33:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:04:49.68 ID:ldlfMP+C0
「それで、今日はどうしたんだ」
回りくどいことをせずとも、話があるならいくらでも耳を傾ける所存である。千夜がそうしないのは、まだ千夜から信頼を得られていないことに他ならない。気軽に頼れる間柄とは認識されていないのだ。
千夜もどこまで踏み込んだものか迷っているらしいが、ちとせにしか見せないような顔をおいそれとは拝ませてくれない。
34:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:05:51.92 ID:ldlfMP+C0
ふと、人形繋がりでデスクの奥に眠らせたままになっていた、緑色の物体を思い出す。扱いに困り放置していたが、これもいい機会か。
いそいそとデスクに向かい最下段の引き出しの奥へ手を突っ込む。ぐにっ、と柔らかい感触をした緑色のそれは事務所が推しているマスコットキャラクター、ぴにゃこら太のぬいぐるみである。
いきなり席を立たれて何事かとこちらを窺っていた千夜は、未知との遭遇に微妙な顔をしながら、しかし目を奪われたといった様子だ。
35:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:06:52.95 ID:ldlfMP+C0
「アイドルに慣れきって、染まってしまった後……戯れに飽きて、辞めることになったら。そう考えている私の心の内、お前に分かりますか?」
「……」
秤にかけて、ちとせより重きをおけるものは千夜には無い。
36: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:08:13.91 ID:ldlfMP+C0
9.5/27
「お嬢さまのようにはいかない、か」
37: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:09:15.43 ID:ldlfMP+C0
10/27
2人のユニットデビューの日も翌日となり、やるべきことは最終調整を残すのみとなった。
事務所のとある一室では、徐々に上がってきた気温に気だるげな者、いつにもまして涼やかな者、見るからに暑そうな者と三者三様が揃っていた。
38:10/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:10:14.40 ID:ldlfMP+C0
「そうだなぁ。私たちの楽園に連れていってあげる、とか」
「ら、楽園? 楽園って……」
「あは♪ 期待しちゃった?」
39:10/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:11:59.79 ID:ldlfMP+C0
休憩していた姿を見られたくなかったのか、取りこぼしたペットボトルを小脇に抱え、一度背を向けて最小限の動きでレッスン着を整えたのち、咳払いをしつつ振り返る。
この間10秒と経っていない。取り繕っている間に少し顔が紅潮したようだ。
「……久し振り。元気にしてた? ちゃんと食べてるの? また老けたんじゃない?」
40:10/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:12:48.27 ID:ldlfMP+C0
帰ってきてみると、特等席であるソファにぺったりと幸せそうな顔で横になるちとせと、主人の命令に抗えなかったのか再びコールドスプレーを手にした千夜が疲れ切った顔をしていた。
現況から鑑みて、微妙な暑さに耐えきれずソファを冷やさせた、といったところだろう。
それだけにしては千夜が疲れているのも気になる。夏もデビューもこれからだというのに、大丈夫なのだろうか。
41: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:14:09.85 ID:ldlfMP+C0
11/27
「お疲れ様です、プロデューサーさん。首尾はいかがですか?」
42:11/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:15:16.65 ID:ldlfMP+C0
「……でも、今のお話はみんなにはされない方がいいかもしれません」
「自分たちのことを放っておきながら、新しくスカウトしていたらそりゃあ、ね。わかってますよ」
「それもありますけど、ふふっ。段々調子が戻ってきましたね」
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