白雪千夜「私の魔法使い」
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40:10/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:12:48.27 ID:ldlfMP+C0
 帰ってきてみると、特等席であるソファにぺったりと幸せそうな顔で横になるちとせと、主人の命令に抗えなかったのか再びコールドスプレーを手にした千夜が疲れ切った顔をしていた。

 現況から鑑みて、微妙な暑さに耐えきれずソファを冷やさせた、といったところだろう。
 それだけにしては千夜が疲れているのも気になる。夏もデビューもこれからだというのに、大丈夫なのだろうか。

「お前……この部屋にも冷房はついていたな。お嬢さまが居る時だけでいい、早くつけなさい」

「わかったよ。もうそういう季節だしね」

「ただし、お嬢さまは冷房が効きすぎても体調を崩される。温度設定を間違えないように、いいですね」

「繊細でいらっしゃる……ほいこれ。ちとせの分は、ありゃ必要ないかな」

 急いでいたので適当にボタンを押して出てきた缶ジュース(微炭酸と書いてある)はそのままに、指定のあったスポーツドリンクを千夜に渡す。
 一度は受け取るも、それをどうすることもなく、千夜はそのままプロデューサーへと返してきた。

「これはお前が飲みなさい。コーヒーばかりでは塩分は摂れませんから」

「え? そ、そう?」

「汗までかいて、そんな恰好でいるからです。お前には見届ける義務があるのだから、万全の体調で臨むように。まったく余計な世話を焼かせるな」

 せめて少しでも早くと急いできたことが意外な形になって表れた。

 それとも最初からそのつもりで……? そっぽを向いた千夜からは何も読み取れず、逆にちとせはこれまた愉快そうににやけ顔を隠しもせず千夜の方を窺っている。
 それに気付いた千夜がやむにやまれぬといった風に、またもコールドスプレーをこちらへ掲げた。

「いやそれはおかしい、落ち着け千夜!」

「あははは♪ 千夜ちゃんかーわいい♪」

 主人から悪気のない称賛という名の煽りを受けた従者により、再び視界がホワイトアウトするプロデューサーだった。






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