白雪千夜「私の魔法使い」
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87: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 21:14:08.36 ID:ldlfMP+C0
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 事あるごとに千夜から贈られたムーンストーンのネックレスを着けているちとせとは対照的に、ちとせから贈られたサンストーンのネックレスを千夜は着けたがらなかった。

「大事にしまっておきたい気持ちはわかるよ。わかるけどさ……」

 ちとせが毎日の挨拶代わりに泣きついてくるので、不憫で仕方がない。

 その様子を傍から見るとプロデューサーがちとせに酷いことをしているかのようなので、どちらかと言えばその方が問題だった。

「私もお嬢さまを哀しませるのは本意ではない。ですが……どうしても……」

 恐れ多さが上回ってしまい、千夜としても何とかしたいとは思っているようだ。

「メイド服の他にも、帽子とか眼鏡とか貰ったんだろう? そっちはどうなんだよ」

「それはお嬢さまの戯れあってのことなので……。あれは私のためだけに選んでいただいた贈り物で、そのありがたみも今ならわかるから。つまりはお前の魔法のせいだ」

「魔法……ね。俺のせいかー。ならしょうがないねー」

「ふざけているのですか」

「ええ……」

 千夜とはもう何度目かになる事務所の部屋のソファに並び座っての話し合いは、困難を極めようとしていた。

 テーブルには千夜の淹れてくれた紅茶があり、それがまた絶品なので当人同士の問題だからと投げ出すことも出来ないでいる。

 ちとせはレッスン中で、千夜は体力作りのトレーニングを終えてちとせと帰宅するため戻るのを待っている最中だ。

 ちとせが戻ってくることでも千夜の相談には乗れなくなるが、恐らく次の機会を虎視眈々と狙ってくるだろう。それなら早いうちに解決してしまいたい。

「とはいってもなあ。一応持ち歩いてはいるの?」

「…………」

「ああ、厳重に鍵までかけて引き出しの奥とかに大切に保管してるやつか」

「っ、何故わかった」

「重い! ちとせはなあ、気軽に着けてほしいからってお嬢様パワーは使わずに、ちとせにとっては小遣いにも満たないだろうアイドルの給料からあれを選び抜いたんだぞ!」

「やめろ! そんなこと聞かされたら……ますます……」

 落ち込み加減といい、顔を両手で覆う千夜は外見からしてほとんど黒色に包まれていた。千夜の予算も貯まっていた使用人としての給料ではなく、アイドルとしての給料から出ている。

 また一つ特別な思い入れが付け足されてしまい、泥沼へと嵌っていた。

「ごめん。余計なこと言った」

「……いえ、それはそれで……良いことを聞きました。お嬢さま……」

 ちとせに対しての照れもあったのか、隠れた顔がなかなか出てこない。

 千夜の気持ち一つでどうにかなる問題なので、プロデューサーが出来ることはあまりなかった。それでも何とかしなくては2人のアイドル活動にも影響が及びかねない。



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