95:25/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:23:05.31 ID:ldlfMP+C0
「……。もう少し、言い方は……なかったのですか?」
「いいんだよ! ここで格好がつく人間だったら、1人で老け込んだりしてないさ」
抱き寄せるのをやめ、千夜の顔が見えるように胸元からゆっくりと離した。
96: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:24:01.31 ID:ldlfMP+C0
25.5/27
覚悟は決まった。あとはやるべきことをやるだけだ。
97: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:25:03.56 ID:ldlfMP+C0
26/27
「緊張してる? それとも……ふふ。女の子の部屋に入ってくるなんて、魔法使いさんは悪い人だね」
98:26/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:26:20.28 ID:ldlfMP+C0
「それじゃあ今度はあなたの番。千夜ちゃんのこと、好き?」
「それは……」
調子が戻っていないとしても、この瞬間だけは紅い瞳から逃れられない。そんな予感がした。
99:26/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:27:34.03 ID:ldlfMP+C0
「そろそろ、行こっか。私をエスコートしてくれる?」
「……ああ。魔法使いなんかでよければ」
「魔法使い兼、馬車のお馬さん兼、王子様役、だね。これからも大変そう♪」
100:26/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:28:29.61 ID:ldlfMP+C0
「これ、あの子に届けてほしいんだ。持っててくれるだけでいい、私の代わりにこの子が千夜ちゃんのそばにいてくれたらなぁって」
「自分で渡せばいいじゃないか……そのぐらいの時間は」
「いいからいいから♪ あなたに預けておけば安心できるから、ね?」
101:26/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:30:11.30 ID:ldlfMP+C0
多くの出演者とその関係者が慌ただしく入れ替わっていく中、1人静かに千夜は控え室で自分の出番を待っていた。
『Velvet Rose』としての出場登録は変更されないままきており、初めてその名を見聞きする聴衆には千夜1人が舞台に出ても、違和感を抱かないだろう。
それでも千夜はちとせの分まで舞台に立とうとしている。2人のための楽曲は随分と1人用にアレンジされてレッスンしてきたが、その心までは変わらない。
102: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:31:45.36 ID:ldlfMP+C0
27/27
事務所の自室で1人、プロデューサーは茫然自失になりながらデスクで千夜からの連絡を待っていた。
103:27/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:33:21.09 ID:ldlfMP+C0
そうして千夜までもいなくなってから、何度も連絡を取れないか持たせてある携帯電話へメールも電話も試してみたが、千夜からの応答はまだ無い。
回収してある千夜が会場に残していったものはちひろに管理してもらい、いつ千夜が事務所に戻ってきてもいいよう、会場を後にしてから今に至るまでプロデューサーは事務所の部屋で待機している。
さっき夜が明けたばかりのはずが、既に西日が差し込んできていた。
104:27/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:34:29.27 ID:ldlfMP+C0
そこにいたのが求めていた人物ではなかったからか、とっくに涸らしていただろう涙の跡にまた雫が流れていく。頬をつたった涙が2つのネックレスへとこぼれていく。
「…………。お前がここに来たということは……お嬢さまはもう、戻ってこないのですね?」
掠れ切った千夜の声が胸に深く突き刺さる。憔悴しきった目の前の少女が、昨日あれだけのLIVEをこなしたアイドルとは到底思えない。
105: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:35:41.54 ID:ldlfMP+C0
27/0
白へと落ちていった先には、黒が待っていた。
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