37: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:09:15.43 ID:ldlfMP+C0
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2人のユニットデビューの日も翌日となり、やるべきことは最終調整を残すのみとなった。
事務所のとある一室では、徐々に上がってきた気温に気だるげな者、いつにもまして涼やかな者、見るからに暑そうな者と三者三様が揃っていた。
「というか魔法使いさん、暑くないの? この業界ってクールビズとは無縁だったりする?」
至極真っ当な指摘にめげず、プロデューサーとして胸を張って答える。
「これが俺の衣装なの! 簡単には脱いでやらないんだからっ!」
「変なやつ、いや、こういうのを変態と呼ぶんだったか。お嬢さまには近づかないで貰いましょう」
「冗談だって! ……まあジャケットは脱がないんだけど。にしてもいつも通りだな2人とも、緊張とかしない方?」
デビューが間近に迫るにつれ、大なり小なりナーバスになっていくアイドルたちを幾度となく見てきたが、ちとせと千夜は違うようだ。頼もしい限りである。身を削るジョークなど最初からいらなかったのだ。
厳密にはそれぞれデビューは済んでいるが、その時とは規模が比べ物にならない。
「緊張してる方が良かった? 私は早く『ちーちゃんず』としてステージに上がってみたいかな」
「お嬢さま……それはもうお忘れください」
『ちーちゃんず』とは2人のユニット名を付ける際に没となったちとせの案だ。採用されるとも思っていなかっただろう案を、実は気に入っていたのかもしれない。
2人のユニットに付けられた名前は『Velvet Rose(ヴェルべットローズ)』。それぞれがそれぞれのイメージを取り入れ合って完成された名前だ。
ちなみに麗しい薔薇のようなちとせを、ヴェルベットのように千夜に優しく包んでほしい、そんなイメージが込められている。
「その調子なら大丈夫だな。明日はありのままの2人で、会場を魅了してきてくれ」
「あは、そのつもりだよ。魔法使いさんが用意してくれた舞台だもん、みんな私たちの虜にしてきてあげるから♪」
「お前がせっせと働いて、お嬢さまと私も含め皆に見せようとしている夢……どこまでのものか確かめさせていただきます。覚悟は出来てますね」
「もちろん。……俺も、楽しみだよ」
出来ることはやった。手応えはある。この2人となら、遠ざけていたものを取り戻しに行ける日も、いつかくるかもしれない。
「それはそれとして、ここまで頑張ってくれた魔法使いさんにはご褒美をあげようと思うの。良い夢を見せてくれたら、その分サービスもしちゃうよ? どう?」
「お嬢さま、まさか……!」
ちとせの聞きようによっては際どい発言に、千夜もすぐさま狼狽えだす。何か考えでもあるのだろうか。
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