11: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:01:59.06 ID:hr1ls1V9o
スマホを向けられた。
その画面では、先程とまた違う動画が流れている。
見覚えがある顔付きの男だが、見覚えない顔色と、聞き馴染まない声色でおどおど喋っている。会話の相手は酒井だ。
「や、ちょっと平子さん、もうマジ切れますよ俺」
「待って、ください」
「……なんすか気持ち悪い」
「えっと、信じてもらえるかどうか分かんないですけど」
一息置いて、そいつは言う。
「僕、その……車、なんです。平子さんの、黄色い車です」
間。
映っていないが、酒井も呆気に取られていただろうなとすぐに分かった。
画面の中では、『僕』が喋っていた。
意味がわからない。頭が回らない。事態に対応できない。
しかし、『僕』はそんなことはお構い無しで、ついでに動画撮影中の酒井の困惑すら無視して、話を続けていた。
「平子さん、いっつも僕のこと、大切にしてくれるから……だから、お礼がしたくって」
「え……いや、ちょ、あの……もういっすよそういうの」
「僕も最近なんです、こういうのできるようになったの!」
「……でも、最近平子さんに変なとこなんて」
「平子さんが寝たら、僕が出てこられるようで」
「え?え?じゃあ、えっと……いっつも楽屋で寝たと思ったら立ち上がってたのは……」
「僕、ですね」
「うっそだろ……」
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