白雪千夜「私の魔法使い」
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85:22/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:11:28.23 ID:ldlfMP+C0
「知ってる? あの子、帽子と眼鏡を掛けて夕飯のお買い物とかしたりするようになったんだ。気に入ってくれたのかな? それとも……誰かさんの影響?」

 2人でプレゼント選びに行ったことがばれたかと思い心臓が一瞬跳ね上がったが、もしそうならもっと悪戯っぽい目をしてからかってくるところだ。

 それにしても、飾り気のさらさらない千夜がどうしたというのだろう。

 変装のつもりなら、多少は2人一緒に外で歩いても大丈夫そうだ。プロデューサーが気付かなかったぐらいだったわけで。

「アイドルだしそういう意識は大切なんじゃないか? ちとせだって気を付けなきゃ」

「そうじゃなくて! ……それもあるけど、おかげで捗っちゃった♪」

「捗ったって……メイド服の時みたいにまたプレゼントしたの?」

「だって、とりあえずって感じのデザインだったからつい。どうせならもっと可愛くて似合う方がいいでしょう?」

 それらを渡した本人に駄目出ししている状況であることを、ちとせは忘れているのだろうか容赦がない。

 あり合わせを渡したことはその通りなので、非難は甘んじて受け入れるプロデューサーだった。

「目立たれても本末転倒だけど……まあ、ちとせが楽しそうで何より」

「あー、魔法使いさんも千夜ちゃんと同じこと言うんだ。……本気で拗ねちゃうんだからっ」

 仲間外れにされていると感じたのか、むくれたちとせにそっぽを向かれてしまった。

 どうにもちとせの機嫌を損ねてしまいがちになっている。逆に言えば、今まで機嫌の悪いちとせをあまり見てこなかった。

 今回とは別に、ちとせにも何かプレゼントした方が良さそうだ。プロデューサーとしては、千夜にあげたくて渡したのはクレーンゲームで取った黒いぴにゃこら太だけである。

 とはいえちひろが言っていた、平等にとはこういうことだったのかもしれない。今は離れたみんなのこともある。アイドルとしてプロデュースするのとは異なる難しさだ。

 そこへようやく千夜が現れてくれた。このまま2人でいると本日の主役の機嫌をどんどん悪くさせかねない。

「お嬢さま、準備が整い……お前。お嬢さまに何をした」

「あーん千夜ちゃん助けてぇ? 魔法使いさんが私をいじめるー」

 よよと泣き崩れるような素振りで千夜に抱き着くちとせ。わざとらしい演技なのだが、千夜の目は本気だった。

「違うんだ、話をしてただけだって! 最近千夜がよく帽子と眼鏡掛けてるって話を聞いてただけだぞ」

「なっ!? ……お、お前ぇぇええええ!!」

「何で俺なの!?」

 僅かに顔を赤らめた千夜からのプレッシャーが凄まじい。もし怒りの色に染まっていたとしても、なぜ怒っているのかもわからない。なんとも理不尽だ。

「くふっ、あはははは♪ ご、ごめんね、私一人じゃもったいないなくて、つい喋っちゃったの」

「お嬢さまも、お戯れはほどほどに……」



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