白雪千夜「私の魔法使い」
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97: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:25:03.56 ID:ldlfMP+C0
26/27



「緊張してる? それとも……ふふ。女の子の部屋に入ってくるなんて、魔法使いさんは悪い人だね」
以下略 AAS



98:26/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:26:20.28 ID:ldlfMP+C0
「それじゃあ今度はあなたの番。千夜ちゃんのこと、好き?」

「それは……」

 調子が戻っていないとしても、この瞬間だけは紅い瞳から逃れられない。そんな予感がした。
以下略 AAS



99:26/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:27:34.03 ID:ldlfMP+C0
「そろそろ、行こっか。私をエスコートしてくれる?」

「……ああ。魔法使いなんかでよければ」

「魔法使い兼、馬車のお馬さん兼、王子様役、だね。これからも大変そう♪」
以下略 AAS



100:26/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:28:29.61 ID:ldlfMP+C0
「これ、あの子に届けてほしいんだ。持っててくれるだけでいい、私の代わりにこの子が千夜ちゃんのそばにいてくれたらなぁって」

「自分で渡せばいいじゃないか……そのぐらいの時間は」

「いいからいいから♪ あなたに預けておけば安心できるから、ね?」
以下略 AAS



101:26/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:30:11.30 ID:ldlfMP+C0
 多くの出演者とその関係者が慌ただしく入れ替わっていく中、1人静かに千夜は控え室で自分の出番を待っていた。

 『Velvet Rose』としての出場登録は変更されないままきており、初めてその名を見聞きする聴衆には千夜1人が舞台に出ても、違和感を抱かないだろう。

 それでも千夜はちとせの分まで舞台に立とうとしている。2人のための楽曲は随分と1人用にアレンジされてレッスンしてきたが、その心までは変わらない。
以下略 AAS



102: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:31:45.36 ID:ldlfMP+C0
27/27



 事務所の自室で1人、プロデューサーは茫然自失になりながらデスクで千夜からの連絡を待っていた。
以下略 AAS



103:27/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:33:21.09 ID:ldlfMP+C0
 そうして千夜までもいなくなってから、何度も連絡を取れないか持たせてある携帯電話へメールも電話も試してみたが、千夜からの応答はまだ無い。

 回収してある千夜が会場に残していったものはちひろに管理してもらい、いつ千夜が事務所に戻ってきてもいいよう、会場を後にしてから今に至るまでプロデューサーは事務所の部屋で待機している。

 さっき夜が明けたばかりのはずが、既に西日が差し込んできていた。
以下略 AAS



104:27/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:34:29.27 ID:ldlfMP+C0
 そこにいたのが求めていた人物ではなかったからか、とっくに涸らしていただろう涙の跡にまた雫が流れていく。頬をつたった涙が2つのネックレスへとこぼれていく。

「…………。お前がここに来たということは……お嬢さまはもう、戻ってこないのですね?」

 掠れ切った千夜の声が胸に深く突き刺さる。憔悴しきった目の前の少女が、昨日あれだけのLIVEをこなしたアイドルとは到底思えない。
以下略 AAS



105: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:35:41.54 ID:ldlfMP+C0
27/0



 白へと落ちていった先には、黒が待っていた。
以下略 AAS



106:27/0  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:37:03.67 ID:ldlfMP+C0
 一転して、あの全てを見透かすような瞳になった。やっと記憶にあるちとせの雰囲気に近付いてきたが、それはそれで緊張する視線でもある。

「大丈夫、もう取って食べようなんて思ってないから。そんな寂しそうな顔されてても美味しくなさそうだし、ねっ」

 早くも見透かされたものの、この瞳さえあれば何とかなるような気がしてくる。何とかしなくては、悪夢は覚めないままになってしまう。
以下略 AAS



107:27/0  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:38:16.62 ID:ldlfMP+C0


 翌日、プロデューサーは朝早くから事務所の自室に訪れていた。

 部屋にアイドルの痕跡が何もなくなった時間へと戻ってくるのはこれが初めてなので、失ったものの大きさに胸が押し潰されそうになる。何度失くしては拾い上げてきたかも覚えていない。
以下略 AAS



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