アルコ&ピース平子「黄色い車」
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5: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 20:57:14.31 ID:hr1ls1V9o
数日後、再び妙なことが起きた。

「誰だよ、こんな……イタズラにしちゃ意味分かんねえし」

ラジオ収録のために訪れた局の駐車場に、停めてあった黄色い車の運転席側のドアノブの上。そこに落ちないように、器用に駄菓子が置かれている。個包装のまま。
写真に収め、「面白エピソード」かどうか分からないままツイッターに載せておいた。
反応は様々だ。こう言う物を見る度、十人十色と言う言葉を思い出す。同じようなことを言う人だけが集まることと言うのは希少で、なにより有り得ないことだと痛感する。
顔を見せる商売をしているだけよりも、こう言った「人と人の距離感が近い社会」では余計に思わされる機会は多い。
しかし、誰が?いつ?なんのために?分からないことだらけだ。
そもそもメリットがない。自作自演にしたって滑ってるし、それなら駄菓子なんて小さいものを挟んでおくことに面白みを感じない。一層、悪口でも書かれた紙が挟まれていたら面白いかもしれない。

……いや面白くねえわ。それヤバいわ。本当にストーカーでもいんじゃねえか。

分からないと言えば。
最近妙に眠い。相方と楽屋でふたりきりの場面で大抵寝ている気がするのだが、それでも眠い。帰り際、乗車前に眠いとまずいので仮眠でも取るべきかと思うが、そう言う時には眠れない。
しかしそんな話をした所で意味もないし、面白い話でもないし、「また平子さん、意味深エピソードっすか?」的な顔をされてしまうし、……いや、するなよ。俺は普通に困ってるんだよ。


困惑を増幅する街、ここは東京。なんでもあるはずなのに、何も掴めない街。


「お前じゃねえの?」

酒井に聞く。まさか、と小さく漏らしてから、あいつは苦笑いを浮かべた。

「わざわざ平子さんの車に菓子置いたり米撒いたりする意味ないっすよ」

「確かに」

いや、ほんと、確かに。その通りなので頷くほかは無い。


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