84: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:04:16.74 ID:ldlfMP+C0
22/27
「お誕生日、おめでとうございます。黒埼ちとせさん」
85:22/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:11:28.23 ID:ldlfMP+C0
「知ってる? あの子、帽子と眼鏡を掛けて夕飯のお買い物とかしたりするようになったんだ。気に入ってくれたのかな? それとも……誰かさんの影響?」
2人でプレゼント選びに行ったことがばれたかと思い心臓が一瞬跳ね上がったが、もしそうならもっと悪戯っぽい目をしてからかってくるところだ。
それにしても、飾り気のさらさらない千夜がどうしたというのだろう。
86:22/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:12:35.99 ID:ldlfMP+C0
普段から帽子と眼鏡を身に着け出したことをそんなに知られたくなかったのだろうか。
気にはなるも、命は惜しい。プロデューサーはこのささやかなパーティーを穏便に終えて無事に帰れることだけを人知れず願った。
「あ、そうだ。千夜ちゃんシェフの年に1度の特別ディナーをいただく前に、ちょっと待ってて」
87: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:14:08.36 ID:ldlfMP+C0
23/27
事あるごとに千夜から贈られたムーンストーンのネックレスを着けているちとせとは対照的に、ちとせから贈られたサンストーンのネックレスを千夜は着けたがらなかった。
88:23/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:15:25.26 ID:ldlfMP+C0
「逆に考えてみよう。どういう時なら着けてもいいって思える?」
「どういう時、か。そうだな……。お嬢さまは可能な限り、私の贈ったものを身に着けてくださっている。お嬢さまと並び立てる時であれば、私も……気兼ねしないかもしれない」
「というと、ユニットとしてステージに上がった時だけ? 1年に何回、何時間着けられるかどうかだな……」
89:23/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:16:11.85 ID:ldlfMP+C0
「ぎゃあっ!? えっ、ちとせ? 何してるんだよ!?」
「やっと気付いてくれたぁ……」
首筋に痛みは感じないまでも、何かを突き立てられた感触と微かな薔薇の香りに振り向くと、ちとせがものの見事にふてくされていた。
90: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:17:31.56 ID:ldlfMP+C0
24/27
ただならぬ悲壮感をひた隠しにしている千夜のレッスン風景を見学しながら、邪魔にならないよう、そして聞かれないようちとせとプロデューサーは小声で密談していた。
91:24/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:18:43.44 ID:ldlfMP+C0
「……ああ。アイドルを続けるためにちとせを退屈させない、ちとせに嘘をつかない。もっと増えていくかと思ってたのに、2つのままだった」
「それだけ私が求めていたことを、あなたはやってくれてたんだよ。私のことも、千夜ちゃんのことも」
「そうだと……いいんだけど」
92: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:20:03.90 ID:ldlfMP+C0
25/27
スケジューリングされていた仕事をなんとかこなしきったちとせに、内々でアイドル活動の休止が決定した。
93:25/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:21:01.45 ID:ldlfMP+C0
「……千夜は、元気か? 疲れてるんじゃないか」
ちとせのことに触れないのも不自然だが、実際千夜も心身ともに参っているはずだ。
「お前の方こそ……。お嬢さまも、心配しておられた」
94:25/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:21:54.45 ID:ldlfMP+C0
「なのにお前は、私に消えない炎を灯した。お嬢さまが主役でそれを支えるのが私の人生……そんな物語でよかったはずなのに。お前は私に、お嬢さまに! 心が燃え盛るような新しい物語をくれた……!」
プロデューサーの胸元に手を付き、そのまま頭も埋もれさせていく千夜。悲鳴にも似た叫びがプロデューサーの芯まで穿っていく。
「これからだっていうのに! 私に生きる意味をくれた人に、私は何もしてやれない……。どうして私の周りからは、大切なものが燃え尽きていってしまうんだ……!」
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