10: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:01:09.05 ID:hr1ls1V9o
「平子さん!!!」
くっそうるせぇ声で意識を取り戻した。
どうやら硬いコンクリートにぶっ倒れていたらしい。時間はそんなに長くない。全身があまり痛まないのは、恐らく暗転の直前に酒井が受け止めてくれたお陰だろう。
「……助かった」
何とか体を起こして、それから礼を言う。
しかし酒井は珍妙なことを口走るのだ。
「ほんとに平子さんじゃなかったっす、犯人」
一瞬の沈黙。静寂が俺たちを包む。
ひらこさんじゃなかったっす?
……意味が理解できないまま、数回瞬きをしたと思う。
続けて、自分でも驚くくらいの声量が出た。
「はあ!?」
「だから、マジで平子さんじゃなかったんっすよ!犯人!」
「どういう事!?さっきの俺だったじゃん?で、お前も俺だって言って、でも俺は記憶なくって……あ?」
酒井は今まで見たことがないくらいに慌てふためいている。
それを制して冷静に状況を整理しようとすると、やっぱり意味が分からなくなった。俺じゃないことは確かなのだ。
こくこくと頷き、息を何度か吸ったり吐いたりして、なんとか落ち着きを取り戻した酒井は信じられない事を言った。
「車だったんすよ」
二度目の目眩に襲われた。
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