98:26/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:26:20.28 ID:ldlfMP+C0
「それじゃあ今度はあなたの番。千夜ちゃんのこと、好き?」
「それは……」
調子が戻っていないとしても、この瞬間だけは紅い瞳から逃れられない。そんな予感がした。
「……ああ、好きだよ。不愛想でちとせ想いなあいつを放ってなんかおけない」
「他には?」
「他に? 他にって」
「聞きたいな。あなたがどんな風にあの子を見てきたのか」
「……そうだなあ。ちとせにしか興味ないって顔してたのに、次第にアイドルを楽しむようになってくれたところとか」
「もっと」
「ちゃんと周りのことは見えていて、ここぞって時に俺のことも気遣ってくれたりしてさ」
「もっともっと」
「意外と……変わった趣味を持ってるのかもな。ぴにゃこら太とか」
「ふふっ、驚いちゃったな。突然持って帰ってくるんだもの、あんなに自分の物を持ちたがらなかったのにね」
「失くしたくないんだよな、千夜は。嫌っていうほど失くしてきたから」
「うん……」
「近付き過ぎて、離れてしまった時のことを考えるのが怖くって。だから会ったばかりの俺にあんな態度を取ってたんだ。……これは思い上がりかな? まだお前、だもんな」
「そんなことないよ。それにあなたのこと、とっくに魔法使いだって認めてくれてるでしょう?」
「ああ。俺を魔法使いと認めてくれた。だから俺は……千夜のためならもう一度だけ歩ける。ちとせしか知らない千夜の笑顔も見てみたいしな」
「……そっか。伝わったよ、あなたがあの子を大好きだってこと。妬けちゃうくらいに……だから、任せられる」
「そう? 俺は――」
再び、ちとせの細い指がその先を言わせまいと唇を塞ぐ。
ちとせのことだって好きだと、どうしてか言葉にさせてもらえなかった。
「はい、お終い♪ あなたはあの子のこと、しっかり見ててあげなきゃ駄目なんだから。魔法使いさん?」
「……そう、だな」
「それと、前の子たちとの浮気もほどほどにね? へーんーじーはー?」
「? えっと……はい」
今度は言わされてしまった。ちとせは時刻を確認したかったのか一度だけ枕元の方へと振り返り、何でもないようにプロデューサーへと向き直る。
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