9: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:00:06.45 ID:hr1ls1V9o
◇
夢を、見ていた。
夢とはっきり分かった。
なぜなら、その景色は到底有り得ないものだったからだ。
黄色い車に、家族は乗っている。
俺と真由美と、娘と息子と。四人でどこかに出かけている。みんな笑顔で、世界は常に明るく、快晴の空がどこまでも続いていた。
それを、俺が、見ている。
和気藹々と会話をしながら、時折外を見てみたり、雲ひとつない空を飛ぶ鳥達に目を向けたりして、笑みを称える俺自身を、『俺』が見ている。
まるでコマーシャル、或いは映画のワンシーン。誰かのレンズを通したように、別なアングルから俺を見ていた。
こう見ると、まあ俺も見た目は悪くないんじゃないかなとか、もうちょっと鍛えたいなとか、嫁はいつ見たってこの世にいる中で一番の女だとか、あれこれ思考は回るが、大切なことはそんなことじゃない。
なぜ俺がそんな夢を、俺の視点ではないところから見ている?
まるで、『車から見た』幸せな家族の映像。
背後を向こうとしたが、向けない。
なぜかは分からないけれど、その後ろに無より恐ろしい闇が広がっているのが分かった。
だが、俺は、車は、前にしか進まない。
過去を振り切るように、悲しみを忘れるように、前進している。
そうか、これは───
◇
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