね、収録」
「ああ、ラジオな」
「その時ずっと出てたんです、僕」
13: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:03:05.40 ID:hr1ls1V9o
「えっと、あの……平子さん、いつもありがとうございます。お礼の仕方、分からなくてすみませんでした」
いや、いいよもう。今更。なんかそれどころじゃねえわ。怖いわ。俺が怖いしお前も怖いわ。
「お米も、すみません。あれ、僕の周りに鳥がいたら綺麗だなと思って撒きました」
15Res/21.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20