30:8/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:01:35.83 ID:ldlfMP+C0
ちとせの体力を考慮し、ダンスパートは千夜に比重を置き、その分の歌唱パートをちとせが受け持つ。それぞれの長所を活かした変更、といえば聞こえはいいが。
反応を待つと、先に答えたのは千夜だった。
「お嬢さまのためになるなら、私は構いません」
31:8/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:02:39.80 ID:ldlfMP+C0
「――これを着ろと、いうのですか。……悪趣味な」
「えー、絶対可愛いよ千夜ちゃん♪ なんなら持って帰っちゃう?」
32: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:03:42.47 ID:ldlfMP+C0
9/27
打ち合わせから戻ってくると、デスクには淹れてからまだ数分と経っていなそうなコーヒーが用意されていた。
33:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:04:49.68 ID:ldlfMP+C0
「それで、今日はどうしたんだ」
回りくどいことをせずとも、話があるならいくらでも耳を傾ける所存である。千夜がそうしないのは、まだ千夜から信頼を得られていないことに他ならない。気軽に頼れる間柄とは認識されていないのだ。
千夜もどこまで踏み込んだものか迷っているらしいが、ちとせにしか見せないような顔をおいそれとは拝ませてくれない。
34:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:05:51.92 ID:ldlfMP+C0
ふと、人形繋がりでデスクの奥に眠らせたままになっていた、緑色の物体を思い出す。扱いに困り放置していたが、これもいい機会か。
いそいそとデスクに向かい最下段の引き出しの奥へ手を突っ込む。ぐにっ、と柔らかい感触をした緑色のそれは事務所が推しているマスコットキャラクター、ぴにゃこら太のぬいぐるみである。
いきなり席を立たれて何事かとこちらを窺っていた千夜は、未知との遭遇に微妙な顔をしながら、しかし目を奪われたといった様子だ。
35:9/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:06:52.95 ID:ldlfMP+C0
「アイドルに慣れきって、染まってしまった後……戯れに飽きて、辞めることになったら。そう考えている私の心の内、お前に分かりますか?」
「……」
秤にかけて、ちとせより重きをおけるものは千夜には無い。
36: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:08:13.91 ID:ldlfMP+C0
9.5/27
「お嬢さまのようにはいかない、か」
37: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:09:15.43 ID:ldlfMP+C0
10/27
2人のユニットデビューの日も翌日となり、やるべきことは最終調整を残すのみとなった。
事務所のとある一室では、徐々に上がってきた気温に気だるげな者、いつにもまして涼やかな者、見るからに暑そうな者と三者三様が揃っていた。
38:10/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:10:14.40 ID:ldlfMP+C0
「そうだなぁ。私たちの楽園に連れていってあげる、とか」
「ら、楽園? 楽園って……」
「あは♪ 期待しちゃった?」
39:10/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:11:59.79 ID:ldlfMP+C0
休憩していた姿を見られたくなかったのか、取りこぼしたペットボトルを小脇に抱え、一度背を向けて最小限の動きでレッスン着を整えたのち、咳払いをしつつ振り返る。
この間10秒と経っていない。取り繕っている間に少し顔が紅潮したようだ。
「……久し振り。元気にしてた? ちゃんと食べてるの? また老けたんじゃない?」
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